- 2006.01.03 Tuesday
- 小説 > クロスオーバー > Mask&Moon
かつてツバサ軍団と名乗り、デストロンの一員として日本に飛来した卍教団。
その卍教団の創始はキリスト教の強硬派からという設定がある。
もとはキリストの従属していた教祖が吸血鬼同様の物に成るとは何たる皮肉か。
空に広がる死人のツバサ、それを破るは代行者――
「高速回転!! 」
相手の両足を抱え急上昇、そのまま空中で回転しながら相手を上空から投げ飛ばすという死角なき大技。この必殺技で葬られた数多の強者と同じように、シエルの身体も錐揉み状に地面に向けて落下していく。
「血だ、血だ、血の臭いだーー!! 」
地面に激突し血の大輪を咲かせたシエルを見て死人コウモリが歓喜の声を上げる。彼の戦いは相手を殺すだけでは終らない、敵が流した血をすすり己の信じる神に祈りを捧げるまでが彼の戦いなのだ。
ストロー状の舌を伸ばし、目の前のシエルの死体の心臓を狙う。血を体中から噴き出しているとはいえ、人間の血の中で最も密度が濃く旨いのは心臓の血だ。
そして、その舌が心臓に突き刺さろうとしたその時。
――死体が舌を掴んだ。
力が込められたその手は、一瞬で鋭利な舌を握りつぶす。
「ギャヒッ!? 」
痛みに身をのけぞらせる死人コウモリの身体に突き刺さる無数の黒鍵。瞬の間も無く、その黒鍵は爆発し死人コウモリの臓物を粉みじんに吹き飛ばした。
「グワァァァァァッ!! 」
「あはは……あはは……」
痛みの叫びを上げる死人コウモリを尻目に、先程まで死体だった筈のシエルの口から常軌を逸した笑い声が発せられる。
「再び、再び死ねない身体ですか!! 死ななかったことに感謝しろとでもいうのですか……」
無造作に死人コウモリの胸に第七聖典が突きつけられる。
「ミハイル=ロア・バルダムヨォン!!」
轟音と共に繰り出される、心臓だけでなく魂をも貫く一撃。己の神を求め続けた悪しき求道者の魂はここに潰えた。
「神の意に背く外道を狩るための存在である代行者。その行く末の姿はこの姿よ……ッ」
十字軍の生き残りとも、キリスト今日の亜教とも噂される卍教。その教祖としての姿に戻ってからの死人コウモリ、否、その正体であるツバサ大僧正としての声。怪物を狩る物は怪物に成る事を恐れなければならない。この男はその怪物に成ってしまったものの典型だ。
「その言葉は私には届きませんよ。今の私は不死の怪物、外見は変わらずとも、内面は矛盾から成るバケモノなのですから」
遥か過去に自分がバケモノであることを伝える為に取った手段を再び取る。手段に失敗し、自分がこのまま死ぬことを望みながら。
手に持ったナイフで自分の喉を掻き切る。切れた動脈から噴き出す鮮血。常人なら数秒後に死亡する、たとえ超人だとしても人である限りは死は免れぬ傷だ。だが、やはりといってよいのか、その血は数秒後に噴出を止め修復を始めてしまった。
彼女もバケモノに成った、もとい戻ったのだ。
「死が来た……」
いつの間にか用意された棺桶に向かいヨタヨタと歩いていくツバサ大僧正。そして、その棺桶に横たわる。
「デストロン首領に……永遠の栄えあれ……」
彼が断末の祈りを捧げた直後、その棺桶は大爆発した
かつて『ロアが二人いる』という絶対的な矛盾から不死となっていたシエル。その矛盾はロアの死によって断たれた筈だった。そして、彼女は再び不死となった。つまりそれは――
coming soon……
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