Amecomi Katatsuki PUNISHER VS Kiritsugu Emiya~Side P~ 2

 駆けつけた時、既に魔術師は死んでいた。だが、犯人と目される衛宮切嗣はまだ現場に居た。有無も言わさず、魔術師殺しを殺してやろうとしたものの――
 パニッシャーは、己の予想が外れた事を、認めざるを得なかった。
 この男に、魔術師らしいカッコつけなどない。その程度の相手ならば、既に第一射で蜂の巣にしている。
 だが、彼はアパートの一室から躊躇いなく逃げ出した上に、反撃を繰り返しつつ撤退。持ち込んだ武器弾薬の大半を使っても、仕留め切ることが出来なかった。
 そして、遂には――。
 暗がりから飛び出してくる影、だが警戒中のパニッシャーは、容易く影に向けナイフを突き立てる。狙いは脇腹の大動脈。即死には至らずとも、失血による致命傷に至る箇所だ。
 しかし、狙いは外れ、逆に肩口を切り刻まれる。骨にまで達した傷、押さえつけたくなる衝動を抑えこみ、代わりに影の腕を掴み上げる。冷徹を顔に貼り付けたような若造が、そこに居た。
 自らのナイフを投げ捨て、開いた手で切嗣の手にしたナイフを取り上げる。床に投げ捨てたナイフは、自分が使っているタイプと良く似ていた。
 捻り上げた腕を掴み、投げ捨てる。足元に転がった切嗣の顔面めがけ、膝を落とす。膝から伝わる、地面の硬さ。逃げおおせた切嗣は、再び物陰に消えていた。
 高さはなくとも、広さを持つスーパーマーケットの屋上。物陰も沢山あるこの場所に逃げ込まれてからずっと、大不調であった。追い詰めた獲物が、一転して牙を剥いてきている。
 何度か決められるタイミングで、するりと逃れられている体たらく。時折聞こえる、無機質な呟き。衛宮切嗣は、自身も魔術師である。そんな基本的なことを思い出す。おそらく切嗣は何らかの魔術で、自身を補強しているか、パニッシャーに負担をかけている。逃げられる度に感じる妙な違和感は、きっとその証明だ。
 いやしかし、随分とまた、地味な魔術だ。偉そうにドクターなんて冠を付けている連中は、もっと派手に偉そうに魔法を使っていた。だが、この速度への干渉は、そんな魔法よりも怖ろしい。もし、殺し合いに慣れていない超人ならば、とうに殺されている。彼の犠牲となった、数多くの魔術師のように。
 こうなれば、評価を改めるしかあるまい。彼は浪漫ではなく、実利を追求する男だ。非効率的なトンプソン・コンテンダーの使用も、おそらく必要性があるからだ。
 そんなパニッシャーの高い評価を覆すように、物陰に潜んでいた切嗣が、パニッシャーの横から無防備に現れた。横目で見れば、なんとも無機質な男だ。ただ目的や任務をこなす、血の通った機械。その顔には、不利を覆した喜びも無い。この鉄面皮を、表情が顔に出やすいスーパーヴィランたちは、見習うべきだ。
 パニッシャーの胸、髑髏の片目が弾け飛ぶ。銃弾が、左胸に直撃していた。
 切嗣に動きは無い。あの男は囮であり、本命は別の場所。あの高層ビルの屋上にいる何者かの狙撃だ。
 なるほど、自分は全く違うタイプの男を使っているが、切嗣が使っているのは、当人と似たタイプの人間か。そんな事を思いつつ、パニッシャーは背から屋上の隙間の闇に、落下してしまった。

 切嗣は警戒しつつ、パニッシャーが落ちた箇所を覗きこむ。予想通り、彼の姿は消えている。落下地点のゴミ捨て場には、落ちた跡と血痕が残っていた。
「狙撃は失敗した」
 トランシーバーにて、狙撃手に連絡を取る。
『申し訳ありません』
 帰って来るのは、切嗣に負けず劣らず、無感情な女性の声。久宇舞弥、切嗣が戦場で拾い上げた、機械たる彼をさらに機械たらしめる、道具にして補助機械だ。
「いや。これは僕のミスだ。彼は、全て読んでいた」
 切嗣は、あっさりと己の非を認める。もう少し、囮らしからぬ振る舞いをしておけばよかった。
 パニッシャーは、切嗣の姿を見た瞬間、自ら身を沈めていた。無防備な頭ではなく、おそらく最も厳重にアーマーで防護している、心臓の箇所で銃弾を受け止めるために。あの髑髏マーク自体、敵の目を引き、撃たせるための細工だろう。
 落下も、飛び降りたのではなく、自ら落ちた物。一度情勢を立て直すため、必殺の手段から逃れるためとはいえ、随分な無茶だ。もし、舞弥の使用していた銃弾の威力が、胸を貫く物だったら。もし、背から落ちて着地に失敗していたら。クッション役のゴミ捨て場に、縦になった鉄パイプや、危険な薬品がそのまま捨てられていたら。
 いったい、どれだけ自分の命を軽く見ていたら、こんな芸当が出来るのだろう。思わず、嫉妬してしまうぐらいに、機械的だ。
『周囲にらしき敵影はありません』
「ニューヨークは、彼の庭だ。こちらの、数十倍の土地勘がある」
 切嗣の身体が、突如押し倒された。トランシーバーが手元から落ち、自身の身体は屋上を転げまわる。
 強烈な拳を、必死で受け止める。指の骨に、亀裂が走った。
 隻眼の髑髏が、こちらを見下ろしている。切嗣を組み伏せたのは、パニッシャーだった。顔や身体の至るところから血を出しているが、全く意に介さず、こちらを殴りつけてくる。
 まさか、即座に戻ってくるとは。小休止も火力の補給も無しか。必死で身を捩ると、あっさり上下が入れ替わった。逆に殴りつけてみせれば、上手くいなされ、また攻守の交代。ゴロゴロと転がっている内に、こうも激しく攻守を入れ替えていては、舞弥も狙撃出来ない。気づくのに、時間はかからなかった。
 転がりつつの攻防は、すぐに屋上の限度を越え、切嗣とパニッシャーは団子状態で下へと落ちる。落ちたのは、道路側。交通量の激しい道、二人揃ってミンチになるところだったが、幸運にも彼らは、トラックの荷台の上に落ちた。
 幸運に感謝する事もなく、切嗣の肘がパニッシャーの鼻を折り、パニッシャーの頭突きが切嗣の額を激しく鳴らす。
 狭いトラックの荷台にて、第二ラウンドが始まっていた。

 千里眼の魔術にて、パニッシャーと衛宮切嗣の争いを見ていたフッド。彼の背筋に、冷たい物がはしる。元々、獣が相喰らいあうような戦いになるとは思っていた。だが、ここまで、熾烈な戦いになるとは。待機している部下たちは、先ほどの演説に当てられ、高揚したままだが、もし二人の殺し合いを目にすれば一目散に逃げ出すだろう。トラックの荷台から、路上へ。路上から、裏路地へ。裏路地から……底冷えするような戦いを振りまきつつの、激しい移動。一体何処で横入りすればいいのか。フッドの経験では、判断がつかなかった。下手に部下を差し向ければ、ただ生贄を捧げるだけだ。
 ボスに必要な素養の一つである、決断の早さ。フッドはこの点において、他の大物に大きく劣っていた。
 自らの力でのし上がってきた他のボスと違い、大悪魔より与えられている能力でボスの座に収まったフッドの脆さは、このようなタイミングで浮き彫りとなってしまう。例えばキングピンならば、スーパーの屋上に二人が転がり込んだ時点で、スーパーを吹き飛ばす火力での包囲殲滅を命じていただろう。
 そして最もマズいのは、二人の戦いを間近で見ていることで、大局的な視点を失ってしまったことにある。
 天窓が割れ、同時にワゴン車がフッドのアジトの壁を破壊し、突っ込んでくる。ガラスの破片と、車の追突、それぞれ三人ほどやられてしまった。
「あ、あああ……」
 魔術師キャラとして普段かぶっているフッドの仮面が剥がれ、情けない声が漏れている。天窓直結、二階の足場から見下ろしているのはパニッシャー。ワゴン車から出てきたのは切嗣。悪魔が二匹、フッド一味を睨みつけていた。
 何故バレた。いやそれより、いつ示し合わせていたのか。会話も交わさず、憎悪をぶつけ合うような殺し合いをしておいて。
「おい! 開かねえ! 開かねえよ!」
 恐怖に当てられ、一目散に逃げ出そうとした男が喚いている。電子ロック式のドアが、外部よりのハッキングで施錠されていた。
「こんなアジトに居られるか! 俺はここから逃げるぜ!」
 窓を壊し、逃げ出そうとした男の額に風穴が開いた。狙撃手が、外に居る。
 血と傷で塗れた顔を拭わぬまま、二人の処刑人は思うがままに動き始める。彼らが動く度に、人の命は散っていく。必死の生存本能による応戦。密室となったアジトは、生死飛び交う銃撃戦の舞台となった。
「何故、こんなことに」
 呆然とした様子で、呟くフッド。
 策を持ってして、獣を殺しあわせようとした結果、手負いの獣が懐で暴れ狂っている。
 自らの手を汚さぬ都合の良い策は、血まみれの手で引き千切られていた。

Amecomi Katatsuki PUNISHER VS Kiritsugu Emiya~Side P~ 1

 アメリカ最大の都市であり、人種の坩堝ことニューヨーク。この街には、人種という枠とは違う括りで、様々な人がいる。善人、悪人、中庸、どれも数が多い。そしてその結果、タガの外れた存在が生まれる。常識では考えられない、力を持つ者が。
 ニューヨークの裏社会を支配する悪党は、五指に余る。巨漢巨悪のキングピン。石頭ならぬ鋼鉄頭のハンマーヘッド。善悪の強烈なまでの使い分け、ミスター・ネガティブ。
 そんな悪党の中でも、異彩を放つ男が、フッドと呼ばれる男だ。近年突如出現し、瞬く間に勢力を築き上げた男。赤いクロークを目深に被る姿は、名前のとおりフッド、フードを被った者である。彼の武器は、魔術であった。弾道を曲げ、影から影を移動し、空中を気ままに散歩する。敵対勢力どころか、部下にすら何らかのトリックを使っていると思われていたが、彼の魔術は、本物であった。とある強大すぎる悪魔と契約した結果得た、怖ろしいまでの魔術だ。
 ニューヨークに確固たる地位を築き上げたフッドは、一棟丸々支配しているビルに、手下を集めていた。
「時に」
 フッドが口を開いた瞬間、緩慢だった空気が張り詰める。
「今、俺は、最大の危機を迎えている。闇が、俺に教えるんだ。あの狩人が、俺を狙っていると」
 フッドが手をかざした途端、壁に貼り付けられたNYの大地図に、炎で髑髏が描かれる。髑髏を見た途端、手下たちに動揺が走る。ニューヨークで悪党をやっている以上、髑髏は、忘れてはいけない象徴。触れてはいけない、禁忌の存在であった。
「更に、かの狩人に匹敵する恐怖が、俺を狙っている」
 フッドの手に、直接灯る炎。魔術により生み出された炎は、持ち主の肌にも肉にも無害であった。
 ざわめき半分、困惑半分。おそらく手下の多勢は、かの恐怖と同じ存在などいるのかと、疑問に思っている。それはそうだろう。チンピラでは分からない。魔術師殺しの恐怖は、魔術を使うものでないと、理解が出来ない。
「だが、恐怖が二つあるのであれば、答えは簡単だ」
 フッドの手の炎が、髑髏に焼かれる地図に投げつけられる。二つの炎は合体し、地図を一瞬で焼き尽くした。
「恐怖を、殺しあわせればいい。恐怖同士の対決は、必ずや死を招く。そして勝ち残り死にかけた恐怖を始末する。簡単な話の上に、あの災害を始末した俺達の名は、NYの新たなる恐怖として刻まれるだろう!」
 しばしの沈黙の後、誰かがフッドの名を呼ぶ。名は激しく増えていき、数秒後には大歓声と化していた。
 フッド! フッド! フッド! 色とりどりの彼らは、様々な銃火器を手にし、歓声を上げる。
 ついこの間まで、あのひと山いくらの連中と同じ場所に居たフッドは、歓声を心地よく聞く。既にフッドの思惑通り、彼らは殺し合いを始めていた。おそらくこの後に聞く歓声は、もっと熱く激しい物になるだろう。

 魔術やオカルトは嫌いだ。天使や悪魔なんて、もうコリゴリだ。だがそれでも、前に立ち塞がってきて、追いかけてくる以上、相対しないワケにはいかない。パニッシャー、フランク・キャッスルにとっての魔術とは、その程度の物だった。ミュータントだのミューテーツだのが持つ、特殊能力と何ら変わりない。
 だからこそ、最近ニューヨークで起こっている、連続殺人事件の被害者の共通点が魔術師と知った時は、多少憂鬱になった。
「どうやら彼らは、フッドに狙われていたようだね。逃亡や彼への反撃を企んでいたら、先手を打たれたと」
 複数のモニターとキーボードを同時にいじっている、小太りの男。鈍臭そうに見えるが、この電脳社会において、ネット上に構築された彼の情報網から逃げ出せる人間はおるまい。
 実戦ではなく裏方、情報収集や武器の調達を得意とする男、マイクロチップ。性格や性質の都合上、交友関係が希薄なパニッシャーにとって、珍しく縁が長く続いている相手である。
「フッドか。面倒な奴だな」
「だが、どうやら実行犯は別にいるらしい。被害者は全員、トンプソン・コンテンダーで射殺されている。弾のタイプは、30の06の、スプリングフィールド弾だね」
「なんだそりゃ」
 鉄面皮のパニッシャーにしては珍しい、呆れた表情。トンプソン・コンテンダーとは、どんな弾でも撃てる万能銃である。だが、一発ごとに装填が必要な単発銃と言うのは、武器として心もとない。しかも使っている弾は、威力重視のスプリングフィールド弾。おそらく、改造済みのモデルだ。コンテンダーの火力を嵩上げするという発想はわかるが、そ必要以上の威力を求めて、なんになるのか。どうせ、一発当てれば、人は死ぬ。超人相手なら、この程度では足りない。汎用性を捨ててまで、中途半端に威力を追求する意味が分からなかった。
 実利を求めるパニッシャーにとって、意味の分からぬ浪漫だ。
「さあ。あちらの世界の事情は分からないから。ただおかげで、犯人と目される男に、アタリをつけられた。魔術師殺し、衛宮切嗣。組織に属さない、フリーランスの魔術師で、傭兵の真似事もしているらしい」
 マイクロチップに渡された書類には、衛宮切嗣の簡単な経歴と行状。今まで彼がおこったと思われる仕事の内容が、簡潔に記されていた。
「見る限り、君と同じ容赦の無いタイプに見えるけどね。一人殺すのに、船を爆破。毒殺や狙撃もお手の物だ。それに、ヨレヨレのトレンチコートが、トレードマークだ」
「お前にもそう見えるんだな」
「ん?」
「いや。なんでもねえ。だが、魔術師殺しなんて御大層なあだ名があるんだ。奴の狙いも、絞りやすいだろうさ」
「ああ。任せろ。お膳立てをするのは、僕の仕事さ」
 自身の作業に没頭し始めたマイクロチップを背に、パニッシャーは己の仕事を始める。
 まずは、持ち込む武器の選定。この作業に浪漫の入る余地はない。目的に適しているのかどうかが、基準だ。
例え手元に伝説のエクスカリバーがあったとしても、あんなゴテゴテとしたデカい剣より、小回りが効く十把一絡げのナイフの方が何百倍もマシだ。
 こんな、ワケの分からねえ武器の選び方をする、魔術師なんてのと一緒にするんじゃねえ。パニッシャーの偽りなき本音であった。

 魔術は実利。思考は非情。戦略は悪辣。手段は外道。礼装は銃火器。何処をどう切り取っても、魔術師らしからぬ魔術師。衛宮切嗣とは、そんな魔術師であった。
 魔術師を狩る生き方を決め、遂行してきた彼に与えられた異名は、魔術師殺し。並行し、破滅的な戦場にて傭兵として生きる男でもある。
 だがそんな彼の、今日の戦場は大都会。そして殺し合っている相手は、只の人間だった。
 散弾に襲われ、切嗣は間近にあったソファーの裏に飛び込む。瞬時、転がり、壁の後ろに姿を隠す。容易く穴だらけになるソファー。アレを盾になんて思っていたら、死んでいた。
 携帯していたマシンピストルにて撃ち返す。マガジン装填数からバレルから、改造を重ねている自分用の銃を持ってしても、心もとない。なにせ相手は、ポンプ式ショットガンの二丁拳銃なんてバカをやらかしている、バケモノだ。
 本来両手で扱うショットガンを放り投げ、肩と肘の動きでリロードを実行。そのまま休みなく、こちらを狙ってくる。曲芸じみたリロードを、左右の腕で行うことにより、曲芸を通り越した実利を生み出している。速射性に優れたマシンピストルでも、あんな無茶苦茶な相手との撃ち合いは、条理の外の更に外にある。
 狭い部屋の中で飛び交う銃弾。その間には、絶息した魔術師の、切嗣をNYに呼び寄せた男の遺体があった。
 彼が依頼したのは、現在ニューヨークの裏社会を魔術で支配しようとしている男、フッドの暗殺。フリーランスの魔術師である切嗣は、今日このアパートの一室にて詳細を聞く予定であったが、訪れた彼を出迎えたのは死体であった。
 そして、何かする間もなく、ドアを蹴り放ち現れた、髑髏のマークのシャツを着たレザーコートの男。まず交わされたのは、言葉ではなく銃弾だった。
 どうやら、あの男は、自分のことを犯人だと思っているらしい。魔術師殺しが無実の魔術師を殺した。なんとも、単純な筋書きである。
 誤解だ。話を聞け。口にしようとする度に、かの男との間が縮まりそうなのが分かる。そして縮まった瞬間、訪れるのは絶命の二文字。アレに、聞く耳は無い。自分と同じように。
 残弾の切れたマシンピストルを投げ捨て、自らの身も窓から投げ出す。四階の高さであったが、転げ落ちたのは隣のビルの三階相当の屋上。あまりに相手の土俵に居る現状、距離を取らなければ、このまま飲み込まれる。
 髑髏の男は、切嗣が飛び出した窓に駆け寄ると、追って飛び出した。窓から撃つのではなく、あえて追撃する。多少の有利よりも、距離を離すこと、自分のペースが崩れることを恐れる。分かっている、彼は分かっている男だ。
 髑髏のシンボルを付けた、犯罪者を狩る自警団員、パニッシャー。所詮、自己満足の正義と悪党の焚付に長けた、ニューヨーク名物正義の味方と同程度の存在と思っていたが、それは間違いだった。
 アレは、摩耗しきった存在だ。あんなモノを、ありふれた自称正義の味方と同カテゴリーに入れてはいけない。殺害を、誇りある物ではなく、手段としか思っていない。
僅かな親近感と、妙な嫌悪感。湧き出そうな感情を抑え、切嗣は今現在、自分の周りにある武器と取れる手段の確認を始めた。

デッドプール邦訳奇譚~デッドプール:スーサイド・キングス~

デッドプール:スーサイド・キングス

デッドプール スーサイド キングス 表紙

あらすじ

我らの“冗舌な庸兵”のもとに、100万ドルの暗殺依頼が舞い込んだ。だが、高額な暗殺の裏には、大いなる陰謀が仕組まれていた。罪のない一般市民を殺害したという濡れ衣を着せられたデッドプールは、あろうことかパニッシャーに命を狙われることになる。しかし、彼の無実を信じる者もいた。その名はデアデビル…。暗黒街の仕置人パニッシャーを前にして、恐れを知らぬ男に勝ち目はあるのか!?(Amazon商品説明より抜粋)

F「マーク・ウィズ・ア・マウスもキルズ・マーベルユニバースも好評なようだし、こりゃあ次の邦訳も近いうちに出るな! ガハハ!と思っていたら半年以上かかったよ!な通販入れれば四冊目、一般販売では三冊目なデッドプール:スーサイド・キングス! あらすじや概要に関しては以前書いた発売直前企画を見てくださいませ……と言ったところで、気がついたんだが」

S「何に?」

F「前書いた、この発売直前企画で、自分の推したいところ、ほとんど書いちゃったなあと」

S「そりゃあなあ、書いてるヤツが同じな以上なあ」

F「やはり自分の敵は自分だったか……」

S「そんな少年漫画で出てくるような哲学的な問を持ちだされても」

F「シンプルにポイントをまとめると、以下のとおりだな」

スーサイド・キングスは、ニューヨークを舞台としたストリート系のストーリー

スパイダーマンやデアデビルやパニッシャーが登場

ぼくらのアイドル、レッキングクルーも登場!

同時収録の短編“Game$ of DEATH(死亡$遊戯)”はくそったれでイカした良短編

F「まあこんなところかね、あとヒロイン枠として出てくるのは、スーサイド・キングス以前のデッドプール誌でもヒロイン枠を務めていた、アウトローってのもあるけど」

S「どっかのバカルテットより、ヒロインの方が優先すべきポイントじゃなかろうか」

F「人気の高いスパイダーマンとの邦訳初タッグ。デッドプール&スパイダーマン、すっげえ五月蝿くて耳が痛くなる!なデアデビル。デッドプールとのセット以外でも邦訳出ていいのよ?なパニッシャー。人気ゲストキャラとの共闘や対決はやはりこの本のウリだな」

S「邦訳初タッグはこの本で、初共演は……キルズ・マーベルユニバース?」

F「あの本持ってきたら、この三人だけでなくアベンジャーズともファンタスティック・フォーともX-MENともパワーパックともハワード・ザ・ダックとも共演済みになるけどよ。アレは共演というより、なんだろうね? 対決……破壊……殺戮……殲滅……」

S「どんどん、テロリストの好感度が高そうな単語になってるぞ」

F「あと注目すべきは“Game$ of DEATH(死亡$遊戯)”。この作品、今まで出た邦訳デッドプールのエピソードの中でも、ある意味はじめてなんだわ」

S「公開殺人ショーがおこなわれている島に、デッドプールが乗り込む話だったな」

F「ああ。カンフー映画のシナリオっぽくて、シチュエーションからして大好きよ! はじめてポイントとしてはだな、この話、デッドプール以外のヒーローやヴィラン、いわゆるゲストキャラが出てこない」

S「なるほど」

F「つまりはじめての、デッドプール単独主演作というわけだな。今までのがゲストキャラ大勢登場な劇場版やTVスペシャルだとしたら、“Game$ of DEATH(死亡$遊戯)”は通常回。普段のデッドプールさんの一枠よ。そしてこの話には、日本語訳ならではの仕掛けがあるので、気になる人はデッドプールのセリフの一語一句に注目してみよう!」

S「仕掛けのヒントは?」

F「うーん……シュワルマ……じゃなかった、チミチャンガ!」

デッドプール邦訳奇譚~デッドプール/パニシャー・キルズ・マーベルユニバース ~

デッドプール/パニシャー・キルズ・マーベルユニバース

デッドプール:キルズ・ザ・マーベルユニバース

あらすじ

無数の存在する多次元世界。その一つ一つに固有の物語が存在する。数ある世界の中には、無敵のマーベルヒーローが無残な最期を迎えた世界も少なくない。そして、ここにもそんな世界が二つ……。
一つは、デッドプールが己が存在の真の意味を見出した世界……。
そしてもう一つは、パニシャーがヒーロー達への復讐に駆られた世界……。
デッドプールとパニシャー、二人の怒りの前に、マーベルユニバースは崩壊の時を迎える……。マーベルヒーローは皆殺しだ! コミックスの常識を遙かに超えた内容で大反響を呼び起こした二つの問題作が奇跡のカップリング!(Amazon掲載の商品説明より抜粋)

F「デッドプール邦訳紹介二つ目は、デッドプールとパニッシャー、もといパニシャーのキルズ・マーベルユニバースだ!」

S「なんつーか、マーク・ウィズ・ア・マウスが直球だったら、キルズは変化球だよな。うねりにうねって、バッター殺す的な。テニスの王子様の、必ず殺す系の魔球」

F「得点でなく、選手の命を奪うアレな! デッドプールのキルズのストーリーは、“ヴィランに頭を弄くられた結果、完全に目覚めてしまったデッドプールが、ヒーローもヴィランもMINAGOROSHI!”以外の何物でもないもんな。普段ヒーロー側にある主人公補正や出版社の都合が奪われて、殺戮側に全部持っていかれているんだから、本当にタチが悪い」

S「パニシャーも“ヒーローとヴィランの戦いに巻き込まれて家族が死んで、結果全員MINAGOROSHI”だもんな……テーマの時点で、でっけえハードルがあるから、合う合わないが事前にわかるのはありがたい」

F「タイトルも表紙も、一切オブラート包んでないもんなあ。君の好きな人気ヒーローが沢山出てくるけど、みんな死ぬからね! アンケート取ったわけじゃないけど、10人中10人が受け入れられるテーマでないのはわかる。ただ、受け入れられるのであれば、ハイになって楽しめるぞ! デッドプールじゃないけど、パニシャーのキルズは、かのヒットマンのライターでもあり犬溶接マンやセクション・エイトの生みの親であるガース・エニスが担当。“ヒーロー仲間の弱点を調べ尽くしているバットマン”と並ぶ、“本気出せばヒーローを皆殺しにできるパニシャー”として、日本で伝説化していたからな! 結果的に両方共邦訳されて、日本でも直に読めるようになったんだけど」

S「吹っ切れた常人、精神的超人マジ怖い」

F「かたやデッドプールの方は、ある程度物語の枠に収まっているパニシャーに比べ、無法地帯かつ楽屋オチ的な空気があるんだけど……結果的に今、この作品は完全体になろうとしているからな」

S「ひょっとして、続刊となるデッドプール・キラストレイテッド/デッドプール・キルズ・デッドプールが出るのに関係ある?」

F「OH! YES! キルズ・マーベルユニバースで地獄を創りだした男の行き着く先が、シャーロック・ホームズやネモ船長とガチで殺り合うキラストレイテッド。マーベルユニバースが起承転結の起承で、キラストレイテッドが転結ぐらいには思ってるからね、俺。ある意味、二つで完結」

S「それだと、キルズ・デッドプールの立場が無いぞ?」

F「キルズ・デッドプールもしっかり繋がってはいるんだけど、立ち位置的にボーナストラックというか、ボーナスステージというか……うん。やっぱり、三作で一纏めだな。ああそうそう、キルズ・デッドプールにはレディデッドプールやヘッドプールやデッドプール少佐のような、マーク・ウィズ・ア・マウスで出てきたデッドプールたちもちゃんと出てくるからな!」

S「続刊発売を機に、セットで買ってみるのも悪くないってか」

F「だな。このキルズ・マーベルユニバースから一年近く、デッドプールの邦訳は休眠期に入るわけだが……もし、マーク・ウィズ・ア・マウスが出てなくて、デッドプール/パニシャー・キルズ・マーベルユニバースだけ出ていたら、このデッドプール史でも群を抜いてイカれポンチなデッドプールがスタンダードになっていて、大変だっただろうな……と」

S「あー。確かに、今のデッドプールのイメージ、だいぶ変わっていたかもしれないな」

F「アクセル全開な作品を一発目から出して惹きつける!というのもアリだとは思うが、キルズは劇薬すぎてなあ。予測としては、デッドプールが10冊ぐらい訳されてイメージと閉塞感が出来た頃に出る弾だと思ってたし……でもまあ、ある意味正統派なマーク・ウィズ・ア・マウスとのセットで、休眠期をしっかり支えてくれることとなったんだから、結果オーライよ」

日々雑談~1955~

 おおう、気づけばこんな時間……というわけで、当サークル、明日は夏コミ参加です。改めまして、スペースナンバーとお品書きは以下の通りとなっております。

お品書き

 新刊はコピー本のAmecomi Katatsuki PUNISHER VS Kiritsugu EmiyaのSide PとSide Eです。こちら2バージョンとなっており、大筋の展開と本文一部分は同じですが、時間軸や各々の装備に相棒、そしてエンディングが違います。例えば、Side Pにおけるパニッシャーの相棒はマイクロチップですが、Side Eでは違う人間が相棒になっております。その結果、パニッシャーの装備もかなり様変わりすることに。切嗣サイドも同様、こっちの場合は、設定に9年差がある時間軸がポイントでしょうか。まあ、ポケモンの赤と緑のような物ですので、どちらか一冊あればOKです。二冊買っていただければ、当方としては感謝感激雨あられですが。
 値段は共に100円のワンコインです。そうですね、Pは作風もパニッシャー寄り、Eはすこしばかりの希望あるエンドです。なお、どっちもそれなりに人が死にます。
 あと、デッドプール&ランサーの無料ポストカードも配布しますので、こちらも手にとっていただければ。
 それでは、今日はこの辺で失礼します。明日参加される方は、是非とも会場でお会いできれば幸いです! それでは!