日々雑談~6610~

 最近エンドゲームで一旦マーベル・シネマティック・ユニバースが落ち着いた影響かMCU全体を見直す流れが出てきたので、なんとなくその流れに沿ってぽつりと呟いてみる。第一作のアイアンマンでコミックスと映画の適切な距離感を一度図れたのはシリーズの今後においてデカいよなあ……。この後のアベンジャーズまでのMCUフェイズ1作品群は基本手堅い作品が多いものの、アイアンマン2は前作でしっかり土台を作った分、少し挑戦的でしたね。むしろアイアンマン2は、挑戦的な作風となるフェイズ2を先取りしていたと思う。やっぱMCUは、アイアンマンが引っ張ってたんだなあ。

フューチャー・アベンジャーズなコラム~その6~

 フューチャー・アベンジャーズ第6話!
 アディを押しつぶしそうになる後悔。だがアベンジャーズには、同じように後悔を背負い続ける男がいた――

 

 マコトが無邪気にヒーローになりたがりアーマーを欲しがるのは、本人の性格に加えてヴィランとしての活動期間が無いというのも大きいのでしょう。ヴィランとして育てられつつも、ヴィランとしての経験や悪しき心を宿らせる洗脳がなければ、それはヒーローにも成り得る無垢な力。妖刀だって、打たれてから何も切らなければ単なる名刀です。

 そうはいかないのが、ヴィラン“テクノプリースト”としての活動期間があるアディ。特に何をしたのかは語られなかったものの、斡旋がヒドラで、当人の能力が機械を自在に操れるテクニカルアクト。この近代化社会で機械を操るということは、ある意味万能にも等しい力です。

 その力をヒドラの指示通りに振るえば―― きっと、少年が背負うにはあまりに重すぎる荷が、容易く生まれてしまうでしょう。

 

 ヒーローとは正しくあろうとする者であったとしても、誰もが生まれてから今まで清廉潔白とは限らない。
 アイアンマンとなる前の、武器商人トニー・スターク。未だトニーが作った武器が世界中にあり、数々の悲劇を起こしているのは映画でも描かれたこと。それに、戦場で死にかけるという事故が無ければ、トニー・スタークは武器商人として今でも活動していたかもしれない。

 トニー・スタークは、ヒーローとして活動をするには汚れすぎているし、信頼できる過程でヒーローになった人物ではない。これもまた、一つの正しい指摘です。

 

 そんなトニーの過去を知り、それを認めぬと同時に恨みの炎を燃やす男、エゼキエル・ステイン!

 映画アイアンマンでもトニーの殺害を目論見、コミックスでも強大な敵として立ちはだかったオバディア・ステインの息子。死亡した映画や、自殺したコミックスとは違い、フューチャー・アベンジャーズの世界ではオバディアも生きて収監されているようですが、まあ十中八九、ロクでもないことをやらかしたのでしょう。つーか、キレイなオバディアって想像できねえ。

 エゼキエルが使用するのは、オバディアの遺産とも言えるアイアンモンガー。そして自ら強化改造を重ねたアイアンモンガー2。アイアンモンガー2のスーツは、エゼキエルがコミックスで装着したスーツに酷似してますね……ただ、アイアンモンガーとビジュアルが違いすぎる上に、元祖と2を作る間に技術が進歩しすぎてて、これ同型機扱いでいいのかな? とファンの間でも議論を読んでいますが、それはさておき。ガンダムで言うなら、一年戦争と∨ガンダムのMSぐらいの差があると言ってもおかしくないもんな。

 

 アイアンマンの罪を糾弾しつつ、過去のデーターより完璧な対策を打ち立てたエゼキエルの二段構えな作戦。罪をただ黙殺すればヒーローとしての資格が疑われ、単に敗北すればそこでオシマイ。非常に狡猾です。そしてエゼキエルは知らないことですが、トニーが罪との向き合い方を誤れば、アディもおそらく潰れてしまっていたでしょう。

「過去は変えられない。だが、未来を選ぶことはできる」

 トニー・スタークのあり方は、エゼキエルからすれば不条理で、厚顔無恥な答えなのかもしれません。でも、トニーは世界中で少なくない人間が向けている自身への恨みと、武器商人としての罪を自覚している。自覚しつつも、自分ができることをやり続け、ヒーローに相応しい人間として振る舞い続ける。厚顔であったとしても、その内では恥も罪も渦巻いている。それでも、前に歩み続ける。

 トニーの過去のデーターを分析することで満足してしまい、過去の恨みが原動力であるエゼキエル。とどまったまま追いつこうとする人間が、先ゆく人間に勝てるものか。この辺、エゼキエルは、足を引っ張ることに頑張りすぎた、どこかの魔女にも似てますね。せっかくノベライズでヒロイン力上げたんだから、笑顔で幼女の爪とか剥がしてんじゃないよ、もう。

 トニーの生き方は、過去を忘れ去るよりも辛く、一方誠実な生き方。実際アディもトニーのあり方に救われましたし、この生き方はメイン視聴者層である子供にとっても、早く知っておくべきことではないですかね。子供や若者はやってしまったという後悔を背負いがちで、処理の仕方を知らないまま、潰れてしまうこともあるので。忘れるのもいいけど、こうやって重荷と付き合い続ける生き方もあるんだよと。ある意味キツい生き方ですが、知らぬまま潰されるよりかはナンボかマシでしょう。

 ヒーローが、強き背で一つの生き様を見せるのって、古今東西大事なことだと思うよ。

 

 アディという新キャラクターの悩みに、己の生き様で答える既存かつ人気キャラのトニー・スターク。敵は、未来を生きようとする彼らと相反し、過去を力とするエゼキエル・ステイン。

 新キャラ、既存キャラ、そしてヴィランと、ものすごいカッチリとハマってます。後述してますが、後から追う者であるエゼキエルの造形もフューチャー・アベンジャーズ独自ではなく、元々の彼のキャラ造形なんですよ。当然、作品に適した形にはいじってますが、根本的には同じ。つまり在るものを理解した上で新しいものを組み合わせて、見事な造形を成し得たということです。

 実際、今回のエピソードのハマり具合は、原作付きアニメ全般にまで話を広げてもスマッシュヒット級ですね……。いやあ、楽しみつつも勉強になりました。

 

 今回紹介するのは、エゼキエル・ステイン!
 実は、以前マッドハウスにて制作されたアイアンマン ライズ・オブ・テクノヴォアにも出ていたりするのですが、こちらでは美少年キャラ。フューチャー・アベンジャーズのエゼキエルも路線は違うとは言え、中々に精悍な顔立ち。エゼキエル、マッドハウスのアニメだとイケメン化する地形効果でもあるんだろうか。

 

 

エゼキエル・ステイン

 自身の財力と知力でトニー・スタークを心身共に限界寸前まで追い詰めたアイアンマン最大の敵の一人、オバディア・ステイン。
だがトニーは、オバディアの策謀を乗り越え再起。オバディアは部下の科学者に作らせていたアイアンモンガーのスーツを装着し、アイアンマンとの直接対決に望むものの、敗北。敗北者となったオバディアが自殺したことで、オバディア・ステインの野望は幕を閉じた。

 しかし、オバディア・ステインの野望は終われども、彼の計画は終わっていなかった。人の心理を知り尽くすオバディアにより、トニー・スタークへの憎しみを思う存分注ぎ込まれた、復讐の申し子。その名は、エゼキエル・ステイン。オバディアが持つ財産と悪意を受け継いだ、オバディアの息子である。だが、オバディアが死んだ時、エゼキエルはまだ子供だった。エゼキエルはトニーへの恨みを煮えたぎらせながら、自身の成長を待つこととなる。

 オバディア・ステインは優れた知性を持つものの、彼はあくまで“一流の企業家”だった。オバディアが装着したアイアンモンガーの制作は部下が担当しており、オバディア自身も平均的な男性の身体能力以上の力は持っていなかった。自分の知性と企業家としての力でトニーを追い詰めたオバディアだったが、一方で自身が持つことのできなかったトニーの科学者や装着者としての才能も認めていた。

 だからこそ、オバディアはエゼキエルに一流の科学者や装着者になれるような教育を施した。エゼキエルは幼少時から類まれなる才能を発揮し、オバディアの手にあるヴィラン用の装備や超兵器を設計製作したとも噂されている。

 

 オバディアの死からしばらく後、表舞台に立ったエゼキエルは、自身の天才性を証明するがごとく、トニーの技術を模倣かつ一般化し、闇市場に流してしまう。

 エゼキエルは先ゆくトニーに勝つための手段として、アーマーではなく自分自身を改造することに思い至る。手術の結果、エゼキエルはアーマーを装着せずともアイアンマンと戦えるだけの力や治癒能力を手に入れる。エゼキエルもアーマを装着するタイプのヴィランだが、彼のアーマーは優れた身体能力や手術の代償に高熱を発するようになった身体の補助と、若干違うコンセプトである。

 

 エゼキエルは優秀な科学者であり装着者であり、父譲りのビジネスセンスも持っているが、弱点も多い。

 まず一つは、自身の身体にメスを入れてしまったこと。前述したとおり、エゼキエルの身体は常に高熱を発しており、特性のインナースーツを脱ぐことができない。身体の新陳代謝もおかしくなっており、エゼキエルは常人の10倍以上のカロリーを欲する。これは全て、手術の代償である。

 第二に、エゼキエルはオバディアから知性と恨みだけではなく、彼の傲慢な性格まで引き継いでしまったことだ。エゼキエルは、人々とは自分にかしずく存在だと思っており、その傲慢さにより多くの敵を作ってしまっている。

 そして第三に、オバディアの天才性に革新的要素が無いことである。アイアンマンスーツを1から作り上げたトニーや、広く宇宙や次元を旅し数多の理論を打ち立てたリード・リチャーズ(Mrファンタスティック)とは違い、オバディアの製作物や理論には斬新さがない。トニーにも優れた知性は認められているが、エゼキエルのあり方は分析や応用に特化した模倣に近い。先行く思考を持たない限り、エゼキエルはトニーの後塵を拝するしかないだろう。

 エゼキエルは、様々な手段を講じてトニーを追い詰めるが、とどめを刺すには至らず、敗北を積み重ねてきた。オバディアのように企業家としてアイアンマンに立ち向かったジャスティン・ハマーの後継者であるサシャ・ハマー。似た境遇にある彼女と手を組み、自身の技術を販路に乗せることで、スーパーヴィランの持つ装備は、アイアンマンに近い域まで進歩してしまった。科学で先行くアイアンマンが、同じ分野に属する敵に苦戦するのは、模倣者エゼキエルの成果の一つである。

 

 エゼキエルはある時、爆発事故に巻き込まれ、頭部の毛を全て失ってしまう。スキンヘッドとなった彼の姿は、同じスキンヘッドであった父オバディアに不気味なほど似ていた。


※オバディア


※エゼキエル

 オバディアに似た顔と精神性、他人の技術を模倣することに長けた知性。トニー・スタークが未来を生きようとする男ならば、エゼキエルは過去で生きる男なのだ。

ディスクウォーズ:アベンジャーズなコラム~その48~

 ディスクウォーズ:アベンジャーズ、48話。
 押し寄せる闇、防げるかどうかの水際作戦! 

 ハルク&ワスプ&キャプテン・アメリカ、数の不利を物ともしないバイビースト&アイアンモンガー。巨体かつパワフルな戦艦クラスの二人とはいえ、相手に大和型戦艦クラスのハルク+超優秀な軽巡と駆逐艦なキャプテン・アメリカとワスプがいる状態で、よく頑張った! そもそも数的に最初から不利だし! 後述する通り、アイアンモンガーは最近出番が増えておりますが、バイビーストはホントにね! 昔はダンジョンの奥に居るそこらのボスより上の強敵扱いだったのに、最近は何処でもエンカウントする、パーティー構成ではめんどくさい敵レベルに。アニメとか他所のメディアでも、殆ど出番ないし! ディスクウォーズ参戦キャラに賞か何か上げるとしたら、バイビーストは努力賞の有力候補にしてもいいんじゃないかと!
 ここまで褒めておいて努力賞なのかよ!?とお思いでしょうが、結局支援艦隊来て負けましたしね? 優秀賞やとうどうグループとくべつ賞は、流石にもっと別の候補がいますし……。でも、耐え切ってセカンドヒーローを引き出したことは、評価的にプラスだな、うん。

 いやだなあ、ウォーマシンの事を忘れてませんよ! 本来、セカンドヒーロー一番乗りポジションだったじゃないですか! コイツ、モードック撤退させてマイアミの話したこと以外何もしてねえななんて思ってませんよ!
 ウォーマシンはともかく、多分みんな忘れてたのはロキ様。ドルマムゥが来る!の話題性に、持って行かれていた感はあり。そしてロキ様が輝くのは、こういう人の思考の隙間ができた瞬間。ダークゲート発生装置の破壊とドルマムゥ出現の危機に焦っていたアイアンマンやアキラの隙を突く大活躍。一期ボスの時みたいにデカい力を手に入れて調子乗るのもロキっぽいけど、嫌な所に陣取る敵として出てくるのもまたロキらしさ。強敵や大敵よりも、嫌な敵という評価が似合うのがロキ様の個性にして強み。

 掴めなかったその手を、今度は掴んでみせる。ロキ城での決戦、父親に「息子のために手を離す」という選択肢を選ばせてしまったアキラの後悔。その後悔の精算となったのが、今回の話でした。
 直接戦闘に挑むポジションではないため、戦闘力や攻撃力のような分かりやすい成長度合いは無くとも、バイオコードの進化やパートナーの絆の強化と、アキラ達は確実に成長を重ねてきました。ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーとの邂逅、ビルドアッププレートの開発、強敵レッド・スカルとの死闘、ウルトロンとの大決戦、デッドプールとの……必要ない、消せ(ロキ談)。
 ローニンとの攻防も含め、成長しなければ乗り越えられない困難を越えてきたことは、成長の証と言ってよいかと。その成長の結果が、ローニンの手を手放さなかった事、逆転の一手となった事。こういう前に進むことで得た物が分かる瞬間は、自分の大好物です。これこそ、長期ドラマの華よね!

 今日の紹介は、鋼鉄の門番アイアンモンガーで! 原作や映画における搭乗者オバディア・ステインにも言及! 巨大な体躯と大火力! 軍事兵器色、非常に強し!

アイアンモンガー

アイアンマンVSアイアンモンガー

 映画にも登場した、アイアンマンをベースにした巨大アーマー。着用者に並外れた身体能力を与え、リパルサー・ビームやレーザーブラストを放つことが出来、ブーツからのジェットで飛行も可能。登場してからしばらくは、オリジナルより複製されたスーツを纏う人間が居たが、ブリザードウィップラッシュのような特化型や特殊装備型でもなく、あくまで大きなアイアンマンでしか無いせいか、スーツとしての出番はインパクトの割に少ない。
 アイアンモンガーをスーツとして解説した場合、本当にこれだけで終わってしまう。だがしかし、アイアンモンガーは今後に繋がる予定の映画アイアンマン、その第一作のヴィランに選ばれたキャラクターである。彼の真価は、アイアンモンガーを纏った男、オバディア・ステインと共に在ることで発揮される。
 企業家オバディア・ステイン。経営学を学び、修得の証であるMBA(経営学修士)を取得。心理戦に長け、非常かつ効率的なビジネス戦略を好む一流の企業家。心理戦や戦略は、得意とするチェスで鍛えあげられており、チェス自体の腕前もチャンピオンクラス。完璧なロジックで磨き上げられた人生こそ、オバディアが歩んできた道である。
 だがしかし、その本質にあるのは物事を勝ち負けでしか、むしろ自分が勝って当たり前の物としか考えられないどす黒い本性であった。子供の頃、チェスでオバディアと互角であった少年は、その結果オバディアに愛犬を殺されてしまった。つまりこの常軌を逸した精神は、幼年期より持ち合わせていた物である。

オバディア・ステイン

 非常に、並べてみたら分からないレベルで、他所の出版社で活躍する超有名アメリカンヒーローのライバルに似ているが、ひとまずそこはスルーして欲しい。多国籍軍需企業、ステイン・インターナショナルの社長となった彼にとってのライバル、勝つべき相手はスターク・インダストリーズの社長であり企業家のハワード・スタークであった。だが、ハワードは事故死。会社は父以上の才覚を持つと言われているトニー・スターク(アイアンマン)が引き継ぐこととなる。表向きは友好関係を保っていたオバディアだが、付き合いつつもトニー・スタークの情報を収集。トニー・スタークがアイアンマンとしての重責に耐えかね、アルコール依存症となった事。友人の力にて立ち直った事を知る。オバディアにとって、このトニーが見せた弱さは、チェックメイトに繋がる一手であった。

アイアンマン:デーモン イン ア ボトル

 オバディアは、得意の心理戦と権謀術数を駆使することでトニーを再びアルコール依存症に陥らせてしまう。スターク・インダストリーズはステインに買収されてしまい、地位も名誉も財産もアイアンマンとしての立場も酒で失ったトニー・スタークはホームレスにまで落ちぶれてしまう。先のアルコール依存症以上の没落。オバディアの完全勝利であった。彼にとってはトニーですら、自分の人生を彩る敗北者の一人に過ぎなかったのだ。
 オバディアに負け、浮浪者となり全てを諦めかけていたトニーだが、偶然出会った女性ホームレスが自身の命と引き換えに子供を産んだ瞬間、生命の誕生と死に立ち会ったことにより、人としての現実と希望を取り戻す。周囲を見てみれば、空位となったアイアンマンの座は親友ジム・ローズが必死で守り続け、アベンジャーズの仲間たちも変わらず居る。全てを失ったわけではない、奮起したトニーはアルコールと決別、赤と銀の2色が特徴的な新型アイアンマンスーツ、通称シルバーセンチュリオンと新会社スターク・エンタープライズ社を作り上げオバディアに挑んだ。

アイアンアーマー マークⅧ(シルバーセンチュリオン)

 なお余談ではあるが、浮浪者となった時に女性ホームレスと出会わず、代わりに変な赤タイツと出会った結果、モードックが首領を務める秘密結社AIMに売っぱらわれてしまった平行世界もあったりする。なんてバッドエンドだ。

トニー・スターク売るよ!

 一方、オバディアだが、負かしたと思ったトニー・スタークの再起に動揺。再起した敗北者により追い詰められた結果、遂にトニーが直接アイアンマンとしてステイン・インターナショナルに乗り込んでくる事態となる。だが、オバディアの手元には最終兵器があった。スターク・インダストリーズを乗っ取った際に見つけた、アイアンマンスーツのデーターと実物。彼は部下に命じ、アイアンマン以上のスーツを制作させていた。
 オバディアの元に乗り込んだアイアンマンが目撃したのは、自分のスーツ以上の大きさと性能を持つ鉄の巨人アイアンモンガーだった。アイアンモンガーとなったオバディアと、アイアンマンであるトニー・スターク。二人の企業家の最終決戦は、肉弾戦となった。

アイアンモンガー

 アイアンマンを超えるアーマーの名に恥じぬ性能を見せ、アイアンマンを圧倒するアイアンモンガーだが、やがて最大の弱点が露となる。トニー・スタークとは違い、スーツを着た経験が無いオバディア。その経験を埋めるため、アイアンモンガーは外部PCの遠隔操作による補助を受けていたのだ。遠隔操作の妨害より、活路を見出したアイアンマンは、アイアンモンガーを遂に撃破する。
 自らの敗北を悟ったオバディアは、トニーに自らの父親の死について語り始める。自分の父親はギャンブラーであり、ロシアンルーレットに失敗して死亡した。父の死を目の当たりにした恐怖で、自分の頭の毛は抜け落ち、敗北とは死である事を学んだ。オバディアの勝つことへの病的なまでの執着は、この一件が原因だったのだ。
 そして敗者となってしまった自分に、生きる資格はない。気づいたトニーは制止するものの、オバディアは自らのリパルサーにて頭部を撃ち抜き死亡する。敗北とは死であると身を持って教えてくれた、自らの父と同じように。勝者であるトニーは全てを取り戻し、敗北者であるオバディアは死亡した。再起したヒーローと再起を選ばなかったヴィランの戦いは、こうして終了した。

オバディアの死

 アメコミのキャラクターは死亡や蘇りが激しいが、オバディア・ステインは蘇っていないキャラクターの一人である。あの世に居ることの確認や短期間の復活はあるが、本格的な復活には至っていない。そもそも、初登場が82年で自殺したのが85年と、映画ヴィランに選出された割に、非常に活動期間が短い。他の映画第一作のヴィラン、レッド・スカルやロキの活動期間数十年+継続中と比べれば、その短さは更に際立つ。
 だがしかし、アイアンモンガーとオバディア・ステインは立派に映画ヴィランを務め上げてみせた。

映画版アイアンモンガー&オバディア

 他所のハゲで企業家な有名ヴィランと差別化するために髭を生やしてみよう! 技術の未熟さによる巨大化とリアクターの窃盗。こうすれば、トニー・スタークの天才性が揺らがぬまま強敵になれる! 非常に細かな気遣いにより、アイアンモンガーとオバディア・ステインはアイアンマンの強敵として再生を果たした。以後、オバディアとアイアンモンガーは、アイアンマン・ザ・アドベンチャーズやディスク・ウォーズ:アベンジャーズのような世界観を再構築したアニメ作品にて、ラスボスや強敵として存在感を示す。ディスクウォーズのアイアンモンガーの中身については明言されていないが、ビジネスパートナーや技術の窃盗といった評価からして、オバディアのルートからおそらく外れていないだろう。

アイアンモンガー(アイアンマン アドベンチャーズ)

 原作での、トニー・スタークを浮浪者にまで追い詰めた数年間。この濃い数年の結果、トニー・スタークは未だにアルコールに脅かされ、様々な世界にてアイアンモンガーはアイアンマンの前に立ちはだかっている。だがある意味これは、敗北は死であり終焉と考えていたオバディアにとって、皮肉的な今なのかもしれない。