ザ・サムライ

 校庭で繰り広げられる赤と青の死闘
 訪れる死、そして生還
 全てはまるで一夜の夢
 ならば俺がいまここで蒼い槍兵に再び殺されようとしているのも夢なのだろうか?
 いかん、これは夢なんかじゃない、この痛みはホンモノ、これは現実なんだ!!
 痛みを振り払うように立ち上がる、ここは土蔵で俺は衛宮士郎、大丈夫だ自分の名前と場所が言える時点で完全に頭は逝っていない。
「中々にねばってくれたモンだが――これで終いだ」
 正気でない方がまだ救いがあったかもしれない、正気ならば目の前の槍兵が自分の命を再び穿とうとしているのを嫌でも理解しなければならないから。
 振り下ろされる槍、そして光を放つ空間。
「な……!? 」
 光の爆発に巻き込まれる槍兵、そして再び地面へと叩き付けられる俺。
 そして光が晴れた後には
「――問おう、お主が拙者のマスターか」
 一人の漢が仁王立ちでこちらを見つめていた

 あれ? ここって清楚可憐で甲冑を着た金髪少女が出てくるシーンですよね?
 でも今俺の前に居るのは……
 2メートルをゆうに超える身長
 ボディービルダーも真っ青な胸筋
 丸太のような両腕
 カモシカも枯れ木に見えるほどの両足
 編み笠を深く被っているので顔は見えないが声からして確実に男、しかもかなりゴツイうえにケツアゴ
 うん、確実に違うねコイツ、ただ明らかにオリジナルより強そうだが。
 とりあえず話しかけてみよう。
「えーと……アンタ誰? 」
「ふむ……セイバーか。なるほど、我が仮の名のサムライというキーワードに反応したか」
 一人納得して呟く大男。
 えーと、セイバーってさあ……アンタ刀持って無いじゃん、差してもいないし。
 なんか格好もガイジンが適当にコーディネートしたバタ臭いサムライなのが胡散臭い。
「とりあえず話は後だ、まずはあそこに居る青い超人を倒しお主を守る」
 いやサーヴァントじゃないのかアレ、超人って何さ?
 ランサーが吹っ飛んだ穴から出て行く自称セイバー、その筋肉で盛り上った背中は妙に頼もしかった。

「……オマエ、バーサーカーか? 」
「見て解らぬか? セイバーだ」
 いや、見てもわからんし聞いても解らんと思うぞ。
 とりあえず中庭に出てみるとセイバーとランサー……駄目だ違和感と言うか本能が奴をセイバーと呼ぶ事を拒否する、サムライと本人が名乗っているんだし  ソレでいくか。
「まあいい、戦り応えがあるんだったらクラスなんざ関係ねえさ」
 低い体勢で槍を構え完全たる戦闘体勢を取るランサー、そこはもっと突っ込むべきポイントだと思う。
「その心意気やよし」
 対応するように悠然と体を構えるサムライ、その構えは明らかな徒手空拳……やっぱりセイバーじゃないだろオマエ。
 駆ける両者、ランサーの己が駿足を超える突きがサムライに向け放たれる。
 しかしサムライはそれをより低い体勢のタックルで掻い潜り流れるような動きでランサーのバックを取る。
 刹那、電光石火の如き速さでランサーの体が浮きまっ逆さまに地面に叩き付けられる。
 バックドロップはへそで投げる、この基本を芸術まで昇華させた一撃は見事にランサーの意識を迷わせた。
 戦いの最中とは思えない程ゆっくりと立ち上がるランサー、その顔面に打ち込まれるサムライのニーアタック、ランサーの体は木の葉のようにふっ跳んで行 く。 
 刀一切使ってねえ! だけど妙に強いぞ!! サムライ!!
 ランサーを歯牙にかけてない、殺されかけた俺が言うのもなんだが奴だってそんなに弱くは無いと思うんだが。
「ち、ちくしょう……なんだ? コイツの技は……」
 よろよろと立ち上がるランサー、その足取りからダメージが決して浅くない物だと見て取れる。
「まだやるのか? 拙者と。受身も満足にとれない武器だよりの超人がよくも言う」
 妙に偉そうなサムライ、受身ってアレ取れるレベルのバックドロップじゃないだろ?
 あ、そうか。
 あのサムライのスタイルは異質なんだ、ランサーが見たことの無いほどの。
 まあプロレス技で槍を持った奴に喧嘩売るバカは普通居ないよな。
「武器だよりか。まあそうだな、アンタ正論だよ。だけどな、俺はコレに命賭けてんだよ」
 皮肉そうに口を曲げながら再びランサーが手に持った槍を構える。
 その構えの形自体は先程と大きな差は無いが気迫が違う、槍を直接向けられてない俺でさえ冷や汗がとめどなく溢れる。
「ぬ……」
 深く笠を被っているため表情は解らないがサムライもランサーの気をモロに受け、槍から繰り出されるナニかを警戒するように1歩引く。
「遅い――喰らえ、ゲイ・ボルグ!! 」
 ランサーの槍から解き放たれる光の如き一撃、その一撃はサムライに対応させる間も与えず、あまりに見事に心臓を貫いていた。
 そのまま弁慶の様に仁王立ちで動かなくなるサムライ、まさか死んだ――
「サムライィィィ!! 」
 おもわず心の底から出る絶叫、いくら変わった奴だからといって俺を守ると言って戦ったんだ、それなのにあまりにあっさりと……
「これがお主の必殺技か……なるほど気迫に恥じない凄まじい威力だな……」
 サムライ生きてる!? しかもよく見ると傷口から血も出てねえ! 何なんだ一体!?
「馬鹿な……外したのか」
 俺以上に驚いているのはランサー、自分の必殺技が効いてない事は流石に飄々とした奴にもショックがでかかったようだ。
「いや、お前の一撃は見事に拙者の心臓を撃ち貫いていた」
「ならテメエなんで平気なんだ!? 」
「教える余裕など無い。貴様が強い事は十二分に解った、手札をわざわざ見せるようなマネはせん。さて続けるか? こっちの体力はありあまっているぞ」
 いや確かに手札見せない云々は正論なんだが俺もその無茶苦茶な防御力の理由は知りたい。
「クッ……コイツは顔見せで相手に出来るレベルじゃねえな」
 踵を返し逃げていくランサー、対峙していたサムライも条件反射的に後を追っていく。
 両者が屋根の向こうに消えた次の瞬間、
「キャーーーーーーーーーーーーー!! 」
 絹を裂く様な女の悲鳴が聞こえてきた。
 しまった! 通行人が巻き込まれたか!?
 痛む体を無理やり動かし塀を乗り越える、そして見えた物は――
「な、何故セイバーがこんなのに……? 磨耗した記憶だがこれは絶対セイバーでは無いと断言できる……」
 なにかショックな事でもあったのか虚ろにブツブツと呟く赤い弓兵に。
「この技は別名鶏の羽交い絞めという!! 早いとこギブアップしないと首と腕がへし折れてしまうぞ!! 」
 赤いのの腕と首を捕まえチキンウイングフェイスロックをかけるサムライに。
「……」
 ギャグマンガの様に地面にめり込んだ、どこかで見覚えがあるツインテールの女性。
 何があったかはわからない、ただこれだけは言える。
 ……どう収拾つけるんだよ、この状況――

追記1
 サムライに『なんで心臓貫かれて平気だったんだ? 』と聞いたら『拙者はオーバーボディーだからな』と言われた。
『レスラーがマスクの上に被るオーバーマスクのようなものだ』と言われたが、少なくとも俺は訳がわからなかった

追記2
 地面にめり込んだツインテールこと学園のアイドル遠坂凛嬢。
 なんでも屋根を乗り越えようとしていたところで屋根を飛び越えようとしていたサムライとはちあわせになり、『曲者!! 』と叫ばれタイビングボディプレ スをくらったらしい。
『わたしをみつけた瞬間に一瞬で体を入れ替えプランチャ、そしてセイバーを見て動揺するアーチャーを捕まえて関節技に、最高のサーヴァントの名に相応しい 判断力ね、大事にしないとバチが当たるわよ? 衛宮君? 』
笑顔でそうおっしゃられた遠坂様、明らかにその微笑みはコロス笑みでした。
 ……それにしてもよく生きてるな遠坂。

能力表
【CLASS】セイバー
【マスター】衛宮士郎
【真名?】ザ・サムライ
【性別】男
【身長】240cm
【体重】210kg
【ステータス】筋力 A+  耐久A+  敏捷 B++  魔力 肉体を駆使すれば壊せぬ物は無し、よって不要  幸運E  宝具???
【能力】レスリングテクニックS:タックルに受身と言った基本に加え、派手な投げ技や地味な関節技も完璧に使いこなす    
【保有スキル】対魔力A:鋼鉄の肉体は訳も解らぬ術など受け付けない
【宝具】オーバーボディー:通常の攻撃は若干軽減、致命傷となりえる攻撃は宝具破壊とひきかえにふせぐ。由来は元々サムライ自身が所属していた組織の長が 使用していたらしい。

あとがき

NOVEL /VSバーサーカー