昭和ライダーと平成ライダー、その差異

 アマゾンも見たということで、昭和ライダーの違いと平成ライダーの違いを考えてみようかと。なお、あくまで違いを考えるだけで、優劣を決めるとかではありません。

 まずはこの映像を参考に。

 携帯などで見られない方のためにざっと説明をすると、遊園地を舞台にした元祖ダブルライダーVSヒルカメレオンの決戦から決着までの映像。遊園地の遊具はいくつか動いており、ブランコから戦闘員を叩き落としたり、ジェットコースターの上での殺陣や、コースのレールにぶら下がって暴走コースターを避けるシーンがある。
 昔こち亀で『動くジェットコースターの上で撮影をして、しっちゃかめっちゃかになる特撮スタントマン』というネタがあった。俺もネタを見た当時は笑ったが、現実の特撮スタッフは普通にそれをこなしていた。ギャグを容易く超えている。
 昭和ライダーの頃は、日本全国各地でロケーションをして、様々な状況下で撮影をおこなっていた。海があれば十中八九水に落ちるし、山にロープウェイがあればその上で、砂丘で撮るなら砂に当然のように潜り。スタッフは美味しいシチュエーションを探り、命を賭けて撮影していた。足りない技術を気迫でカバーする、という言葉の見本である。ただその裏で、何件か痛ましい事故が起こり、犠牲者も出てしまっているの点は、目をそらしてはいけない事実である。
 今の平成ライダーのスタッフは別の物と戦っている。それは規制である。火薬の量も制限され、危険な撮影もNGな昨今、昭和と同じような体当たりの撮影は絶対に出来ない。「主演俳優に、生身でジェットコースターを避けるアクションさせましょうよ、レールの下にぶら下がって避けるって感じで!」多分今の世の中でこんな事言い出すスタッフが居たら、降板騒動になる。ちなみに昭和アマゾンでは主演俳優がスタントマン無しでジェットコースター避けをやってた。今が慎重というより、昔がおおらかすぎる。
 しかし規制があるから平成がダメかといわれると、決してそうではない。技術レベルは上がっているし、CGのような新技術も使えるようになった。少なくともCGが無ければ、街中での怪人爆発シーンなんか絶対出来ないだろう。例がウルトラマンになってしまうが、当時は人形でやるしかなかった空中戦を板野サーカス全開で撮れるようになったのは、分かりやすい技術の進歩である。ミサイル超獣ベロクロンは、最新特撮技術を取り入れることで、ミサイルという武器の本領をようやく発揮できるようになった。
 一長一短、まずはこの言葉を認めないと、何も紐解くことは出来ない。

 昭和の利点は、『悪の組織が居て、正義の仮面ライダーが居る』これだけ分っていれば、何処から見ても大丈夫。このとっつきやすさは魅力的だ。仮面ライダーは基本一人で悪の組織も単発的な作戦を好む。
 逆に平成は長期的な展開を好む。なので、パッといきなり見せられての把握はし辛い。あとは仮面ライダーが複数居る事でライダーの称号が軽くなっている事か。
 デカいヒーローはウルトラマン、一人は仮面ライダー、大勢居るのはゴレンジャー。これぐらいの認識で平成ライダーを見たら混乱は必至だ。ライダーは大勢居るし、カラフルで。色々と革命的な事に挑戦してきた平成ライダーは、その分作品に一貫性が無く、なんだか分からなくなる。もはや現状、ライダーという定義もあやふやである。仮面が無くてもベルトが無くてもバイクが無くても、本人が名乗っていれば仮面ライダーだ。
 平成ライダーの長期展開に基づくドラマ。とっつきが悪いという弱点もあるが、反面、長かったからこそ生まれるカタルシスもある。

 ブレイド序盤の中で最も燃えた戦いと呼ばれる一戦。この一戦が評価されている理由は、序盤のギャレンを中心としたドラマの展開がこの一戦で一気に清算されたからだ。長くしつこく橘さんが翻弄される姿を見せつけられ、決戦という分かりやすいファクターで消化される。平成ライダーの長所を生かした、わかりやすい成功例である。ただ、長い展開の途中のテコ入れで息切れしたり、清算できるような場が用意できなかったりと、失敗例も多々あるのだが。
 平成ライダーのドラマ展開を麻雀で例えるならば、役満を狙いすぎての流局多し。ただし、役満は当たれば卓のすべてを吹き飛ばすくらいに激しい。そして平成ライダーという打ち手は、役満を現実に何度か為し得ている。

 平成と昭和、仮面ライダーという同じ題材を扱っていながらも、その差異は大きい。けれども、両方とも短所もあるし長所もある。そして、それは対立すべき要点ではない。それぞれ違うのだから、優劣を比べられるわけがない。視聴率を判別材料としたら1号&2号には誰も勝てないし、今の時代の認知度で勝負したら現行の平成は過去の昭和に勝つ。なんて無為な争いか。
 どちらも子供が胸熱くして見るべき物、決して自称大人のファンの論争の道具ではないのだ。