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Mask&Moon 〜誇り高き4号〜

「貴様は出来損ないだ」
目の前に居る改造人間に王は告げる。
だが、その男は王の発言を与せずに反抗の意思を見せた。
「王の宣告を聞かぬか? ならば、それと分かる身体にしてやろう」
王の財宝庫への扉が開き、有象無象の宝具が弾丸となり男に襲い掛かる。
槍、刀、剣……様々な珍奇な武器が男の身体を串刺しにしていく。
その中でも一際大きな刃を持つ戦斧が回転し襲い掛かり、刃で男の右腕を断ち切った。
「これで貴様は只の人だ。弱く、脆弱な人だ。我が与えた数多の宝具を抱いて悶え死ぬが良い、貴様には身に余る光栄よ」
息も絶えた男に背を向け去って行く英雄王。
王は気が付かなかった。
男の仮面に隠された目に、消えぬ闘志が宿っていることを。

「まずはその右腕から溶かそう」
一人の猜疑心が深い男により、自分の運命は狂わされた。
あの男が居なければ自分は研究というフィールドで優秀な科学者として活躍していただろう。
しかし、裏切り者として処断された男には組織に戻ることも許されない。結果、自分は己の腕を溶かした男への復讐心を糧とするモノへと生まれ変わった。
「デストロンの……デストロンの悪口を言うな!!」
こんなことを愚かしくも口にしたことがある。
組織の暗黒面を見もせずに、組織への愛を語るモノ。どこまで愚かな。
ここまでの自分は所詮人に運命を預けることしかできない「物」でしかなかった。
だが組織の悪を認め、罪払いの為、正義の為に組織への反逆を誓った瞬間。自分は「物」から人である「者」へと変化した。
自分の意思で運命を切り開く「者」へと。
その後、自分は「者」から別の存在へと生まれ変わることとなる。


現状の確認。
ヘルメット損壊。心臓付近に突き刺さる槍。左肩に食い込む刃。鉄槌により膝部破損、歩行に支障あり。そして右腕完全断裂。
確認の結果……半死半生。
「なんだ、まだ行けるじゃないか」
すでに身体は死亡同然、だが心は未だ奮えている。
第一、ここで楽に果てられる程、簡単な運命を負った身では無いのだ。
英雄王が自分の存命に気がつくまでの数瞬。それが最後の勝負の勝利の鍵――!!


カチャリカチャリと背後で聞こえる工作音。
「……まだ生きていたのか?」
ギルガメッシュが振り返った瞬間、すでにライダーマンの工作は完了していた。
「ロープアーム!!」
「なにぃ!?」
左腕で断たれた右腕を拾い、断裂面から歯で直接回路をいじりカセットアームを作動させる。科学者として自分の体の全てを熟知し、なおかつ機械工学に優れたライダーマンにしか出来ない芸当……!!
伸びたロープアームはギルガメッシュに巻きつき、その身体を捕まえる。
標的を捕まえたロープは収縮し、獲物を主の元へと届ける。数多の宝具により針鼠と化した主の下へと。
「き、貴様……やめろ!!」
「やだね」
ライダーマンの口に自然と笑みが浮かぶ。
正面衝突するライダーマンとギルガメッシュ。ライダーマンの身体に刺さった宝具の刃が、尖突が、矛先が、金の鎧を貫きギルガメッシュの体にも余すことなく傷を与える。
「ぐわぁぁぁ!!」
「逃がさん!!」
足を踏ん張りギルガメッシュを受け止め、残った左腕でその身体を締め上げる。
右腕しか改造していないと思い込んだのが英雄王の慢心である。それはデストロンと戦っていた頃の話であり、後の暗黒組織と戦う為にその身体にはそれなりの改造がなされている。他のライダーに比べれば劣るが、この場で人一人を受け止めるのは十分に可能だ。
「で、出来損ないが……出来損ないが……ッ!!」
あらん限りの力でその腕から逃れようとするギルガメッシュ。だが、己が突き刺した宝具が今では互いの身体をつなぎ止める釘と化し脱出を阻む。
「違うな。俺は出来損ないなんかじゃない」
最後の詰めの一手を仕掛ける一瞬。何故か少し昔のことを思い出した。


「さらばだV3、後を頼むぞ! プルトン爆弾は安全な場所で爆発させてやる…」
「ライダーマン!!」
デストロンの最終作戦として決行された「東京全滅作戦」。
強烈な破壊力を持つプルトンロケットを使用し東京を機能停止させ、その間に日本を支配下に置くという破壊的な作戦は結城を罠に落とし、その右腕を溶かした張本人であるヨロイ元帥により指揮された。
当然、彼と直接ぶつかり合う機会も発生し、ライダーマンは己の復讐を遂げようと懸命に戦った。しかし、プルトンロケットがあと少しで爆発すると知った瞬間に、彼はヨロイ元帥との戦いを放棄し、ロケット破壊へと向かったのだ。
己の復讐より正義を優先させた瞬間。彼は本物の正義の味方となった。
そして彼が乗り込み自ら操縦したプルトンロケットは太平洋上空で自爆し、日本は救われた。
そのロケットと共に散ったと思われたライダーマン。そんな彼に紅き戦士から誇り高き名が与えられた――


「俺は――仮面ライダー4号だ」
それは誇り高き正義の名。この名前を背負ったからには負けは許されぬ。
地面に落ちた己の右腕をライダーマンは踏み壊す。その瞬間、二人の足元で爆発が起こった。


カセットアームに内蔵されたアタッチメントには様々な種類がある。
多種多様な使い方ができるロープアーム。
敵を捕捉する網を発射するネットアーム。
破壊力では最強を誇るパワーアーム。
そして、強力な弾を放つマシンガンアーム。
キャッチする際に地面に投げ捨てたカセットアームを踏みつけ破壊。その際にマシンガンアーム用の弾と炸薬を破裂させればそれなりの爆発が起こる。
これだけでかの英雄王の止めを刺すのは難しい。
だが、推論が正しければこの爆発で――


爆発により、彼らを突き刺す宝具にヒビが入る。
『壊れた幻想』
宝具が破壊された際に起こる爆発を利用したアーチャー必殺の一手。
それを応用しての宝具を抱いての強烈な自爆。
その狙いは的中し、数多の宝具は爆発を始める。
極大な爆発光はたやすく二人を飲み込んだ――

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