読解 ワールド・ウォー・ハルク~激闘 番外編~

 本戦のあらすじ
 アイアンマンやFF4を次々と叩きのめすハルク。一方その裏には、本編で語られない物語があった。

ふじい(以下F)「アメコミの特徴として、ヒーローがひとつの世界に纏まっているというのがある。もちろんウォッチメンのような例外も多々いるけどな」

サイレン(以下S)「例として分かりやすいのは、スーパーロボット大戦か? そのままの例としてなら、ヒーロークロスラインがあるが」

F「ヒーロークロスラインの構想自体はアメコミの世界観だろうな。Aというヒーローが居たとして、彼の戦いの余波がBにも影響するわけだ。そうだな、原作世界をスタイリッシュに改変したアルティメット世界を一例にしてみよう」

 息子と娘を失ったマグニートーは、地球の地軸を揺らし、世界規模の大災害を巻き起こす。X‐MENはマグニートーの最終決戦に臨む。
 一方、マグニートーが起こした洪水により水没しかけたニューヨーク。スパイダーマンの前に現れる、かつて倒した強敵たち。災害に乗じて刑務所から脱出した彼らは結託、スパイダーマンへの復讐を果たさんとする。この状況では、他のヒーローの援軍は期待できない。スパイダーマンの命を賭した戦いが始まろうとしていた。

S「なるほど。X‐MENがメインのラインとしたら、メインが起こした影響がサブラインのスパイダーマンにも関わってくるわけだ」

F「この事件は全てがメインラインだってくらいに、派手な大事件だったからなあ。ぶっちゃけ、テコ入れ。X‐MENは壊滅して、デアデビルやソーも死亡。スパイダーマンも行方不明と、もうね。ただこれ以降、正史とアルティメット世界の差が出て、人気的に不振だったアルティメット世界が持ち直したという」

S「ジャンプも真っ青の開き直りっぷりだな」

F「そして本題。ワールド・ウォー・ハルクの事件の裏でも、様々な戦いが起こっていた。X‐MEN誌で展開されたハルク対X‐MEN。ゴーストライダー誌で展開されたハルク対ゴーストライダー。今日解説するのは、これらサブストーリーにおけるワールド・ウォー・ハルクだ!」

破壊に立ち向かう死霊

F「さあ、解説だ! と、その前に。今回主にネタにするX-MEN以外の話も、少しだけ解説」

アントマンⅢ編
 「やあ、僕は縮小化能力を持つ、三代目アントマン! 趣味は覗きです!」
 ヒーローとしてアレすぎる男、アントマンⅢ。そんな俺が、ハルクを倒せばめっちゃ凄くね? ハルクとアイアンマンの対決中、彼はハルクの体内に突入。内部からのハルク打破を狙う。

イニシアチブ編
 キャンプモハメドに籍を置く若手ヒーロー達はNYでの避難誘導に尽力していた。勝つと信じていた先輩ヒーローの敗北、そしてハルク&ウォーバウンドと遭遇してしまう。彼らもヒーローとして戦うものの当然敗北。サカール軍に囚われてしまった。教官コンストリクターやモハメドのはみ出し者のトラウマ、囚われたヒーローを救う為の即席チームが編成された。

ヘラクレス編
 もう一人のインクレディブル、ヘラクレス。怒り狂ったハルクとも互角であろう神が、遂にハルクの前に現れる。だが、ヘラクレスにハルクと戦うつもりは無かった。友であり恩義のあるハルクを、説得する為にここに来たのだ。攻撃を重ねるハルク、しかしヘラクレスは手を出さずに耐え続ける。限界は、近かった。

ゴーストライダー編
 NYから逃げ出す人間はいても、入ろうとする人間はいない。全て下り車線となった道路、渋滞する車の間をすり抜け、軍の封鎖をも突破して駆け抜けるは黙示録の騎士。ハルクを止める為にNYに現れたゴーストライダー。イルミナティの生き残りが密かに期待する中、ゴーストライダーはハルクと戦う。NYの街、ビル、地下鉄を使った縦横無尽な戦い。そしてついに、魂を持つ者全てを裁くゴーストライダーの眼、贖罪の眼の炎がハルクを直視した。

S「色々な動きがあるもんだ」

F「他にもサブストーリーはあるしな。救助活動のみに専念していたデアデビル。サカール軍から脱走したサカール原産の怪物と戦う、パニッシャー。毎回思うけど、パニッシャーはメインストーリーに絡むと、あんま面白くねえんだよな。対異星人より対犯罪者向けなんだろうなあ、キャラ的に」

S「バットマンとのクロスは面白かったよな。似た経歴と能力を持つ、両者の違いが浮き彫りになって。ジョーカーも一応は只の犯罪者だしな……。あの、ところで、ゴーストライダー編はもうちょっと詳しく紹介するんじゃなかったっけか?」

F「……X-MENの尺が想像以上に長くなってなあ。というわけで、X-MEN編どうぞ」

ハルクVSX-MEN

 イルミナティのメンバーであるプロフェッサーXは何も知らなかった。知っているのは、ハルクが追放されたという事実のみ。だから彼は、これから起こる驚異への対策を何も打っていなかった。
 恵まれし子らの学園を包囲していたセンチネルが全て飛び立っていった。困惑する留守番役のヤングX-MENと、彼らを指導する為学園に残っていたビースト。直後にTVに流れた、満身創痍のブラックボルトを掴み上げるハルクの映像こそが、その答えだった。
 困惑するビーストをさらに混乱させる衝撃。学園を揺るがす衝撃の正体を確認したビーストは、信じられぬと目を見開く。学園に現れたのは、一人学園にやって来たハルクだった。イルミナティのメンバーである、プロフェッサーXに会う為に。ビーストがまずしたことは、避難警報の発令だった。

S「あれ? 恵まれし子らの学園ってNYじゃないよな?」

F「たぶんこれ、24時間の猶予期間中の物語なんだと思う。まあ、ハルクが本気出したら、数回のジャンプで米国横断するけど……。時系列に関しては結構適当だぜ。本編ではどう考えても間がなかった、アベンジャーズ戦→FF4戦の間にゴーストライダー戦やイニチアチブ救出作戦も行われていたみたいだし」

S「そこいらへんには深く突っ込まないのが大人だなあ。それにしても、ビーストって苦労性だ。CV千葉繁なせいで、日本だと結構コミカルなイメージあるけど」

F「ウルヴァリン程じゃないけど、顔広いぜ。X-MENの古豪にして元アベンジャーズでもある。アベンジャーズとX-MENの合同会議に参加して、会議室に椅子が用意されているのはウルヴァリンとビーストのみ! サイクロップス? ちょっとそこらに立ってなさい」

S「いや、そこはパイプ椅子でもいいから用意してやれよ、社長」

 やって来たハルクはプロフェッサーXに会いたい旨を伝えるが、ビーストはまず自分が聞くと言い、ハルクを通さない。邪魔なビーストを殴ったハルクに襲いかかる、X-MEN候補生の面々。彼らはそれぞれの能力を全開にしてハルクに挑むものの、全ての活路を塞がれた挙句、ビーストを残して全滅してしまう。ビーストに止めをさそうとするハルクの背中を、鉄の爪が引き裂く。サイクロップス、ウルヴァリン、コロッサスらX-MEN主要メンバーの帰還。そして、生徒の避難を終えたプロフェッサーXも現れた。

S「候補生の立ち位置を教えてください」

F「まんま候補生です。若いミュータントの面々ながらも、怪力と硬い体と緩やかな再生能力を持つロックスライドや女ウルヴァリンことX―23も当時は在籍中。良くも悪くも、若い方々です。他所で名を馳せて、自信満々ですし」

例:ロックスライド「おもしれえ! 一度ハルクとは戦ってみたかったんだ!」

S「若い云々通り越して、死亡フラグ立ててるじゃねえか」

F「別に俺は戦いたくねーよ、質問に来たんだよというハルクに両手両足もぎ取られた挙句に踏み潰されて戦闘不能。ふぅ、再生能力がなかったら、あやうく大惨事になるところだったぜ」

S「全滅の時点で大惨事だと思うんだけどなあ……マブカプ3出演のX―23さんは?」

F「ウルヴァリンに比べりゃ短い爪だなあw え?何?君サイドキック?ってハルクが馬鹿にしてたら、23が足の爪で顔面を一閃。たぶん、この後の総攻撃が一番ヤングXメンが勝てそうになった瞬間だと思う。まあ、駄目だったんですけどね。23さんも投げ飛ばされてリタイア。ただ、彼らが時間稼ぎをしてくれなかったら、主要メンバーは間に合わなかったと思う。決して無駄死ではない! まあ、誰も死んではいないけどな!」

 全てを明らかにするため、ハルクの記憶をテレパシーで読み取るプロフェッサーX。明らかになるハルク追放の真実とイルミナティの罪。自分の知らぬところで行われたイルミナティの大罪に、プロフェッサーXは絶望する。
 ハルクは確信していた。議決にプロフェッサーXは参加していなかったが、参加していた場合、きっと賛成票を投じていたと。無言の教授は、それを暗に肯定していた。追放された意味を、自分のやり方で教授に尋ねようとするハルク。プロフェッサーXは抵抗せず、ハルクの荒い問いかけを受けようとする。
 だがしかし、ハルクとプロフェッサーXの間に、サイクロップス達が立ちはだかった。その問いかけをさせる訳にはいかないと。
 「駄目だ!」と叫ぶプロフェッサーXの声。誰にも届かない声を背に、X-MEN対ハルクの戦いは始まってしまった。

最強対集団

S「教授は……賛成していただろうなあ。忙しくて会議に参加できなかっただけだし」

F「ネイモアは一応反対派にカテゴライズしていいと思う。会議への不参加表明という、消極的なやり方だけど」

S「悔恨の教授。でもさ、ひょっとして教授って唯一ハルクを簡単に止められたであろうイルミナティなんじゃね? 流石のハルクも、テレパスへの耐性はないだろ」

F「記憶を覗いた上で、自身をチャンネルにして居合わせた人間全てにハルクの記憶を垣間見させている辺り……どうにかなったであろう公算は高いな。教授だけでなく、ワールド・ウォー・ハルクに出てきたキャラには、後悔や友情でハルクに本気で立ち向かえなかった連中も多いから。教授しかり、ヘラクレスしかり、未だにグズっているセントリーしかり」

 引き続き戦うビースト。全力でアイビームを放射するサイクロップス。真正面から挑むウルヴァリン。鋼鉄の身体と力で対抗するコロッサス。彼らは自身の能力を理解し、十分に力を発揮した。しかし、相手はそれでも足りぬ強敵だった。
 遂に動けなくなるビースト。全力でも足りず、そのまま顔面を鷲掴みにされるサイクロップス。何度も立ち上がり、何度も吹き飛ばされ、不死身の再生能力でさえ追いつかなくなったウルヴァリン。手四つの力比べで負け、両腕を複雑骨折したコロッサス。次々と減っていくX-MEN、全滅は時間の問題だった。異変を知り駆けつけたある男も、名乗る間もなくハルクに一蹴されてしまう。X-MEN、全滅。
「これで終わりか?」
「まだ終わってないぜ。俺達は大家族だからな」
 逃げた生徒達からの緊急テレパスを聞き駆けつけたのは、ナイトクローラー率いるX-MENの別働隊と、外部組織であるX-Factor探偵社の面々だった。第二戦、開始――。

第二戦、開幕!

F「X-Factorの名前は色々複雑なんだが……別働隊や外部組織に与えられる名前と思えばいい。ちなみに現行のX-Factor探偵社は自身の無限複製が可能なマルチプルマンや、受けたエネルギーを体内に蓄積して、怪力への変換を可能とするストロングガイと、一癖あるものの強力なミュータントが所属している」

S「ところで、今回参戦したミュータントの内訳は?」

F「……俺自身が把握しきれていないのと、いかんせん数が多すぎてなあ。実際ついこの間まで、ロングショットとウォーパスを見間違えていたし。イラストから推測するか、実際に購入して確かめていただければと。能力と名前を1から書いていたら、それだけで一つの記事が潰れてしまう」

S「だいたい、20人ぐらいか。冷静に考えて見れば、それだけのミュータント投入して、未だ劣勢って……」

「彼は誰?」
「ハルクだ」
「そう、ハルクって言うのね。ところであなた、彼を止める作戦を持ってる? このままだと、みんな殺されてしまうわ」
 次々と倒れていく新規参戦メンバー。ナイトクローラーはハルクを倒すため、起死回生の作戦を実行する。
 ナイトクローラーはハルクにしがみつくと、少し離れたところへとテレポート。自分たちが乗ってきた、戦闘機ブラックバードをハルクめがけ特攻させた。作戦は成功し、ナイトクローラーもブラックバードを操縦していた仲間も生還することが出来た。しかし、まだ足りなかった。
 破壊されたブラックバードのエンジンが飛来、生き残りのメンバー全てを押しつぶす。燃え盛る炎の中から歩み出てくるハルク。もはや彼を止められる者は、いないかに見えた。

S「いないかに……?」

F「直後に訪れるのは、ワールド・ウォー・ハルクにおける最大のカタルシス! 少し時間を戻して、最後の男の物語へと直結だ!」

 テレパスを聞き、いち早く駆けつけたものの、ハルクには敵わなかった。名乗る間もなく、瞬殺。イギリスから学園への近道を作ってくれた魔石に問いかける。魔石からの答えは、簡単だった。
「それはな、お前が私を否定しているからだよ。邪悪な力は邪悪な者に与えられる。今のお前が、その力を受け取れると思うのか? この石に映る自身の姿を見よ。情けない、ケイン・マルコの姿だ」
 悪の道から離れ、どれだけ経ったのか。力は目に見えて減衰し、全盛期の思い出すことさえ出来ない。あの鋼鉄のスーツを脱いで、どれだけの月日を過ごしてきたのか。
「ハルクを止めるためにはどうしたらいい……」
「簡単なことだ。もう一度邪悪へと堕ちろ。そうすれば、お前は全てを取り戻す」
 正義の為に邪悪へと戻る。それは、残酷な問いだった。
「わかった……俺に、ハルクを止める力をくれ」
 だがしかし、ケインは残酷な選択肢を躊躇わずに受け入れた。義弟であるプロフェッサーXを守りたい。例え、心地良い今を投げ捨ててでも。
「契約成立だ! 思い出せ、真の姿を! 思い出せ、本当の名を! お前はケイン・マルコではない、お前の本当の名は――」

 ウルヴァリンが再び吹き飛ばされる。なんとか動けるメンバーがハルクの前に立ち塞がるものの、望みは薄かった。ハルクを止める。それだけのことが、これほど困難とは。
「そこまでだハルク。歩くのを止めろ」
 炎の中から、彼は現れた。
「むう? 誰だ?」
「俺だ。思い出せ、俺の名を」
 かつて怪力の極地を、ハルクと共に分けあってきた男。鋼鉄の鎧と剛力を真正面から止められる男は誰も居なかった。誰も止められなかった男が、ハルクを止める為に復活を遂げた。
「俺はジャガーノートだ!」

推奨BGM

ただ、守る為に

S「超カッケぇぇぇぇ! そうだよな! ハルクの対立軸といえば、やっぱジャガーさんだよな!」

F「ああ! 邪神サイトラックと契約し、超人的な力とタフネスを手に入れたジャガーノート。マーベルで怪力キャラと言われれば、まず思い出すのはジャガーノートかハルク。精神攻撃への耐性や、空気や食料や水が無くても生きられる点を見ると、防御面や継戦能力ではジャガーさんの方が上だろ。ハルクって、かなり洗脳されやすいですよ?」

S「そうか。邪神だから、正義側に移ると力がもらえなくなるのか。このころのジャガーさんはイギリスに居たのか?」

F「イギリスのヒーローチームであるエクスカリバーに籍を置いていたようだ。エクスカリバーもテレパスを受け取ったものの、ロンドンから動けず不参加。ジャガーノートだけが、魔石の力を使って学園へ。こんな感じだ」

S「あの人、地味に良い人だよなあ。子供には優しいし、比較的常識も弁えてるし。旅客機にのる時は鎧を脱いで、暴れたらマズイから酒は飲まないんだよな」

F「根はいい人なんです。他人も自分自身も、どうしょもない悪人と思っているけど。自分が善人だと曇りなく思っている、どっかのイルミナティの連中よりマシにみえるのは気のせいだろうか」

 地球を揺るがす対決が始まった。ジャガーノートの一撃がハルクを倒し、顔面を踏みつける。起き上がったハルクの腹に、強烈な頭突きの一撃。初めてハルクの口から漏れるうめき声。王となったハルクと互角に戦える男が、初めて現れた。殴り合いの後、力比べに入る両者。両者共一歩も引かず、地面に凶悪なまでの圧力がかかる。
「やめてくれ! ケイン!」
 プロフェッサーXが叫ぶ。
「このままでは、学園が、Xマンションまで崩壊してしまう! とにかく二人とも、やめてくれ!」
 戦いの余波は尋常でなかった。重傷者が運び込まれた丈夫な地下シェルターでさえ、ヒビが入り始めている。このままでは遅かれ早かれ、学園は崩壊してしまう。
 思わず力を緩めたジャガーノート。ハルクはその隙を、見逃さなかった。
「ジャガーノートを止められる者は誰もいないんだよな? よし分かった。なら行けばいいさ」
 力をいなされたジャガーノートは、つんのめったまま学園近くの湖に叩き込まれてしまい戦線離脱。
 遂にハルクとプロフェッサーX、二人きりの会話が開始された。

F「このやりとりでさー“結局ジャガーノートってハルク止められて無くね?”って紹介されている時があるけどさ、そりゃあちょっと印象操作じゃね? 教授の横槍がなければ、もうちょっとどうにかなってたぜ」

S「というか、この時のハルクと一人で殴り合うことがどれだけ凄まじいか。パワーキャラ、のきなみ一撃で真正面から潰されてるもんなあ。シーハルクやシングは2~3発でKOだっけ」

F「コロッサスやストロングガイも殴り合ってはいるけど、他に味方が多数いての殴り合いだからな。少なくとも、ハルク>ジャガーノートという不等式が立てられる戦いでは無かったと思う。バキ風に書くなら、ハルクが技に逃げた! こんな感じで」

S「逃げたってほどじゃないけど、あんだけ強いハルクに力負けしなかったという事実は評価すべきだよなー」

 二人の会話に、復活した候補生の一人が乱入してきた。当然のように吹き飛ばすハルク。吹き飛ばされた先にあったのは、ミュータントを襲った現実だった。
 学園の裏手にあった、新しい無数の墓。ミュータントは既に、ハルク以上の驚異に襲われていた。候補生の涙の懇願を、無言で受け入れるハルク。これ以上の責を、プロフェッサーXに負わすことは酷ではないのか。
「お前は、既に地獄に生きているんだな」
 もはや自分のすべきことはない。ハルクはNYへと帰還する。こうして、ミュータントと一人の王の戦いは終わった。

F「X-MENのストーリーラインは差別を主軸にしているだけあって、悲惨な事件が多々起こっている。ハルク追放から帰還への間においてもだ。ハルクが介入する余地が無いくらいに、陰鬱が重なっている」

S「まあな。ミュータントを喰らう驚異の恐竜プレデターXのロールアウトに、メインメンバーからも死亡者が多々出たメシアコンプレックス事件。この戦いに参戦したメンバーも、後に何人も死んでいるか行方不明か。先行きも、暗い」

F「あとまあ、此頃のプロフェッサーXは、良いと思ってやった悪行がみんなにバレて、指揮権を失ってるしな。あとついでに尊敬も。唯一の自滅したイルミナティかなあ……。最近の扱い、こんな感じだぞ」

マグニートー「サイクロップス。私はお前の軍門に下りに来た。お前は私の理想を実現させた、尊敬すべき男だ」

教授「騙されるな! サイクロップス! そいつはマグニートーだぞ」

サイクロップス「教授、これは大人の話し合いです。ちょっと黙っててもらえますか?」

マグニートー「まったく、お前の疑り深さはノーベル賞級だな。いいから、あっち行ってろよ」

S「なんでこの人、教え子とライバルにボケ老人扱いされてるんだ」

F「まあ、最近は少しはマシな扱いになってるけどね。それでも、もう指導者ではないな。強力なテレパス能力は今だ健在だけど、いかんせん年だからなあ。そこいらへんは各自、X-MEN自体のストーリーラインを追ってください」

 戦いは終わった。善に傾いていたジャガーノートは、再び悪に戻り何処かへ。崩壊しかけの学園。重傷の教え子たち。ハルクの裁きは受けなかったものの、X-MENとプロフェッサーXの受けた損害は大きかった。
 一方、NYに帰還したハルクは玉座に腰掛け、命令を下す。ハルクとアイアンマンの戦いまで、あと数時間。

F「というわけで、物語は再び本戦へ。次回はハルクと旧友との再開から、行けるとこまで書くよ。随分と長くなりそうだから、分割するかも知れないけど。ではまた次回、激戦編もしくは終戦編で!」

 次回、激戦編はこちらへ。