ワラキアの夜は続く

鬼太郎が大好きで、かつ妖怪をネタにSS書いている今日この頃。妖怪についてつらつら書いてみます。
今日のネタは、吸血鬼ヴラド=ツェペシュだ!
 あー微妙に真面目に書いていますんで、ネタ目当てだと面白くないかと。あと参考資料無しで自分の知識に頼っている部分が多いので、真面目に見るには物足りないかも。
……どの層に向けて書いているんだろうか、コレ。

 吸血鬼程、世界に亜種や同種のいる妖怪もいないと思う。鬼と言う言葉は、「鬼」という一種族だけでなく、災いをもたらす不可思議なアヤカシをひとくくりにしての言葉でもありまして。吸血鬼=血を吸うアヤカシと訳せます。
 人の命のガソリンである生き血を啜る、人の生命を奪う姿はインパクトが強く、シンクロニシティなんて言葉を使わずとも、世界どこにでも吸血の習性を持つと呼ばれる妖怪は存在します。キョンシー(中国)やグール(アラビア)なんか代表例ですね。吸血鬼とは、人間世界で言うところの、黒人・白人のどちらかに位置するぐらいに体現的な種族と呼べましょう。

 現在、吸血鬼と言えばドラキュラに代表されるイメージが先行しています。串刺し公ヴラド=ツェペシュですね。
 人を串刺し刑に処したところから、残虐なイメージが付き纏っているのですが、ここに歴史の綾があります。今の感覚では、串刺しは残酷極まりないものですが、この時代の刑罰としては普通のものなのです。ヴラド公が串刺し公と呼ばれるのは、下層階級専用だったこの刑罰を、反逆した王族・貴族などの上流階級にも好んで使用した事からつけられたあだ名です。
 なぜ彼がわざわざこんな刑罰を好んだのか、推論ですが串刺し刑が最も見せしめとして適した処刑だったからではないでしょうか。
 当時、ワラキアやトランシルバニアにルーマニアと言った国々は大国であるオスマントルコ帝国の恐怖にさらされていました。十字軍も真正面から撃破した全盛期のオスマン帝国です。ヴラドは、己の軍略と勇猛さでよく戦い抜きました。しかし、ワラキアはオスマン帝国に比べれば小国であり、周りの国々も虎視眈々と領土を狙っています。そんな時に、内部分裂なんか起こせば一気に領土を持っていかれてしまいます。内部分裂を収める一つの手段。そう、粛清です。
 粛清の手段としては、苛烈で同じような事を企んでいた人間が怯えすくむ物が、効率的です。二度と、野心を抱かないぐらいの。串刺しはまさにうってつけ、今までは対岸の火事だった刑罰が自分の身に起こりえると知れば、余程の確信が無い限り反乱はおこせないでしょう。
 そして、敵の捕虜や死者の死骸を串刺しにして戦場に並べておく事で、敵の士気の大幅な減衰が見込めます。彼らと戦って捕虜になればああなる。こうなりゃヤケだの、死に物狂いを引き起こす可能性も有りますが、オスマン帝国は大軍で背水の陣を敷くほどの余裕の無さは無い。勝って当然、負ければああなる。最悪の地形効果です。
 結論としては、見せることを考えて、ヴラド公は串刺しを好んだのではないかと。ハッキリ言って、ワラキアは勝つためには手段なんか選んでられない状況です。例えば、日本で言うところの今川VS織田など比較にもならないくらいの戦力差があり、桶狭間クラスの逆転を数回しなければ持ちこたえられない状況下。相手を滅ぼしての勝利なんて選択肢、ハナっからありません。
 ヴラド公の手段を選ばない策の一つとして、毒計があります。ワラキア国の一部を占領したオスマン軍が、水を確保し食料を確保すると、なんと猛毒がしこまれていたとか。水源や土にまで。相手の陣地に毒を投げ込む作戦は良くある話ですが、自分の陣地に毒を仕込んで退却するなど想定外で、オスマン軍は敗北を喫しせっかく奪った土地もすぐに奪い返されることとなったのです。
 何故想定外の奇策だったか。それは、奪い返した後の事を全く考えていない作戦だったからです。奪い返した領土は、毒に侵され、とても処理しない限り人がまともに住める環境ではないでしょう。試合に勝って、収支はマイナスという勝つことしか考えていない作戦を名作戦とは呼べないでしょう。しかし、こんな奇策を投入してでの必勝が、ワラキアが国として生き残る為必要だったのです。
 しかし、この奇策で自分の悪名が響くぐらいは予想していたと思いますが、まさか後の世で世界の吸血鬼の親玉にされるとは、流石にヴラド公でも予想できなかったでしょう。

 とりあえず、今日はここまで。反響があれば、なにか次も考えます。
 まーまず、ないだろーなw そいでは、さいなら、さいなら。