一日一アメコミ~7~

アイアンマン:エンター・ザ・マンダリン

 これはまだ、アイアンマンがマーク3であった頃、後のトレードマークと赤と金の配色を初めて採用した頃、トニー・スタークとアイアンマンは別人であると発表していた頃、アベンジャーズやシールドが組織として動き始めた頃、アイアンマンというヒーローがいよいよ世界に認知され始めた頃。トニー・スタークはアイアンマンとして中国奥地へと降り立つ。目的は、中国にて強大な影響力を誇り、世界各地の動乱に関わっているとも噂される、謎の怪人マンダリンの調査。アイアンマンの前の前に現れたマンダリンの手に光るのは、10の指輪と10の能力。鋼鉄の騎士とアジアの怪人の初対決。この戦いこそ、長きに渡る因縁の始まりであった。今再び語られる、アイアンマンの物語、そしてマンダリンの驚異。

 1963年にアイアンマンがデビュー。そしてその一年後の1964年にマンダリンが初登場。そんな60年代のストーリーを、2007~2008年にかけてリメイクしたのが本作。マンダリンとの初対決から始まり、新ヴィランであるスケアクロウの登場や、ソ連製アーマーのクリムゾン・ダイナモを巡る戦い、マンダリンとの再対決を現代風にリメイク。ただ忠実に再現するのではなく、アイアンマンのスーツの技術にハイテクさを加えつつ60年代当時はいなかったマンダリンの息子テムジン(2002年初登場)を登場させると、後の展開をふまえて話に厚みをもたせているのもポイントの一つですね。

 この作品の特徴としては、初期のアイアンマンの設定やストーリーを使ったものであることでしょう。アイアンマンの正体がトニー・スタークであることは、秘書であるペッパー・ポッツや運転手兼ボディガードのハッピー・ホーガンすら知らない極秘事項。アイアンマンの偽りの身分は、トニー・スタークのボディガードを務める一社員。スターク・インダストリーズは兵器の開発を続行中で、トニーは武器商人として経済誌に登場。アベンジャーズもシールドもチームや組織としては雛同然で、ニック・フューリーがシールド長官になるのも先の話。中国のマンダリンにソ連のクリムゾン・ダイナモと、赤狩りの時代におけるリアリティは東側の驚異。60年代ならではと、連載立ち上げ期ならではの試行錯誤のオンパレードですね。アイアンマンのシルエットもテクノロジーも、ガンスミスの色がまだ濃かったトニーのイメージや時代性もあってか、全体的に無骨なんだよな。

 この作品が刊行されたのは、上述のとおり2007年から2008年にかけて。映画アイアンマンが公開されたのは、2008年。映画という別の道が出来る直前に、改めてコミックスにおけるアイアンマンの初期設定をまとめたマイルストーン。映画アイアンマンがMCUの礎となり、アイアンマンのイメージがロバートダウニーJrに染まっている今。こういう作品があったんだよ、こういう時代があったんだよという存在はあるべきものでしょう。

 しかしまあ、アイアンマンのヴィランといえば、オバディア・ステインにマンダリン。そしてそれぞれの息子として、エゼキエル・ステインとテムジンがいるわけですが……なんでエゼキエルもテムジンの若手二人を、そろってハゲにしちまったのかなあ。アイアンマンの敵として出てくると、パット見でわっかんねえからね!?