ザ・サムライ-VSバーサーカー

「こんにちわ、お兄ちゃん♪ 」
 全てを理解するために向かった教会からの帰り道、そこには冬の妖精のような可憐な少女が俺を待ち構えていた。
「……■■■■■■■ 」
 狂気を身に纏いし巨人を連れて。
「私はイリヤ、それでこっちの大きいのがバーサーカー……ってエエーー!? 」
 自己紹介をして俺の近くに居るに立つナニカに気付き指差すイリヤ、その指の方向は無論俺の脇に立つ遠坂ではなくて。
「いくら子供とは言え人を指差すのは関心せぬな」
 俺の後ろに立つサムライ、イリヤ驚くのも無理は無い、彼女が大きいと言ったバーサーカーと頭一つ位しか差が無いほどサムライもデカイ。
 夜道で筋肉ダルマ二人が対峙する光景は多分一生に一度有るかないかだろう、見たいかどうかは別にしておいて。
「…………」
「……士郎殿、ここは拙者におまかせを」
 睨みあう両者、それぞれ呼応したかのように己がマスターを背にして向かい合う。
「まあ少しくらい面白い事があった方が遣り甲斐があるよね。やっちゃえ! バーサーカー! 」
 妙に理解が早いお子様。
「■■ーー!! 」
 主の命令を受け咆哮をあげ走るバーサーカー。
「いざ! 」
 同じく駆けるサムライ、両者は中央で激しくぶつかり合った。
 まるで車がぶつかったかのような轟音が辺りに響く、よろめく両者、だが一瞬で立て直し両者手四つで組み合う。
 ギリギリと肉の軋む音と共に両者の間で均衡する力、ぶつかり合いも互角の上に手四つの体勢でも両者に差は無いという事は力は互角、ならば他の要素が勝敗を  決める。
 先に動いたのはサムライ、一気に力を抜き背から倒れ、勢いを利用しバーサーカーに巴投げをしかける。
 見事に曲線を描き投げ飛ばされるバーサーカーの巨躯、轟音が静かな夜の街を犯すように響いた。
「すごい……身体能力では並ぶ物が無いバーサーカーをあの体勢から投げるなんて」
 遠坂の驚いた顔はある意味貴重かもしれない、最もあそこの幼女の動揺した顔も同じくらいに貴重そうだが。
 だがその貴重なショットは一瞬で消え、イリヤの顔は心の底が震えるような冷たい表情へと変化する。
「……バーサーカー本気でやっちゃえ」
「■■■■■ー!! 」
 主とは対照的に熱く吼える狂戦士、その手には使い手に劣らぬ威圧感を持つ巨大な石刀。
「ちぃ! 」
 慌ててガードを固めるサムライ、直後に間も無く石刀の嵐の連打がその身に襲い掛かる。
 ガードを固めながらの回避、嵐の如き狂戦士の暴走に対しサムライが打てた手はそれだけ、攻め手が無い防御はただイタズラに体力を削るだけだ。
 そして嵐の中で一瞬生まれたサムライの隙、バーサーカーはそれを逃さずに空いた足でサムライの腹を蹴りつけた。
 腹筋がめり込むほどの衝撃を受けサムライの体は遥か遠くへと吹き飛んで行く。
「ぐふっ……」
 サムライの口から漏れる嗚咽、その姿は一瞬で俺達の視界から消え、道の彼方へ消えて行ってしまった。
「ふふ、ちょっとてこずったけどバーサーカーの敵じゃなかったみたいだね。さてお兄ちゃんとそこの人、覚悟は出来た? 」
「できるわけないでしょうが」
 イリヤのセリフが終わるや否や手に持っていた宝石をバーサーカーの足元へ投げつける遠坂、宝石は着弾した瞬間アスファルトを砕き、辺りに砂埃を巻き起こした。
 遮られる視界、俺がそこまでの一連の動作を確認する前に遠坂は俺の手を掴みサムライが吹き飛ばされた方向へと走り出した。

「いない!? 」
 サムライが吹き飛ばされた先にあったのは削り取られたアスファルト、サムライの着地点の跡だとは思うがその姿はその跡には無かった。
「まずい……今のアーチャーじゃ足止めもできないし私の魔術じゃバーサーカーに大した効果は無い……セイバーが頼りなのに」
『あんなのセイバーでは無い……私のセイバーはもっと可憐で華奢で……』
 妙な事を口走っている霊体化した弓兵。
 アーチャーはサムライにチキンウイングフェイスロックで限界まで締められたせいで滅茶苦茶弱まってるらしい、なんとなく本能的に奴が苦しんでいる顔が気持ち良くて止める命令を遅らせた俺が悪いような気もするが。
 それはともかく確かに遠坂の魔術は攻撃的だが、あのバケモノに致命的なダメージを与えるのは難しそうだ。
 俺の強化なんて全くの無為、つまり今の俺達には打つ手が無い――
「士郎、こうなったら令呪でセイバーを呼び戻し……」
 ゴォォォォォォ……
 遠坂のセリフを遮るように轟音を立てて俺達の背後から飛来するナニカ。
 それに対応する間も無く、巨大なナニカは俺達の目の前に突き刺さった。
「むだな抵抗は止めた方がいいよ、大人しくしたほうが痛くなくてすむから」
「……」
 目の前に刺さったのは巨大な石刀、そして投げたのは背後にせまるバーサーカー、死と言う感覚が再び俺達の近くへと近づいてくる。
「ふふふ、どうする? そこの弱まっているサーヴァントを出す? それともありったけの宝石を使う? どっちにしろ無駄なんだから好きな方にするといいわ」
「退くのはお前の方だ! イリヤスフィール・フォン・アインツベルン!! 」
「!」
 民家の上から聞こえるサムライの大声、今更なんだけどココまで騒いで何故出てこない近隣住民?
「この技だけは出したくなかったがバーサーカー、お前のような暴虐サーヴァントを成敗するにはこの技しかない!! 」
 サムライは民家の屋根からバーサーカー目掛けまるで刀を抜いた侍の様に猛然と左腕を振り上げ襲い掛かる。
「拙者にこの刀を抜かせたら最後だ!! 」
 おお! 遂にセイバーの名に相応しく剣を使うのか!?
「居合い斬りボンバァァァァァァァッ!! 」
 そしてバーサーカーの首筋に俺達の運命を救うラリアート一撃ーーーーーーーーッ!! ってやっぱり剣使ってねえーーーーー!!
 自称セイバーが本気でうそ臭くなって来たサムライの左腕一本で舞い上がるバーサーカーの巨体。
「なんと言うセイバーのラリアットの破壊力!! 」
「い……いたんだ、まだ聖杯戦争にはこんなに物凄いパワーを持つ英霊が!! 」
 何処かで見たようなノリで驚く女性のお二方。
 あんまり深く追求すると不味そうなのでこれ以上深入りはしないが。
 バーサーカーの体は何処ぞの民家の塀をなぎ倒しそのまま民家へと突っ込んでいく。
 ……あれは流石に隠蔽工作無理なんじゃないか? マーボー神父。
「バーサーカー、貴方程のサーヴァントが左腕一本で吹き飛ばされるなんてなんたる醜態!! 」
 本気でノリがいいなイリヤ、まるでどこかの不死鳥肉超人を思い出させる物言いだ。
「どうするの? イリヤ? 貴方のサーヴァントはあそこでダウン、ここで私がありったけの力を使えば」
「少なくとも戦争が終わるまで動けないくらいのダメージは与えられるか。いいわよ、ここはあの面白いサーヴァントに免じて退いてあげる」
 遠坂の殺気こもった問答をあっさり受け流すイリヤ、そのままバーサーカーが埋まっている砂埃の中へと消えて行く。
「じゃあね、お兄ちゃん。また会おう」
 戦場に似合わぬ優しい瞳と笑顔を俺に向けて――

「せ、先輩!? 」
「どうした桜? 慌てて? 」
「庭でスクワットしている変な大きな人がー!? 」
「ああ、気にしないでくれ、あれはお客さんだから」
 流石にあの大男を隣部屋に押しこんで隠すのは無理だった訳で。
「し、士郎!? 」
「どうしたんだ? 藤ねえ? 」
「庭で腕立て伏せしてる外人さんがいるよー!? 」
「ああ、気にしないでくれ、あれは親父の昔の知り合いらしいから」
「あ、そうなんだ」
 こうして堂々と朝練を庭でやらしてやっているわけで。
「おはよう……」
「遠坂……メシの前に顔を洗ってきた方がいい」
「そうする……」
 おかげで遠坂が泊まっていると言う重大事件があまり目立たない訳で。
「サムライー、お前メシとかどうするんだ? 」
「ご心配無用、拙者にはこれがある」
 ゴクンゴクンと景気良く庭でプロテインジュースを飲むサムライを尻目に思う事は。
 ……まさか続くのか? この話?

ステータス情報が更新されました
能力表
【CLASS】セイバー
【マスター】衛宮士郎
【真名?】ザ・サムライ
【性別】男
【身長】240cm
【体重】210kg
【ステータス】筋力 A+  耐久A+  敏捷 B++  魔力 肉体を駆使すれば壊せぬ物は無し、よって不要  幸運E  宝具???
【能力】レスリングテクニックS:タックルに受身と言った基本に加え、派手な投げ技や地味な関節技も完璧に使いこなす    
【保有スキル】対魔力A:鋼鉄の肉体は訳も解らぬ術など受け付けない
       居合い切りボンバー:自身の怪力をフルに使った豪腕の一撃、その破壊力は7000万パワークラスの超人を容易く吹き飛ばす
【宝具】オーバーボディー:通常の攻撃は若干軽減、致命傷となりえる攻撃は宝具破壊とひきかえにふせぐ。由来は元々サムライ自身が所属していた組織の長が 使用していたらしい。

あとがき

VSランサー/NOVEL/VSライダー