ぞんびぐらしな作品紹介~その7~

 アニメがっこうぐらし!の放映に合わせて開始されたこの企画、しかし放映中に手が回らなくなり、停滞から休眠状態となってました。この企画を始める段階で、最終回にはコレの紹介をしよう!と思っていた作品があり、結局そのレビューも今まで書けずじまいとなっております。なので今年中に、ひとまずその作品のレビューだけは、書いてしまおうかと。ぞんびぐらしな以上、この作品のレビューは外せまいよ!

がっこうぐらし!

がっこうぐらし!

 学園生活部とは、みんなで学校で寝泊まりする部活。リーダー役でしっかりものなりーさん、シャベルが恋人元気でパワフルなくるみ、おっとりとした顧問のめぐねえと一緒に、丈槍ゆきは楽しい毎日を過ごし続ける!
 ……ゆきが見ている楽しさは虚構、すでに学校も含め社会は崩壊しており、めぐねえも消息不明。そこにあるのは、いつ終わるともしれぬ、ゾンビのごとき「かれら」に取り囲まれつつのサバイバル生活。見事な、表と裏です。裏もありありと書かれている原作がとうに出ているという状況で、表を押し通した制作サイドの努力は並大抵ではなく。だからこそ、アニメ一話で視聴者の阿鼻叫喚が起きたのでしょう。
 俺もこのホームページや日常会話では、「がっこうぐらし? 日常系な作品だよー」としらを切り通しておりました。でも日々を生きることが日常である以上、なにも間違ってはないですよね。でも一回、ネタバレ込みで話さざるを得ない状況がありまして……いやー、その一瞬は一瞬で、すっげえ楽しかったです!(満面の笑みで
 がっこうぐらし!のポイントとしては、やはり“狂気”の存在でしょう。そもそも、第一話の時点でゆき目線における学園の光景が、狂いですしね。日本発のゾンビ作品も増えた昨今ですが、ゾンビものの華である狂気を、こうも乗りこなしている作品は珍しいかと思います。なんと言いますか、狂気を描こうとしている作品も多いのですが、どちらかと言うと激情的な狂気が多いんですよね。大きなトラブルを巻き起こすものの、事態が収束、もしくは原因の排除により、収束してしまう発散型。この場合、狂気はテーマではなく、イベントに落ち着いてしまっているかと。あと、年齢層が高めな作品だと、狂気が性欲側や人としての黒さに振り切りすぎ、狂気自体が掻き消えてしまっていることも。その点、がっこうぐらし!の狂気は、一つの日常として書いている分、そのままありありと作品テーマとしても読者の心にもずっと在るんですよね。例えるならば、水面の如き静けさを持つ、清廉な狂気と言った感じでしょうか。激情枠ポジションには、りーさん入りそうですけど。
 しかし、がっこうぐらし! 冷静に作品の状況や単行本に付属している巻末資料を読むと、作中世界のきな臭さを感じます。そもそも、学校にライフライン完備され過ぎじゃない? なんで職員室に対ゾンビのマニュアルがあるのか? 舞台となる巡ヶ丘学院の校歌、オドロオドロしいよ!? 読めば読むほど謎や怪しさは尽きません。この作品、原作者の海法さんを筆頭に、アニメ漫画共にゾンビ好きスタッフが一挙集結してますからね。小ネタからして、色々ぶっ込んでおります。イメージで語るならば、「海外で評判のゾンビ映画が日本で発売されない?」という状況に際し「よし個人輸入だ!」「専門店行ってくる!」と、どうにかする手段を選ぶ方々かなあと。そんな好きと情熱が、めっちゃ詰まっております。
 太郎丸のピックアップやみーくんの登場時期を早めることで、原作既読組にすら先を読めなくしたりと、アニメ方面でも触れたいことは多いのですが、流石に長くなりすぎるので、俺が個人的に一番好きな部分を挙げさせてもらいますと……死がまかり通る世界における、生の見事さですね。
 俺が個人的に一番好きなシーンは、原作第四巻で、くるみが首吊り死体を目にして「いくじなし」と口にするシーン。冷酷にも見えますが、この状況で生活することを選んでいるくるみから見れば、絶望から死に逃げた人間はいくじなしでしかないのですよ。
 後は、めぐねえ。大人ポジションなのですが、万能で優秀な人ではない彼女。でも、本編で描かれていない部分や回想でのめぐねえは、唯一の大人として色々なものを抱え込み、みんなと共に生きようとしていました。そして、めぐねえが迎えた結末。「かれら」となり、心が虚ろとなった状態でも、みんなのためを思い出せためぐねえ。めぐねえは生きることが出来ませんでしたが、彼女の生と死には、残酷さややりきれなさと共に、一つの美しさも同居していたかと思います。
 アニメは終わりましたが、原作は続刊中。高校を卒業し、大学に向かった学園生活部はどうなるのか? 卒業が、彼女たちにもたらした変化とは。不穏の種があちこちにある現状。どう転んでもおかしくない、進学大学編。アニメ再開もアリじゃないかな! 最後の犬、気になるし!
 いやー、本来ならゾンビに引っかからない層を、アニメというメディアで釣り上げるという釣果! やがてそこから新たな発想が生まれ、パンデミックの如く新たなゾンビ物が増えていく。ゾンビって、いいですよね! 
 

ぞんびぐらしな作品紹介~その6~

 えー、がっこうぐらし!の放映に合わせて、ゾンビ系の作品をアップしていこうぜ!との思いから始まったこの企画。自分の都合もあり、更新停止から最終回後の今日に至ってしまったのですが、どうしても紹介したい作品が幾つか残っているので、あと複数回不定期で更新させていただきます。
 本日取り上げる作品は、生ける死者であるゾンビものとは違うのですが、怪物側の持つ数の暴力+閉鎖空間における人間同士の不和、これらゾンビものの華と呼べる要素については天元突破気味な作品なので、まあ取り上げても問題無いだろうと。もしそうでなくとも、ゾンビファンには、きっとウケがイイなあとも思い。

GIRLS(アメリカンコミックス:イメージ・コミックスより発売)

GIRLS

 とある田舎町、Pennystown。青年イーサン・ダニエルは、バーからの帰り道、神秘的な美しさを持つ裸の女と遭遇する。いったい彼女は何者なのか。だが、ダニエルにも街の人々にも、それを推測する暇はなかった。街に次々と現れる美女の群れ、彼女、もとい彼女たちは、巨大な卵から生まれていた。卵は、男性との生殖行為の後に誕生し増えていく。謎の美女の群れは町の男を惑わしさらっていくが、生殖行為の相手にならない町の女は殺害の対象でしかなく、次々と数の暴力により殺されていく。
 美女の出現と同時に、トウモロコシ畑に出現した謎の巨大生物、透明のドームによって封鎖された町。女性は生き残るための戦いを始め、男性は理性と本能の間に苛まれることになる。
 
 ゾンビを美女に変えただけで、こうも面白くなるとは。一歩間違えればソレナンテ・エ・ロゲで、実際セックスはテーマの一つでトウモロコシ畑の巨大生物はまんま精子と、中々に下ネタという概念が存在する世界なのですが、こういうネタもOKなら実にグッと来る作品。
 ゾンビというのは本来無差別に襲ってくるものなのですが、GIRLSの場合、ここに男女の差を投入することでギスギス感が倍増。男性は直接殺されないものの、女性は数の暴力で殺されるのみ。必死の防衛戦を続ける中、捕虜として捕らえた美女のところに卵が! 誰がセックスしたんだこの野郎!なんて展開も。思わず抱きたくなる美女というエッセンスが、ホント効いています。だってこんなの、どう考えても男女に不和が生まれて当たり前じゃないですか!
 生殖機能の無い男性は女性同様に殺される動物界的なシビアさに、この異常な状況で試される個々の絆、そして予想のラインにありつつも想像を超えてくるオチ。名作というより、怪作カテゴリーに属するこのGIRLS。女の子+ゾンビという方程式はがっこうぐらし!と同じながらも、全く違う着地点。世界は広い……。

日々雑談~1963~

 ゾンビ系作品を紹介する「ぞんびぐらしな日々」は、本日お休みをいただきます。申し訳ありません。
 ゾンビ物を大別すると数や社会の破壊を主とした「災害としてのゾンビ」(例:がっこうぐらし!やデッドライジング)と、ゾンビ自体の強さを追求する「怪物としてのゾンビ」(例:バイオハザードやレフト・フォー・デッド)、この2パターンがあると思うのですが、アメコミヒーロー派生な作品だとマーベルゾンビーズやVSマーベルユニバースと、前者に近いの形の物が多いのはなんでだろうなと。ゾンビ化するのが、元より強い超人というのはありますが……ああそうか。ゾンビの強さの追求や怪物化に重点を置いてしまうと、元の環境のせいでゾンビっぽいヒーローやヴィランの枠に収まってしまうのか。そりゃあゾンビものとしては、本末転倒だな……。

 徳光康之先生の、最狂 超プロレスファン烈伝が電子書籍化と聞いて、眠っていたプロレス魂がムクムクとね! 読む前の段階、聞いただけでガソリンぶっかけられた気分になるんだから、この本やっぱすげえよ。失礼ながら、10人読んだら10人分からないくらいにディープなプロレスネタばかりの漫画なのですが、100人読んだら1人は即死寸前クリティカルヒットな人が居るだろうなと。まさに最狂な作品。こうして好きを全力で追求する本は、やはり愛おしいですよ。

ぞんびぐらしな作品紹介~その5~

 めぐねえを悼みつつ、勢いでなんとか更新。ゾンビとは災害であり現象であり、無限の可能性! 今日紹介するのは、デッドライジングに引き続きまたもゲーム。次回辺りは漫画か映画か!?

 Left 4 Dead(ゲーム)

 PCとX-BOX360、最近ではアーケード版も展開されているゾンビFPS。四人の生存者は一丸となり、チャプターごとに区切られた各ステージからの脱出を目指す。この作品のゾンビは感染者。音に機敏に反応し、一度狙いを定めたら猛ダッシュで殺到してきます。停めてある車のアラームを鳴らしてしまうと、同人イベント開始時のダッシュもかくやの勢いであちこちから走ってきますが、これを逆手に取り音を発しつつ爆発を起こすサブウェポンのパイプ爆弾という物があったり。
 感染者は脅威ではあるものの、しっかりと四人で連携を取り、壁を背にするなどの防護策を取ればなんとかなります。問題となるのは、特殊感染者。嘔吐と死亡時の爆発で感染者をおびき寄せるブーマー。跳躍力で飛びかかってくるハンター。舌でこちらを遠距離から締め付けてくるスモーカー。異常なタフネスと突進力を誇るタンク。近寄らなければ無害なものの、一度刺激してしまうと最凶の敵となるウィッチ。彼らという強敵をどうさばくかが、生きてゴールへたどり着くための肝です。
 このゲームで重要なのは連携。例えば、ハンターの跳びかかりと、スモーカーの締め付け。一度決まると、他のプレイヤーにどうにかしてもらう以外の選択肢がありません。なので、どんなに阿修羅のように強いプレイヤーでも、単独でのクリアは困難。感染者に囲まれてる時にでもハンターが跳んできたら、回避の仕様がないですしねえ。
 もう一つのウリは、AI Director。プレイヤーの残り体力や残弾数により、アイテムや敵の配置を毎回調整するシステム。これにより、どんなに慣れたステージでも新鮮さが。どんなにアカン状況でも一筋の光が! この難易度調整機能のお陰で、飽きやマンネリは、結構打破しやすいです。どんな状況でも引きこもることで安全を確保できるポイントもあったのですが、これは続編で一気に改善されました。開けたステージじゃ、引きこもれめえよ。
 シングルプレイにも対応していますが、やはり盛り上がるのはマルチプレイ! AIによるアトランダムな舞台と人の思惑、そこに生まれるのはドラマ! そして、恐るべきは対戦モード。四人一組でチームとなり、生存者役と特殊感染者役を交互にプレイ。上手く生き抜いて殺し尽くしたチームが勝者に。いやねえ、当然生存者側も連携は大事なんですが、感染者側が上手く連携取ると、えらく怖ろしいことに。具体的に言うなら、スタート地点であるセーフハウスの扉を開けて全滅。
 まずブーマーがドアの影に陣取り、自爆! 押し寄せる感染者! 慌てふためく生存者に飛びかかるハンター! 仲間を助けずに逃げ出した生存者もあえなく死亡! 結果全滅の地獄絵図に。なお自分は、スモーカーとして最後尾の生存者を上から吊るして殺害。お化け屋敷の脅かし役の楽しさが理解できた瞬間でした。
 ダッシュするだけでもアレなのに、人の知恵と策謀がついたゾンビ怖いわー(他人事)。

ぞんびぐらしな作品紹介~その4~

 先週は手が回りませんでしたが、今週は「舞台がショッピングモールですって!?」ということで、なんか色々燃え上がった勢いで更新。みーくん加入のエピソードは、原作でも屈指で好きなシーンでして。なお一番好きなシーンは……「いくじなし」かなあ。あの生と死の狭間が、どうにも心に残っておりまして。アニメで、是非とも声付きで聞きたいな。
 というわけで、今日の紹介はショッピングモール&ゾンビの相性の良さを、改めて世に知らしめたあの名作ゲームです。

 デッドライジング(DEAD RISING):ゲーム

 生きてる限りはー弱肉強食サバイバル! なんとしてでも72時間生き残れ! デッドライジング!
 OPソングはガガガSPによるWii版主題歌『デッドライジング』。本日の紹介は、X-BOX360の風雲児、デッドライジングです。
 まー、とは言っても、既に名作としてのポジションを確立している本作。主人公のフランクさんも本人の阿修羅の如き強さとまろやかなコク、マブカプ3のような他作への出演で知名度ドカン!と、基本今更なのですが。それでも、書きたい時、語りたい時はあるよね!と。
 特殊部隊VSゾンビで大当たりしたカプコンが打ち出した、ゾンビゲーの新機軸! プレイヤーは民間人の記者フランク・ウェストとして、舞台となるショッピングモールで72時間大暴れ! もとい、生き残れ! アウトブレイクの真相に迫るというメインストーリーはあるのですが、無視しても全く問題なし。生存者の救出に全力を注いでもいいし、ゾンビ無双を全うしてもいいし、ボディコン服を着て一人ファッションショーをキメてもいい。とにかく、自由。ショッピングモールにある無数のアイテムが、どんな遊び方をも加速させてくれます。
 そしてフランクさんの絶妙なまでの、能力の伸びしろ。この作品、ゾンビ一体なら楽勝、数匹に囲まれると一気にキツくなるといった感じなのですが、アイテムの場所や使い方、様々なスキルの習得、プレイヤーの熟練、これらの要素がフランクさんに注ぎ込まれることによって、例え100匹に囲まれても切り抜けられるだけの強さに。超強い無敵モードではなく、熟達が強さにつながっているのが実感できるのがいいよね。
 そしてこの作品は様々な人にゾンビへの夢を与えたと思うのですよ。ショッピングモールという舞台、群れて脅威となるゾンビ、ゾンビよりも怖ろしいサイコパス(狂人)。バイオハザードよりも、旧来のゾンビものに近い観点で作られた本作。バイオハザードとは違う可能性やここまで出来るという成果を示してくれた結果、ファンだけでなく創作者をも刺激。今の創作におけるゾンビ隆盛の下地を作ってくれたのではないかと。良作は、創作者の意欲を刺激し、創作者の行こうとする道を補強してくれる。商業的な成功以上の物を、デッドライジングは見せてくれたんじゃないかと、こう考えております。