劇場版 魔法少女まどかマギカ[新編]叛逆の物語 感想

 魔法少女まどかマギカ[新編]叛逆の物語の感想です。五人の魔法少女にスポットをあて、さっくりと感想をば。ネタバレ防止の為、此処から先は隠しておきます。もしよろしければ、別口に書いたこちらの記事もどうぞ。

暁美ほむらは超人と成り得るのか

 美樹さやかはもうさやかちゃんじゃねえ、さやかさんだ!
 ジリジリと己の身を焦がした人魚姫の嫉妬も、円環の理を経由した結果、ある種の達観に。あの世界で社会的地位やポジションが一番変なのは杏子だったけど、内面的に変なのはさやかさんでした。変というより、内面が成長しすぎてね?という違和感。
 さやかさん能力内面ともにえらく成長しているし、映画終了後の世界でほむらの作った今を打ち砕くダークヒロインになる可能性も示唆されていますが、正直な所、まだ少し時間がかかるんじゃないかなと。さやかさん、人として生きる今を噛み締めてましたけど、敵である悪魔は、作られていた世界をよしとせず、己の主観で全て踏み躙った怪物なので、同じダーク路線で抗うのは難しいんじゃないかと。 さやかさんのこういう甘さは、さやかちゃんそのものなのですが、さやかさんとさやかちゃんがあっての美樹さやかを皆は愛しているので、このままでいいんだと思います。怪物を倒すのは、人なのです。

 杏子ちゃん、あまり出番が無かったというより、仲間になったアウトローポジションとしての変化を書かれることに出番を費やされた上に、舞台の中心に立つことがあまりなかったので、印象があまりないんですよね。異変の象徴となり証明でもある、キーキャラクターなのですが。
 でも、ほむらの突拍子もない発言を半信半疑でも受け入れ、さやかとのありえない出会いを涙を隠し喜ぶ姿は……実にグッと来る、善い人としての彼女なんだなと。杏子ちゃんマジ聖女。頭、撫でたいですよね。こういう良い娘の。

 マミさん、超強い。本気になったMr.カラテと並んで、本気になった巴マミとして隠しキャラになっても良いレベル。
 元々、素養はトップクラスで吹っ切れば最強とも言われていましたが、まさかここまでとは。マミさんの優しさを逆手に取ったほむらの戦略を、あえて利用しての完勝。キラ・ヤマトですら、同じように甘さを付かれて負けたというのに。公式チートを超えたマミさん、マジチート。バットマンを戦略で出し抜くスーパーマンか。ただ、ここまでマミさんが力を発揮できる環境(仲間や守るべき者の存在、魔法少女の理想的なテンプレによる活動)を作るのはかなり難しいので、そういう意味でも今回のマミさんは隠しキャラですね。
 そしてそんなに強いのに、べべを連れていることによるハラハラ・ドキドキ感。マミさん初登場から数分は「あ。これ死ぬわ」と思ってたよ! チーズは私と言い出した時は恐るべき誘い受けだと戦慄したよ! ぶっちゃけこの世界の異常性が露わになる切っ掛けは、何者かに食い殺されたマミさんの死体が自室で見つかるところなんじゃねえかと疑ってたよ! 昨日の敵が味方に、再編物やパラレル物の定番だけど、昨日頭からバリバリ喰らってくれた敵が味方にってどう見ても怖いよ!  あと、新房総監督の「魔法少女のファンタジックすぎる部分はだいたいマミさん関与じゃないですかね。断言はしないけど!」ってスタンスは、そこまで言うなら踏み込んでやれよ!と思わなくもない。
 立派な先輩でありながらも、先輩としては致命的な弱さも持つ人。応援したくなる人ですよね、マミさん。

 まどかさんは、マジ聖女というか実際もう聖女なので。そして磔刑に処された聖女が引き戻されるだなんて、誰が想像したか。
 TV版での決意と、劇場版での本音。どちらに優劣があるわけでもない、人間の思考。そりゃ、本人が納得した上、世界を救うために生贄にされたとしても、死ぬのは嫌だなあ、みんなとお別れだなあという気持ちがあるのは当然。全く憂いなく生贄に臨めるのは、全てを識る神の子か、ミノタウロスの皿の如き、生まれつき生贄に対して認識の違う者ぐらいじゃないかと。
 優劣のない思考に、他者が順位をつけてしまったのが、最終的な問題点の発端かと。でもそもそも、一人の少女の顧みられぬ犠牲により廻る世界が健全かと言われると……。難しい。踏みにじりながらも思っている。こんな矛盾も絡んできて、更に難しい。ただ、円環の理であることを忘れ、一人の少女として生きるまどかの姿には、実に眩しきハツラツさが。アレは、人の心を狂わせてもおかしくない少女らしさだよ。

 ほむらさんの重要な部分に関しては、別口で語ったので、少し視点を変えまして。ハウス・オブ・H! もしくはA!
 ほむらの弱点である、自身の優位を疑わないこと。何度も周回している以上、優位であることは間違いなく、経験に裏打ちされた自信でもあるので間違っていないのですが……周回し過ぎたせいで、ほむらさん雑な段階に達している面もあるんですよね。
 周回性のゲームをプレイした時、前回のプレイで経験しなかったことや新たなルートには心躍っても、前と変わらない箇所に関しては作業感ありありでプレイ。こんな経験、みなさんもあるんじゃないかと思います。この作業感たる場所は周回するごとに増えていきます。ただこなすだけの場所、舐めたプレイも可能な分かりきった部分。自然と生まれてしまう、これらの部分への雑さこそが、ほむらさんの弱点です。新劇の世界は、前作の経験や情報が完全に引き継がれない“2”の世界に近かったのも問題かと思いますが。見直された敵の強さについて行けない、古参プレイヤーといいますか。
 この雑さの延長線上に、キュゥべえへの情報漏洩もある気がします。ノーマルエンドを迎えてしまいモチベーションも消えてしまった少女の陰鬱たる倦怠感。これに気付いて漬け込んでしまったしまったのが、インキュベーターの不幸の始まり……。ああ、インキュベーターの自発的な逆転の可能性は、0だと思います。おそらく今でも、愛に起因する問題の原因に気づいていないので。物事の原因を理解しようとせず利用だけを企んでいた時点で、この結末はもっと最初、彼らが太陽系に興味を持っていた時から決まっていたのかもしれません。
 例えこの後にどうなったとしても。悪魔としての覚悟を決めた時点で、もはやほむらさん、負けは無いのよね。既に勝利条件を達した余裕がありありと。
 でもあの、ラストダンス。OPで一人だけ踊っていなかった少女の踊りは、ひたすらに哀しく切なかったです。なんて哀しい、美しさ。