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愛を語ることの大変さ

ふじい(以下F)「俺、ツインテールになります。を読んだわけだ」

サイレン(以下S)「どうだった?」

F「ツインテールだった」

S「……そうだな。ツインテールだったな。毎ページ、しかも1P内に“ツインテール”という単語が乱舞しているせいで、ゲシュタルト崩壊というものを久々に味わった」

F「ああ。あまりにツインテールという単語を目にしすぎたせいで、お前の中の属性が“ツインテールLOVE”に傾きかけてた。あの頃の、大草原で熟女や人妻という単語を追い掛け回していたお前に戻って……やっぱいいや、お前、ツインテール派に転べ」

S「途中で諦めるなら、わざわざ人の属性カミングアウトすんなよ!」

F「それはさて置いて、実際『俺、ツインテールになります。』はツインテールを愛でる小説として、実に愛を感じた。ツインテールという髪型を、あますことなく主張し、物語の基本骨子に組み込む。小説で外見的特徴に属するフェチズムを主張するのが、どれだけ大変なことか」

S「そこまで大変?」

F「すっげえ大変だぜ。なにせ小説は、マンガやイラストと比べ物にならないぐらい、妥協しやすいから」




F「例文を用意してみた」

“眼鏡をかけた、可愛らしい女の子がいた”

S「あえて眼鏡なのは、お前の趣味だな」

F「否定したり、口籠ったりするとでも思ったのか? 眼鏡の素晴らしさを語るのは後日に回すとして……もし物語にこの文章があったら、この可愛いらしい女の子はメガネっ娘として認知されるわけだ」

S「コイツ、なんて堂々としていやがる。まあ、そうだろうな。この娘は、眼鏡をかけていると、提示されたわけだから」

F「うむ。小説は、これで済む。この簡易な文章だけで、彼女はずっと眼鏡をかけていることになる。外す、割れるなどの描写をしない限り、ずっと。だがちょっと待って欲しい、眼鏡に関する描写が無いまま、物語の終わりまで突き進むとして、彼女は本当にメガネっ娘なのか?」

S「言っていることが、よく分からんが」

F「常に絵として表示される漫画と違い、小説は一度特徴として提示してしまえば、そのままイメージが固定化される。だがもし、一度眼鏡とだけ提示したまま、眼鏡という属性に関する描写が何も無いまま物語が終わったとしたら、それは死んだ情報であって、属性や特徴と呼ぶべきものでは無いと思うんだよね」

S「ああ。なんか段々分かってきたぞ。どれだけ作中で主張されるかをもって、初めて眼鏡が属性として生きるというわけだな」

F「いっそ物語で何の役割も持たないのなら、“可愛らしい女の子がいた”だけでいいんだよ。この文章において眼鏡はいらないし、不要な情報だ。例えば、“眼鏡をかけた可愛らしい女の子”が眼鏡が外れて見えなくてアワワとなったり、眼鏡とのレンズと共に知性を光らせるから意味があるんだよ。描写なき属性は、ただの不要な情報でしかないんだ。属性を活かす気もなく、死んだ情報だけを振りかざすのは、妥協だよ」

S「妥協は許さないからこそ、『俺、ツインテールになります。』をお前は絶賛しているわけだな」

F「おう! タイトルからしてそうだが、この作品、徹頭徹尾ツインテールへの愛や執着で占められているからな! 俺にツインテール属性はないが、この一つの属性に対する真摯な姿勢には、敬意を表するしかねえ。ところで、ツインテールとメガネの取り合わせっていいよな! アイドルマスターの中のアイドルマスターである秋月律子さんも、ピッグテール+眼鏡の黄金率を秘めてるし!」

S「あなた。嘘ついてる。ツインテール属性無いどころか、染まりかけてるじゃない!」

F「大人は嘘つきではないのです。間違いをするだけなのです」

S「黙れ!」

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