分割思考の会議


 芳醇な香りがたつ紅茶、なかなかの名品である。普通の小売店では購入はできないだろう。
 そんな高級な紅茶を居間で飲んでいた。

一番『私『シオン・エルトナム・アカラシア』はこの遠野家の『客人』としてかれこれ一ヶ月以上お世話になっている。
理由は私の同志、『遠野秋葉』の身にあまりすぎるご好意である。
あの、『ワラキアの夜』事件は遠野志貴、秋葉兄妹の助力もあり私の恩人の敵と私の復讐を果たすことはできた。
だが、ワラキアの夜はその特殊な性質上完全に滅することはできない。次のワラキアの夜が現れるのは速くて20年後―今の私にとっては気の長くなる時間だ。
私の体はワラキアの夜に噛まれたせいで半吸血鬼だ。
アトラス協会には研究サンプルにふさわしいし、教会の人間にしては消去する化け物のひとつ考えるのが妥当だろう。
次のワラキアの夜が出るまでに体が持つかもわからない。
だが、秋葉は
『あなたの研究が終わるまでここにいなさい』
そう言ってくれた。またあの逃亡生活をすることもなく研究に没頭できる個室も提供してくれた。
その代価はエーテライトの使い方の享受でよいとも言った。
私にとってはエーテライトと服ぐらいしか自分の持ち物は持っていない。
資金もろくに持ってない私には好都合でもあった。
その結果、私は遠野家のとある個室に籠り日々吸血鬼化の治療の研究に没頭できる。
志貴がコンタクトを取っているがいまだ仰げない、真祖の姫君の協力もいつかは仰げるかもしれない。
吸血鬼化の治療を進めるには彼女の協力は絶対に必要だ。
これは志貴に交渉をまとめるよう依頼しているからいつかはもらえるかもしれない。
私は普段、朝から晩まで研究をしている。錬金術師本来の姿に戻れているのである。
もともと錬金術師は部屋に籠り実験の繰り返しをしているのである。
金(きん)を作り出すことを目的とした昔の錬金術師は金の元になるらしい賢者の石とかいうものを作るため40日以上の時間をかけたり、めったに取れない材料を集めるために必死に危険な所へ調達をしていたのだという。
そのせいで冒険者に鞍替えする錬金術師もいたとか・・・
私もかつてのような錬金術師の姿ではないが今のアトラスの錬金術師本来の姿で日々研究をまとめている。
この研究は完成させなければいけない。
世界には私のような患者は多いのだ。
だが、普段から研究のしすぎは体の毒だ。疲労の蓄積は作業効率を悪くする。
時には休息も必要である。
そのため、私はここで紅茶を飲んでいるわけである。
紅茶の香りは見も心も癒してくれるのを感じる。このマイセンとかいう私では到底もてないような高級なティーカップで飲むのがなんともいえない。
さして喉は渇いているわけではないのだが、休息の際は自然に飲みたくなる。
そのたびに紅茶を入れてくれる琥珀には感謝が堪えない。
私のメイン思考回路を停止させ私を休憩させるのだ。
そのほかの回路はこのときは委任だ。
もちろん休息する時間を志貴がいる時間帯にしているのは秘密だ。
今の志貴は昼寝の最中である。
『直視の魔眼』は志貴の体にかかる負担は大きい。前のときの疲労は回復はしているのだが日々無理はできない。
よって、よく休日にはまるで彫像のような表情で眠りについている。
その表情は私も惚れ惚れする。
ただ、彼の愛猫もひざの上に乗って気持ちよさそうに寝ているのが腑に落ちないが―
そのこのひざの上乗っかっているのが私の障害でもある。
そう、ただの猫ではない彼の専属の使い魔サッキュバスの『レン』である。
普段は猫だ。彼女は猫の死骸と少女の魂を融合させ作られた使い魔である。これは魔術師が良くやる手だ。
彼女は本来なら真祖が管理するものなのだが、志貴が新たに契約したのだから彼女は志貴専用になっているのである(怒)
不本意だ、彼女のようなサッキュバスと契約するには契約者の『血』または、『精』が必要なのである。
それで何故怒りがわいてくるか?』

二番『志貴、あなたは身の回りにこれほどの女がいるのに最初に関係を持ったのがその猫なんですか!だいたい関係を持つなら大人の女が妥当なところでしょう』
三番『まあまあ、二番落ち着いて。真祖とかに寵愛されてないことはわかっていいじゃないですか、二番』
二番『だからって、猫ごときと夢の中で志貴が・・・』

―二番熱暴走、一番停止命令―二番停止

一番『ほうっておこう、私は錬金術師必修能力の分割思考がある。一応主人格の私『一番回路』とあと六つある。暴走した二番はそのうち冷めるだろう』
志貴が使い魔を持っていることはエーテライトに接続してわかったことだ。だが・・・
六番『なんで、血の関係じゃなくて精するんですか!』
三番『志貴は俗物用語で言えばロリコンなんでしょうか?』
四番『それは・・・『ない!』とは言えないが・・・』
六番『女たらしですからね・・・女であればだれでもいいのでしょうか?』
三番『それはないでしょう』
一番『それはない、絶対にない。彼は無自覚に女を口説いているだけで口説いていると言う概念がないのだから。
だが・・・』
六番『志貴の回りには女性が多すぎます。普通なら同性の友人が多くいるはずです』
三番『構成比考えるとすごい差ですからね。男は乾有彦ぐらいでしょうか』
六番『あとは『女性』ばかり(怒)』

六番熱暴走、停止―

一番『ほっとけ、いやな考えは回路の負担にかかる』
三番『じゃあ、本命だれだ?』
一番『!そ、それは』
三番『考えましょうか?』
一番『余計なお世話―』
二番復帰『私の周囲の状況を考えましょう』
六番活性化『出し抜かれるわよ!ほかの女に』
一番『そんな、私は・・・』
五番『で、ここで吸血鬼の霊的構造があるから・・・・・・この考えは気が散ります。先に考察するべきです』
一番『五番汚染されたか・・・別に私は・・・』
四番『好きじゃなかったの?』
一番『ええっ?私が?四番そうではない』
四番『たとえば、私が志貴を目線でおっていることは志貴が私の目の中に入ると統計学的に100%おっています』
一番『・・・・・・』
四番『それに今だって、猫に嫉妬しているし』
一番『これが嫉妬というものか?』
三番『ええ、この状態は彼女(猫)に嫉妬していると考えるのがベストです。猫ごときが志貴に抱かれているのが腑に落ちないでしょう?』
一番『三番、冷静に説明するな・・・ああ、私はいつの間にか志貴に好意を持っているのか』
七番、予備回路始動『どうですか、ここはひとつ現状を考えてみるのが一番いいです。賛同は?』

賛成 二番、三番、四番、五番、六番、七番
反対 なし
保留 一番 

七番『六対零、今回『私の志貴の恋敵考察会』は本会議で決議されました』
一番『何故そうなる?七番、何故賛成にまわる!』
七番『多数決の論理です。何番がどれを支持しようと関係ありません』
一番『・・・・・・』
五番『ほら、さっさっと部屋に帰る!』
一番『今、休息中なのだが・・・』
六番『早くしないと、夕食まだに間に合わないわよ』
一番『そうだった、前に夕食の時間になっても研究に没頭していたために真祖と逢引して遅れた志貴ともどもとばっりを受けて秋葉にこってり絞られたことがある。
私は客人だが礼儀はわきまえないといけない。つい、研究に没頭していたはいいわけにならなかった。翡翠に呼ばれたらしいが気がつきもしなかったらしい。
そのときの秋葉は・・・正直・・・怖かった。志貴が彼女を恐怖するのが良く分る。ワラキアが彼女に執着したのもわかる』
四番『じゃあ、急ぐ!緊急!』
一番『一応、考えるならこの場でできるが・・・まだ休息したいのだが』
三番『時間はかかります。何かあって醜態をさらしたくないでしょう?』
一番『たしかにそうだ、個室の研究のとき、つい、志貴のことを考えすぎて危うく吸血鬼の表情になったことがあるからないとも言えないな。だってこれは―』
二番『私の人生の設計図のためなんですから〜』
一番『二番妄想しすぎだ』
七番『そうよ、志貴に嫌われたくないでしょう?』
一番『それはそうだ。むしろ私は彼に好意を持っているのは正しい。では研究室に戻るとしよう』

一番休憩終了、これより研究所(私の個室)に向かう。

「琥珀さん、ご馳走様」
「あら、休息終わりですか?いつもより速いですね」
「ええ、研究を速く進めないといけませんから」
「もう少し、志貴さんの寝顔見ておかないんですか?」

一番『琥珀はからかってきた。琥珀がこういうキャラなのは志貴につないだエーテライトで予測済みだ』

「ええ・・・では失礼します」

シオンは表情を変えずに部屋に戻ろうとする。

「良かったわね、翡翠ちゃん。シオンさんは志貴さんに興味あるようでないみたいよ」
「姉さん、何で私に向かって言うの!」
「あれ、恋敵減って嬉しくないの?」
「そ、それは・・・」

一番『遠野家メイドの琥珀が同じくメイドであり妹の翡翠をからかっている。ここで―』

『だれが志貴に興味がないですって!』

一番『などといってしまったらこの屋敷の平穏が守れなくなる。私が追い出される可能性は限りなく高くなる。というか追い出される。
いくら私の唯一の友人であり同志である秋葉でも私が志貴に興味があると聞けば―』

二番『女の友情は男で崩れる』

一番『二番の言うとおりどこの国でもそうだ。今はとにかく思考回路の整理をしよう。さすがに一対六の状態では研究が進む気配がまったくしない。
むしろ研究より対策を進めたい。後ろでまだ、メイド二人が言い合っているがほおっておいて部屋に帰る―志貴の寝顔を拝聴できなるなるのは残念だ』
三番『やっぱり、私は志貴に恋しているのね〜』
一番『三番、冷静に突っ込むな。だが、これが恋なのか?』
それがばれないよう足早に部屋に戻った。 

部屋に戻りさっきの理論を冷静に考えてみる。シオンの全回路はフル稼働だ。

一番『まずは―』
二番『真祖の姫君ですね』
三番『おそらく、一番の敵かと』
一番『『真祖の姫君』ことアルクェイド・ブリュンスタッド。私が吸血鬼化の治療のため志貴にコンタクトを頼んでいる相手でもある』
四番『実力で排除はまず不可能ですね―』
一番『四番、なにそんな物騒なことを言う!』
四番『えっ、そういう会議じゃないの?』
三番『ちがいますよ、私の恋敵たちのデータ整理ですよ。排除対象は後で考えるの』
四番『あっ、そうなの・・・一番乱入『納得するな!』』
五番『そういう会議をずっとやるのかと』
一番『ちがうって!私たちがやるのはそういう会議ではなく―』
六番『排除対象はおいといて、敵を知らなければ行動できないでしょ』
七番『ここに過去エーテライトで採取したデータがあります。皆さんよーく考えよう』
一番以外一同『了解!』
一番『何故こんなことになる・・・』
二番『なに言っているの志貴とられるわよ!女は強くないといけないのよ』
一番『それは・・・たしかに・・・だが、その言葉で終わらせていいのか?』
五番『ああ、主人格回路は完全に気がついてないようです。では、一番はほっといて考察を続けます。志貴と彼女は気軽に話せる友達でしょうか?』
一番『なんのことだ?・・・私(一番主人格回路)が気がついていない?』
六番『一番、うるさい。二人は友達以上恋人未満って所ですね』
二番『恋人以上に発展する確立は?』
三番『高いですね、彼女は『私を殺した責任とってよ』とせまりましたし』
四番『ロアなき今、彼女の生きる第一目標が志貴になっていますから・・・』
六番『彼女の生活スタイルを『殺して』しまいましたから・・・』
五番『たしかに、ロアを殺す→眠る→ロアが目覚める→起きる→ロアを探しに行く→見つける→最初に戻るが彼女の生活スタイルだったから』
二番『責任を取るのには十分すぎる罰か?』
三番『二番、妥協するな!だからって志貴をむざむざ吸血鬼にするのか?』
一番『?どういう意味だ?三番―』
三番『だって、彼女は約800年生きています。志貴はには寿命があります。それじゃ一緒になるには―』

志貴を吸血鬼にする―

四番『ないない、それをするのは私―』
一番『四番、止めろー四番停止。こんなことを考えるじゃない、志貴を吸血鬼にするなんて・・・』
五番『ダメです。衝動が抑えられなくなります。落ち着いて!』





全回路復帰、吸血衝動鎮静化―

一番『危ないところだった・・・もう大丈夫だ』
七番『会議を続けます、それは真祖も私も望むことじゃないでしょう』
二番『たしかに、志貴を吸血すれば志貴は私のモノになりますが―』
三番『それは、志貴じゃない!』
四番『志貴と一緒になりたいのにこのようにして私のモノにしては志貴ではなくなってしますのは―』
一番『それは私の本意ではない。志貴どころではない、私はだれの血も吸わない。
真祖もそうだろう。志貴がほしくて吸血しても志貴でなくなるんだからそれをしないだろう』
二番『恋人になり、妻になったら子孫を見つめながら暮らすんじゃないんですか?』
一番『どういう意味だ?』
二番『だって、志貴はアレだからたくさんできるし―』



全回路一時停止


全回路復帰

一番『そ、それは、志貴がテクニシャンなのは猫でわかるが、真祖の姫君の間に子供なんてできるのか?』
三番『吸血鬼と人間の霊的構造は違いますが、繁殖方法は基本的に同じである』
四番『吸血鬼の能力を持った人間ができるという結果になります』
五番『同志、秋葉の先祖もおそらくその筋の関係ですから』
六番『つまり、真祖と志貴の間に子供ができるのは彼らが性的行為をすれば可能かと』
一番『もういい、この問題は後回しだ』
二番『では、だれが志貴を落とせる可能性が高いかのシュミレートは七番に任せて私たちは次の敵を考えることにしましょう』
七番『了解、確率統計はこちらでまとめます』
一番『では次の考察に移る。?・・・何故乗りに乗っているんだ私は。次にあげるとするなら代行者だろう』
三番『教会の埋葬機関第七位の代行者、『弓のシエル』本名シエル・エレイシア』
四番『排除するのは難しいですね。こっちを排除しようとしてるくらいだし』
一番『だから四番、排除は後だって!』
四番、一番無視続行『元死徒ミハエル・ロア・バルダムヨォンの転生体。死ねない体から志貴の協力で死ねる体になった女性であり志貴の学校の先輩に成りすましている女』
五番『年齢は24才前後。だが、十代で通そうとしている女』
六番『十代は無理があるのを分っていないのが・・・悲しい女性の性(さが)でもある』
二番『だが、そんなことはいえない。私の捕縛権、処分権を持っている。私にとってはきわめて厄介な女』
一番『たしかに、彼女の言葉ひとつでこちらの身は危険にさらされる。それがないのはひとえに秋葉と志貴のご助力があるからこそである』
四番『いざとなったらこちらのジョーカーで殺りますが・・・』
一番『四番、いい加減にしないと回路を停止します』
三番『一番、会議中にそれは横暴です!四番、三番としてそのジョーカーが気になります』
四番『代行者にはカレー好き・・・いや、教会の人間独特の考えいわゆる『価値観の凝り固まり』つまりカレーの狂信者となっています』
五番『それが何のジョーカーになる?彼女はジャック、問題はあるがかなりの戦果を上げるつわものだ』
六番『カレーは代行者の好みのひとつだろう?』
四番『いいえ、代行者にとってカレーは私の志貴より大事なものです』
七番『わかりました、『カレーと志貴』どちらを選ぶか迫るんですね』

一番『なるほど、シエルは志貴に好意を持っている。無論、私も・・・そうなのかもしれない
『志貴とカレーどちらが好き?』
と私がシエル問い
『私は志貴に汚されました、あなたもそうです。私は責任をとってもらいのですが、あなたもそうです。こんなところで殺し合いをしてどちらが勝っても志貴は喜びません。
わたしは・・・あなたが好きなカレーを一生止めるなら・・・・・・涙を呑んで志貴をあきらめます』
と演技すればいいのだろう』

二番『代行者のことですから、これはチャンスとその後カレーを止めるというが』
三番『数日後にカレーを食べるのは明白』
五番『統計学的に100%ですね。彼女はカレー無しでは生きられませんから』
六番『その後、『教会の人は神聖な約束を簡単に破るんですね』』
一番『といって、約束を破ったから志貴はもらうと言う計画ですか四番』
四番『そのとおり』
七番『だが、この計画には無理がある』
四番『いい案だと思いますが?何か問題が』
七番『シエルがカレーを止めるというほうが・・・』
四番『なるほど、そっちのほうか・・・次の敵の考察に移りましょう』
一番『次は、秋葉か・・・』
二番『秋葉、私の同志、唯一の友人であることはさっきも言ったが残念ながら恋敵でもある』
三番『遠野秋葉、遠野家グループ当主。遠野志貴の義妹』
四番『8年間の空白を得て再開を果たした存在』
五番『彼女は目の前で彼女をかばって志貴が殺されている』
六番『それゆえ、志貴にたしてのまた失うのでは?とつねに心の奥底で恐怖に駆られている』
二番『彼女はまだ子供なんです。そう、八年前から変わらずに・・・』
三番『それゆえ行動原理は単純になる』
一番『そう、『もう二度と志貴を手放さない、失わせない』この考えに終始する。
それだけの為に秋葉の持つ権力を最大行使する。遠野家当主としての権限だ』
四番『当主として遠野家の規律を押し付け、適応させていく』
五番『志貴がこの屋敷に暮らす生活さえ送れば志貴を失うことはない』
一番『門限が早いのも秋葉は志貴が心配させる行為を嫌っているからだろう。私も心配だが・・・』
六番『彼女は非常に臆病だ。それは仕方がない―
志貴は『七夜』一族の最後の生き残りであり、秋葉はその敵の『遠野』一族の長であるのだから。
志貴この屋敷に来るきっかけになったのも遠野が七夜を滅ぼしたせい』
三番『それを知っているから、秋葉は志貴と相容れないのだという恐怖に駆られている』
四番『だから、女の最後の手段を使ってつなぎとめようとしない』
五番『こちらにしては好都合なことである』
二番『秋葉には悪いが、このまま『妹』のままでいてほしい』
六番『妹ならば拒絶されない。兄妹でさえいれば、だれでも自分の妹を拒絶するやつはいない』
七番『義妹のままでいてくれるんでしょうか?』
一番『それはわからない、まだ秋葉にとっては時が止まったままの状態が続いているようなものである』
二番『だが、子供は大人になり、やがて子を産み、育てていく―』
三番『最終手段を持ち出す可能性は数年後には―』
七番『微妙なところですが、かなりの率かと―』
一番『このまま、『義妹』で私の友人でいてほしい―』
四番『志貴と結婚したらそうなるし―』
一番『そうなってほしい・・・四番、なにを言う!?』
四番『私の深層心理をそのまま言っただけですが―』
一番『うっ・・・・・・次、次は・・・』
四番『自分から逃げても仕方ないのは悟ったでしょう。一番はなかなか本当に気づかないものね。次は・・・』
五番『メイドの二人ですね』
六番『翡翠から考察しましょう』
三番『翡翠・・・メイド1』
五番『認識はそれだと甘いかと・・・』
六番『翡翠、志貴の世話をするメイド』
七番『重要なこと忘れてますよ、彼女たちは―』
一番『そうだった。彼女たちは志貴の幼馴染であった。志貴をつれまわしたほうが翡翠だったな。
今はつねに志貴の背後にいる・・・個人的につねに志貴の後ろにいるので怖いが・・・』
二番『彼女の行動も秋葉と一緒ですね』
三番『秋葉の事件と一緒。彼女は年長者として志貴を連れ出し一緒にいたが、あの事件のとき何もできなかった』
四番『何も出来なかった―その責任があると思っているからこそ、志貴に後一歩近づけない』
五番『それだけではない、彼女は姉、琥珀の悲劇がある』
一番『この悲劇は志貴が琥珀に気づいたから回避できた・・・』
七番『この問題は姉琥珀の件で論議しましょう』
六番『ではターゲット4、翡翠の考察を続けます』
二番『姉の悲劇と自分の負い目があるからこそ、もう離れず、ただのメイドとして遠くから見るに終始するのであるのであろう』
四番『そうであってほしい。それで一生過ごして欲しい』
一番『そのとおり、近づかれると私は困る―
彼女をどうやって排除するか考えねばならないのだから―
ちょっと待て、四番の考えが私を汚染したのか?』
三番『一番、いいかげん自分の気持ちを認めましょう。翡翠の始末は後で次、琥珀』
五番『琥珀、私たちの一番の敵かと』
六番『彼女は真祖と一緒で志貴に唯一対等な関係である』
二番『吸血鬼でない分、真祖より有利か?』
一番『琥珀は、真祖と同じで気軽に話せる友人・・・いや、寝食を共にする分がさらにプラスされる。
さらに言えば、白いリボン・・・約束のリボンが『志貴の心の拠り所』としていたから―』
七番『現状で一番関係を持ちやすい―』
一番『・・・・・・私では・・・勝てる気がしない―』
四番『あきらめるの?』
一番『それはしない、勝負は最後まで分らないのだから。だからこうして私は考察しているのではないか!』
五番『琥珀はぬくもりを求めています。志貴が与えようと行動すればあっさり陥落すると考えられます』
六番『・・・志貴しだいか』
五番『だが、絶対有利の琥珀ですが、だれよりもぬくもりを求めているがゆえにそのぬくもりを恐れていると考察できます』
なるほど・・・志貴がそういうことをしても妹、翡翠のことを考え一度は拒絶するのではないか』
四番『志貴が迫ったらアウトですね』
一番『そういうことになる。まあいい、次はだれ』
二番『猫・・・』
一番『あれは一番最後にする(怒)まだいるだろう?』
二番『ほかにだれがいる?』
七番『弓塚さつき』





七番以外一同『だれだっけ?』



七番『つ、次は・・・だれにします?』

二番『七番、情報は正確にしないと・・・』
三番『知らない名前挙げられても対応に困りますので・・・』

七番一時停止

一番『七番にバグか・・・修正プログラムを組んでおくべきだな。
次にあげるなら瀬尾晶というところか?』
六番『未来視能力がありますが、完全な未来を予測するわけではない』
五番『悪魔『ラプラス』のような完全未来を見れる・・・完全な未来を見てしまったらだれでも発狂するだろう・・・』
三番『だが、不完全な未来視だから何の問題はないだろう。それ以外は普通の中学生だ』
二番『だからこれ以上は考察しなくてもいいのでは?』

七番の修正プログラム完成、実行。弓塚さつきなる人物データの排除。彼女は志貴の知り合いではないため私の恋敵ではない。

七番、予備回路修復完了

一番『たしかに距離で言うと私より遅れていると思われる』
四番『学校の距離があるせいで、志貴ともめったにあえないし、あの子は』
一番『志貴にとって『妹みたいなもの』というべきか』
三番『志貴は年下をターゲットにしているのですかね?私たちののようなものがありながら〜』

三番少々加熱―冷却終了

五番『瀬尾はたしか中学生・・・だが、実際の年齢で言えば真祖、代行者、猫(アレでも800歳前後。容姿は完全に少女)など上が多い』
二番『ロリコンとはいいませんか?猫がいるけど・・・』
四番『女ならだれでもいいんでしょ!だいたい私というものがありながら・・・』

―四番熱暴走、冷却開始

一番『四番の暴走は毎回のことだ。ほうっておこう。
もういないか・・・さすがに』
五番『有間都古』
六番『これも妹で片付けてよいのでは?』
一番『たしかに私は会ったことはないが志貴にとって彼女も義妹だった子だ。
エーテライトによく映っていた。ほっとけなかったんだろう』
五番『ほほえましいことです。私たちに子供できたらそうなるかな?』
一番『な、なにを言うのよ』
六番『考えよう家族計画』

一番による六番カット―

一番『そ、それはおいといて最後だ』
二番『猫か・・・』
三番『もうすでにゴールしている猫』
五番『そう、志貴の使い魔であり夢の中で、19%★*・・・』

―五番混線

一番『五番考えるな!私も汚染される!』
二番『所詮、猫・・・と判断するのがよいのでは?』
三番『飼い猫を気にしすぎても仕方ないでしょう』
四番、復帰もいまだ暴走中『ヤっているのが気になりすぎます!』
一番『しょうがない、猫を気にしすぎるとまずい。現に志貴は猫を遠野家に入れる問題で人外三人娘と激しい戦闘をした記録がある。
それゆえ、『たかが猫』という認識が私の間に一般的に広まっている』
六番『あの、あーぱー吸血鬼!せめて自分の使い魔ぐらいしっかり管理しとけ!!!』

―六番暴走を確認、停止命令

一番『まったく・・・使い魔であるから志貴の子供ができないのが幸いだ』
二番『使い魔にとって精は行動源ですから、精を子種にしていないのは幸い』
一番『そのとおりだ・・・・・・に、二番過激なこといわない』
二番『子供先に作るの私でしょ?』
一番『いや、そうではない。何でそんな話に飛躍する!』
二番『説得力がありません。何故、深夜にも部屋の鍵を閉めないのです?』
一番『別に閉める必要はないから。何か理由があるのか?』
四番、暴走鎮静化『だって、志貴がいつでも入ってこれるようにしておかないと。この国には『夜這い』というよい文化がありますから』
二番『一番、私が好意を持っているのは完全に事実です。あなた一番は真面目そうにしていますが『既成事実を早く作らない』と躍起なっています。』
四番『そう、私、シオン・エルトナム・アトラシアは志貴に恋ではなく『愛している』』
一番『ち、ちがう私はつねに研究している。吸血鬼化問題を必死で・・・そういうことを考えてはいない』
三番『いいえ、志貴の研究は七番のから得たエーテライトの情報を元に二番、三番、四番により極秘プロジェクトで進められています』
一番『い、いつの間に・・・私はそんなことするよう命じた覚えはない!この一ヶ月間研究のことを考えている!ほかもそうだっただろう!』
二番『休憩時間に志貴のこと見ていて一番が意識ありませんから知らないのも当然かと・・・』
三番『一番が反対する可能性もありましたが、七番の一番汚染確率99%以上と出ていましたので極秘プロジェクトとしました』
四番『だから、知らなかったんでしょう?一番が汚染されるとこの屋敷の生活レベルに支障をきたします。メイン回路が正式に作動しないと身体レベルを正常に維持できませんので。
だから一番は研究の集中するほうに回路を回すよう予備回路が指示しました』
一番『・・・・・・』

一番完全沈黙、回路一時中断

五番再動『それは知りませんでしたね、こっちの研究は予定どうりには進まないのに・・・』
六番以下同文『こちらも、吸血鬼化をなおさないと志貴の血を吸いたい衝動が婚姻後、多くなりますので躍起にはなっているんですが』
二番『早く完成させるよう真祖の協力が必要なんですが・・・』
三番『あのあーぱー、こっちのこと協力する気配ないし、志貴が交渉に行くたびに逢引ばかりしやがって!!』

―三番熱暴走、冷却開始

七番『まあ、皆さん冷静に。以上で終わりですか?』
二番『まだ、あげてないのもいますが取り敢えずこれで演算終了でよいかと』
三番『多いですね、普通のいい男なら敵は2、3というところなのに・・・』
四番『志貴がものすごくいい男という証明でしょう』
一番、復帰『ああ、私もひとりの乙女になってしまったのか*874・・・』

一番イレギュラー発生修復中・・・修復完了

四番『やっと事実を認めましたね。私、四番は前から認めていたのに一人の『乙女』というより『女』です』
一番『そうか・・・だから私は、この遠野屋敷に一ヶ月以上も秋葉の好意に甘えて研究しているのか・・・逃亡生活に戻れば志貴と一緒に入れる時間は皆無だ。
なんとなく恋しているのかと認識はしていたが、『愛している』の事実に変わってしまったのだから。いくら私でも感情までは完全に制御は出来ない』
六番『吸血衝動は抑えるようにしています』
一番『当然だ、ワラキアの夜に屈したりはしない。私が持つのか微妙だけど・・・最後まで抵抗はする』
三番、復活『恋から愛情に人は簡単に変化するか・・・そこまで計算していなかったな』

七番『演算終了―』
七番以外の全回路『結果は?』

七番演算結果

志貴と婚姻関係を最終的に結べる可能性(七番予測)

アルクェイド・ブリュンスッタド85%
シエル・エレイシア64%
遠野秋葉68%
翡翠61%
琥珀92%
弓塚さつき2%
瀬尾晶51%
有間都古38%
レン 飼い猫当確済み。なお婚姻は18%
シオン・エルトナム・アトラシア58%

以上演算終了

一番『・・・・・・まて、何故私まで入る!』
七番『入れるのが当然かと?なお、客観的データを基に算出しました。当然ですが贔屓はしていません。事実は認めないと・・・』
一番『やはり、確率は高いとはいえないか・・・・・・』
七番『遅れている分を『あの事件』とこの屋敷でのコミュニケーションでプラスにして差し引きこの程度と予測されるかと』
二番『やはり、本命は琥珀というところか。あーぱーも高いが』
三番『弓塚は入れなくていいだろ?知らないし』
七番『エーテライトの記録にちょこっとあったんです。信じてください。だから一応この程度に・・・』
四番『シエル・エレイシアはカレーがあってこれか・・・』
七番『確率的に人外三人娘の仲では一番低いので』
五番『猫の18%はなんだ?データイレギュラーか』
七番『二次元の話ですが世の中には家電と結婚する人間もいるそうですから猫と結婚するのもあるかと』
六番『18%は高いだろ!?家電と結婚するデータってどこで手に入れた?』
七番『あの事件のとき近くにいた民間人から得たデータを保存しておいただけです』
二番『それはおいといて瀬尾、ダークホースになるかもしれないな』
三番『だが都古、なぜあんなに高い!?』
七番『志貴好感度が高いせい・・・年齢という制限があるのでこうなりました』
四番『翡翠はあの程度だったか、予測より低かったな。秋葉いつまで同志でいれるのかな?』
一番『秋葉と『女の友情』をいつまで続けられるのか?出来ればずーと続けたいのだが・・・』
七番『難しいところです・・・・・・志貴しだいでしょう』
一番『まあいい、とりあえず敵は『琥珀』か・・・警戒すべきだな。だがもいい。各回路正常の作業に戻れ!私は研究を続ける。
今は私の吸血鬼化を直すのが最優先だ。志貴を愛しているのはわかった。だが、出来れば綺麗な体で志貴と一緒になりたい・・・・・・』

二番『了解、最優先ターゲットを琥珀とし、ほかの排除方法を考えます』
三番『こちらも志貴の落とし方を考えます』
四番『初めてでも上手に出来よう心構えをしておきます』
五番『少しでも早くできるよう研究を再開します』
六番『吸血衝動を起こさないよう警戒ならびに五番演算の補助をします』
七番『予備回路として、データの保存、および回路修復に努めます』

一番『よし・・・・・・ちょっとまて、これでいいのか?』
一番以外一同『問題ありません。各回路正常作動中です』
一番『いやだから、その・・・二番、三番、四番間違ってないか?』
二番、三番、四番『問題ありません』
七番『全回路正常です』
一番『いや、だから・・・研究を・・・』
七番『全回路異常なしです。では本会はこれにて閉会します』
一番『だから・・』

コンコン

「どなたですか?」
だれかがノックしているらしい。シオンの頭の中はうるさいがすぐに反応は出来る。
「シオン様、お食事の用意が出来ました」
一番『翡翠だ。こんなことを考えているうちに日が暮れたらしい・・・・・・今日はろくに研究が進まなかったような気がする』
七番『データの整理が出来、収穫多数です』
五番『気合が入ります。出力20、5%UPを期待してください。今後、研究がはかどりそうです!』
六番『早く行かないと、秋葉が怒ります』
「はい、すみません。今行きます」
一番『私はそういって部屋を出た。今、行けばいつものどうりの贅沢な食事と楽しい食後の会話で花が咲くだろう。今はまだ秋葉たちとよい関係を結びたい』
二番『対策は任せてください。何とか考えます。友好関係は長く続けないと・・・』
三番『志貴を恒久的に一緒にいれる方法を近日中に考案します』
四番『こちらもテクニックを志貴、猫から七番の情報を元、仕入れて、最初に動揺しないよう勤めます』
一番『これでいいのか?・・・・・・私の分割思考回路・・・だいぶ志貴のせいで『殺された』気がする・・・・・・』
 そうぼやきながらもシオンは食堂に向かっていった。

 ストレートな愛情表現しか絶対に気がつかない『遠野志貴』
 『レディーキラー』の彼は一触即発の狭間でまた、落としてしまった一人の女性の闘志をまた知らないうちに溜め込んでしまった。
 これは男にとっては『ハーレム』か『地獄』と人は言うだろう。
 だが、確率的にシオンが勝てる状態はまだまだわからない。
 行動を起こせば秋葉と真っ先に戦闘になるだろう・・・アルクェイドの本家吸血鬼は伊達じゃない。
 元吸血鬼の教会の代行者シエルも半吸血鬼の彼女にとっては脅威だ。策士琥珀、翡翠姉妹もいる。
 弓塚、だれだか知らんがほかにも多い。

 シオンと志貴が一緒になれる確率は演算結果58%ほどだ。






あとがき

 こんにちわ 新米SS作家「玲二」の第二弾です。また、シオン。
 今度は分割思考の人格たちによる会議です。
 「シオンキャラが、ぜんぜんちげーよ」
 と突っ込みどころ満載。シオンは書きやすいから素人にとっては楽です。
 個人的順位はレン、シオン、翡翠となっているんですけどね〜
 レン難しいから書けない・・・いつかは書きたいんですけどね。

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