映画デッドプール2~もう一人の○○~

 映画デッドプール2のDVD&Blue-ray発売記念ということで、映画に関わる小ネタを投入。
 もう流石にネタバレを警戒する時期ではないと思いますので、今回はオープン仕様にさせていただきます。

 

 

もう一人のX-Force

 デッドプールのリクルートにより、X-Forceとして集結。そして華麗に散っていった男たち。ベドラム、シャッタースター、ツァイトガイスト、バニッシャー……有名無名にブラッド・ピットも混じった彼らの共通点はミュータントであること、そしてコミックスにてX-Force在籍経験があることである。でも、全員が同時にX-Forceに在籍したわけではない。ケーブルの手で鍛え上げられた若手ミュータントたち、ウルヴァリンがX-MENにも極秘で結成した暗殺チーム、名声と金を得るために無断でX-Forceを名乗ったミュータントの集団……X-Forceと呼ばれるチームは複数あり、彼らはそれぞれ別々のX-Forceに所属していた。

 ケーブルはX-Forceの創設に関わっており、その後出来たX-Forceにも複数回参加。ドミノやデッドプールもX-Forceの参加経験者である。そんな中、近年X-Forceに参加したキャラクターがデッドプール2には出演している。それは、コロッサスである。

 X-MENにおける主要キャラの一人であり、本隊在籍のイメージが強いコロッサスも、実はX-Force在籍経験者となる。上記画像のようにケーブルやドミノと一緒に組んでおり、ここにデッドプールが揃えば、コミックス版デッドプール2なメンツとなる。もっともデッドプールはこの直前に存在し解散したX-Forceに所属していたため、結果的に三人とは入れ違いになっている。

 このX-Forceとしてのコロッサスの姿を知っていると、デッドプール2でコロッサスがデッドプールを助けに来たこと。ラストシーンでデッドプールやケーブルと共に歩く一方、そこからX-Force在籍経験がないネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッドが離れていたこと。コロッサスがX-Forceに加入する光景が予感できること、デッドプール2のクライマックスからラストシーンの見方が少し変わってくるだろう。

 これは完全に余談だが、実は映画公開前、デッドプール2にツァイトガイストが出ると知った瞬間、彼が出オチのように死ぬことは予感していた。なぜならコミックスにおける彼もまた、初登場回が死亡回となった、ある意味出オチキャラだったのだ。

 最初で最後の活動シーンや回想や生前のエピソードである程度キャラは立っているものの、名前を聞いた時パッと出てきたキーワードは出オチであり、当時彼に関する話をボカしていた理由もキャラ紹介がネタバレに繋がるという警戒からである。そしてその勘は的中したものの……他のメンバーも出オチに引きずり込まれるとこまでは、大惨事すぎて予想できなかった。

 

 

もう一人のピーター

 デッドプール2のどうしてこうなった!要素の一つであるピーター。

 映画でポン!と生まれたキャラで、コミックスにおける云々もあるわけなく、特に何も書くことのないおっちゃんと言ってもいいものの……彼のピーターという名前にはちょっとだけ注目してみたい。ピーター(Peter)は一般的な名前であり、若干スペルは違うものの、フランスではピエール、スペイン語ならペドロと多彩な読み方を持つ名前でもある。マーベルにおけるピーターと言えば、スパイダーマンであるピーター・パーカーが有名だろう。だが、このデッドプール2にはもうひとり“ピーター”がいる。それは、コロッサスである。

 またコロッサスかよ!?と思っても、どうか話を聞いてほしい。まだ二回目なので、天丼には至ってないはずだ。
 コロッサスはコードネームであり、本名はピョートル・ニコライビッチ・ラスプーチン(Piotr “Peter” Nikolaievitch Rasputin)。ピョートルはロシア語圏におけるピーターであり、つまりはコロッサスもピーターということになる。特にどうということはないと、書いてる当人が思うくらいどうということはないが、頭の片隅にでも入れておいてほしい。

 ロシア出身のコロッサスの名前に入っている、ラスプーチンの6文字。コロッサスは、帝政ロシア末期に名を残す怪僧ラスプーチンの子孫である。おそらく、ラスプーチン大活躍なFGOの第二部をコロッサスがプレイしたら、嫌な汗が出ること請け合いである。

 ラスプーチンの怪しいイメージと鋼鉄肉弾戦なコロッサスのイメージはいまいち一致しないが、コロッサスの兄弟であるミハイル・ラスプーチンや妹のマジックは、それぞれワープやブラスト、魔術を使いこなすと、怪しきグレゴリー・ラスプーチンのイメージに近い。

 こう見ると、むしろ肉弾戦が主なコロッサスが一族の中では異端に見えてくる。なお、コロッサスにミハイルにマジックは、全員能力は違えども、強力なミュータントである。このラスプーチンの一族は、とてつもなく強いのだ。

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アベンジャーズ/インフィニティ・ウォーなコラム~雷神編~

 アベンジャーズ/インフィニティ・ウォーにて登場した、ソーに関するあるアイテムについて書いた記事です。それは、絶望に身を投じるようなサノスとの戦いで生じた、新たなる希望。
 話の内容に突っ込んでいるので、ネタバレ注意。まだ観てない人は、ネタバレへの覚悟を決めるか、劇場に行ってから読んだほうがいいよ!

 

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フューチャー・アベンジャーズなコラム~征服者カーンという男~

 フューチャー・アベンジャーズもいよいよ最終回、というか記事作成時点で7時間後ぐらいに最終回!
 最終回を迎える前に、この男の解説だけは書いておねばならない。その名は、征服者カーン!
 フューチャー・アベンジャーズのラスボスを務めることとなったこの男は、何者なのか? カーンが抱えている複雑な運命とは?
 
 というか、フューチャー・アベンジャーズの毎週の感想&コラムが間に合わなくて申し訳ありません。ここは一つ、情報の鮮度のこともあり、カーンのコラムをひとまず先に書かせていただきました……!

 というわけで、数奇過ぎて知恵の輪も真っ青なカーンの話をどうぞ。

 

征服者カーン

 人類同士の争いにより、破滅の道へと進んでいた世界。だが、争いは突如現れた一人の英雄ナサニエル・リチャーズの手により終結した。その後に生じた混乱も乗り越え、遂に人類が平和な世界を手にした30世紀の未来世界にて、伝説の英雄ナサニエル・リチャーズと同じ名を持つ男が生まれる。新たなるナサニエル・リチャーズもまた、歴史に名を残すこととなる。過去の世界だけでなく平行世界をも渡り歩く、征服者カーンとして。

 カーンは未来世界の住人だが、コミックスの正史世界(Earth-616)の未来ではなく、良く似た世界の未来(Earth-6311)である。なのでカーンは、未来世界の住人でありつつも、並行世界の住人ということになる。

 

 なお、Earth-6311を立て直した英雄ナサニエル・リチャーズの正体は時間と世界線を超えてEarth-6311に現れたEarth-616であり、かのファンタスティック・フォーのリーダー、ミスター・ファンタスティックことリード・リチャーズの父親である。

 ナサニエルも超天才であるリードに劣らぬ天才であり、リードの天才性の下地にはナサニエルの教育がある。ナサニエルもブラザーフッド・オブ・ザ・シールドという世界平和を護る組織に所属しており、アイアンマンことトニー・スタークの父親であるハワード・スタークとはこの組織の同僚だった。

 ちなみにブラザーフッド・オブ・ザ・シールドはかのSHIELDよりも遥かに古い組織であり、設立は古代エジプト王朝期となっている。元は宇宙からの侵略者に対抗するためイムホテップが設立した組織であり、その後も数多くの天才的偉人を組み込みつつ人類の平和を見守ってきた。メンバーはアルキメデスにレオナルド・ダ・ヴィンチに張衡にアイザック・ニュートンと、人類史の天才たちで構成されている。預言者ノストラダムスのような、外部の協力者も多い。

 そして物凄いメンバーとしては、なんとX-MENの大敵であるアポカリプスも設立期に参加している。

 彼が生まれた古代エジプト王朝期の組織だからこその奇跡である。

 

 当然ながら、リード・リチャーズの父親であるナサニエル・リチャーズと征服者カーンの本名であるナサニエル・リチャーズは別人である。リードはファンタスティック・フォーとして何度もカーンの侵略を防いでいるが、尊敬すべき父親と同姓同名なカーンの本名を思い出す度に、苦々しい顔をしている。名前はともかく性も一緒なので、ひょっとしたらリードの子孫である可能性もあるが、別の情報だとドクター・ドゥームの子孫という話もある。後述するが、カーンはドゥームに多大な影響を受けている。それに、リードの子孫とドゥームの子孫が何処かで血縁となっても、何らおかしくはない。Earth-6311に現れた後のナサニエルの子孫かもしれない。彼は、Earth-6311でも子を成している。

 遠い未来、しかも並行世界での話なので、追求は難しいだろう。それにおそらく、カーンはもはや血筋というくびきに囚われていない。もはや彼は、数多の世界と時間軸をくぐり抜けることで、超越的な存在となっているからだ。

 

 カーンが超越的な存在であることを説明する前に、カーンの能力について語っておきたい。カーンは既に老人であるがそう思わせない若々しい身体であり、科学者や政治家や軍人としての高い知識があり、素手でも戦える戦闘技術を持っている。着ているバトルスーツも未来の技術と金属で出来ており、5トンの鉄を持ち上げる腕力や電気ショックのような超人的な力を彼に与えている。核攻撃級の攻撃に耐える防御力に、栄養補給や排泄物の処理もおこなう高い生存性と、防御面でも死角は無い。

 このようにカーンの能力はバランスよく纏まっているのだが、マーベルが設定したパワーレベル(能力値表)を見ると、大ボス勢の中では平均より下である。ほぼカンストなギャラクタスやドーマムゥ、神としてのスペックを持つロキやインフィニティ・ガントレット抜きでも十分強いサノスよりも下であり、数値的に近いのはあくまで常人的な強さのレッド・スカルである。そもそも、5トンぐらいの物体ならハルクもソーも簡単に持ち上げられそうだし、アイアンマンのスーツの武装や能力はカーンのバトルスーツに見劣りしていない。単純に見てしまうと、複数の超人が所属するチームと単独で戦うのは厳しく思えてしまう。

 だが、レッド・スカルが数値では分析できぬ恐ろしさを持っているように、カーンにも数値で測れぬ力がある。彼が得意とするのは、時間や並行世界への移動なのだ。カーンは未来と並行世界から集めた様々な兵器やアイテムやロボットを収集しており、スーツにはそれらを瞬時に手元に出現させる能力もある。遥かに進んだ未来の武器、もしくはその世界の発想では開発できない技術。これらを駆使したカーンは、数値以上の力をたやすく発揮する。強力な神経ガスや無敵のバリアにハンドガンサイズのミサイルランチャーに巨大化能力を持つピム粒子の亜種と、彼のコレクションはかのコレクターにすら劣らない。

 更にカーンは何度も時間や並行世界への移動を繰り返した結果、タイムパラドックスを押さえ込み、他の次元のカーンとも接触することが可能な一種の特異点と化している。カーンは戦艦サイズのタイム・シップを使うことで時間移動をしているが、スーツ自体にも時間移動能力とナビゲーション機能が内蔵されており、更にこのカーンの資質が備わることで単独での時間移動も可能である。

 そして、並行世界のカーンたちは技術や記憶がある程度一本化されており、次元を超えて共有される知識が彼の強みとも言える。たとえ目の前のヒーローに負けそうになっていても、そのヒーローの弱点を突いて勝った世界におけるカーンと情報を共有できるというのは恐ろしいことである。この並行世界との共有能力は感覚的なものもあるのだが、カーンたちはある程度定期的に並行世界を超えて集まり“カーン評議会”とでも呼ぶべき会合をおこなっている。

 だいたい集まると統一化や粛清や全滅の憂き目にあっている気がするが、いつの間にか数は復活している。並行世界は無限ということだろう。現に、フューチャー・アベンジャーズへの登場で、カーンがまた一人増えたわけで。

 

 時間や次元の移動を極めたようなカーンであるが、実は半ば特異点と化している彼にも制御しきれていないことがある。カーンは時間移動を駆使して、古代で王となろうとしたり、少年時代の自分に干渉したりしたのだが、その結果、カーンを起点に歴史が分岐してしまい、数多くのカーンとは別のカーン、正義や悪の道を歩んだ別のナサニエル・リチャーズが誕生してしまっている。

 カーンの時間移動への積極性を見るに、コミックスやアニメ以外の所でもっと湧いている可能性もあるのだが……代表的な個体を、ざっと紹介しておきたい。

 

ラマ・タト

 ナサニエル・リチャーズが古代エジプトにタイムスリップし、エジプトの王となった時の姿。実は悪い方のナサニエルの初出は、カーンでなくラマ・タトとしての姿となっている。ラマ・タトの初登場は1963年刊行のFantastic Four #19であり、カーンとして初登場したのは1964年に刊行されたAvengers #8である。つまり、カーンの前身がラマ・タトである。彼の映像権利としての所属がファンタスティック・フォーに属しているのも、ここが根幹の一つなのかもしれない。

 古代エジプトに現れたラマ・タトは未来の技術を悪用し、永久のファラオとして君臨しようとするものの、ファンタスティック・フォーの妨害により失敗。自分がいた未来より先の40世紀の未来に逃げのびた彼は、荒廃した世界を征服し征服者カーンを名乗ることになる。なお、機械のスーツを着るというインスピレーションは、逃亡中に遭遇したドクター・ドゥームからいただいた。ラマ・タトはカーンの過去の姿だったが、時間軸や世界線のズレや他者の干渉により、カーンとは別の個体として存在している。

 ラマ・タトの数十年にわたるエジプト統治時代に人類史初のミュータントと呼ばれる男、エン・サバ・ヌルが産まれており、ラマ・タトの圧政と干渉が彼の力を最悪の方向に目覚めさせてしまう。

 このヌルこそが、後のアポカリプスである。

 

スカーレット・センチュリオン

 ラマ・タトもしくはカーンから分裂した個体。第二次世界大戦当時のキャプテン・アメリカを狙うという時間移動者らしい戦いを見せるものの、最終的にスカーレット・センチュリオンへのコスチュームチェンジは失敗だったと自分で認め、このアイデンティティは捨てられてしまう。だが、捨てられたはずのスカーレット・センチュリオンもラマ・タトと同じように別の個体として存在するようになってしまった。後にカーンの息子であるマーカス・カーンもスカーレット・センチュリオンの名を名乗っている。

 

イモータス

 征服者カーンはアベンジャーズとの戦いに疲れ果て、遂に時間の守護者タイムキーパーズの傘下に入る。征服者から部下になったカーンは、バトルスーツも脱ぎ、名もイモータスに改める。イモータスとなった彼は、アベンジャーズとも付かず離れずの関係となり、共に若き日の自分自身であるカーンと戦ったりもしたものの……今度は、イモータスとカーンが分裂。結果的にまたもナサニエルが増えてしまった。後にイモータスもアベンジャーズを狙ったが、今度はカーンがそれを止める。結果的に二人は、同程度の知識と能力を持つ宿敵同士になってしまった。

 

アイアンラッド

 平和な未来の世界で生きる16歳の天才的少年ナサニエル・リチャーズ。ひどいイジメにあっていたナサニエルだったが、ある日そのイジメと彼の今までの青春は唐突な終りを迎える。この日、重症を負わされる運命にあったナサニエルを救うために未来から現れたのは、未来の自分自身である征服者カーンだった。カーンは過去の自分と邂逅することで、ナサニエルが本来の歴史よりも早く征服者カーンとなることを望み、ナサニエルに思念操作型の高性能アーマーも与える。

 だが、ナサニエルは自分に定められた征服者の運命を拒否。カーンを何度も止めたアベンジャーズに助けを求め現代へとタイムスリップしてくるが、運悪くその時期はアベンジャーズが一時解散をしていた時だった。ナサニエルはカーンと戦うため、自分自身がヒーローとなりアベンジャーズを結成することを決意する。ナサニエルはアイアンラッドと名乗り、自分と同じ若き能力者たちを招集。若手ヒーローチームのヤング・アベンジャーズを結成した。

 アイアンラッドは、カーンの干渉により強大な力を授かった少年であり、ヴィランとなる運命を拒否しヒーローとなることを決意。同じ志の若者と共に若きアベンジャーズを結成した。
 一方、フューチャー・アベンジャーズの主人公であるマコトは、カーンのエメラルドレイン計画により強大な力を授かった少年であり、ヴィランとなる運命を拒否しヒーローとなることを決意。同じ志の若者と共に未来のアベンジャーズを結成した。
 こうやって書き出してみると、アイアンラッドとマコトの経歴は非常に似ている。マコトのキャラクター造形には、アイアンラッドの要素も加えられているのかもしれない。だが、唯一違う点があるとすれば、アイアンラッドの悪になる運命は、“決定”に近い拘束力を持っていることである。

 

キッド・イモータス

 ヒーローとして活動しようとしていたアイアンラッドが運命の前に心折れ、カーンを拒絶しつつ悪人としての道を選んだ姿。ドクター・ドゥームと手を組みアントマン率いる新生ファンタスティック・フォーと対決するが、時間流に飲み込まれ行方不明となってしまう。ここで悪人として生きることの決意と、ドクター・ドゥームの影響を受けたことにより、彼が後に征服者カーンやラマ・タトやスカーレット・センチュリオンやイモータスになるフラグが全て立ってしまったのかもしれない。今の(2018年 1月)の段階では、アイアンラッドの復帰も予告されているので、まだ希望も残っている。ただ、カーンの今までを見るに、またアイアンラッドとキッド・イモータスの二人に分かれた可能性も高い。

 

ミスター・グリフォン

 時間移動の不具合により、21世紀(現代)に取り残された新たなカーン。グリフォンは、何らかの理由でこの時間軸からの移動が不可能となっていたため、この世界に自分の王朝を作ることを目論む。現代の支配者、実業家として成功を収めたグリフォンは金の力と謀略でアベンジャーズを追い詰めるが、やがて正体が露見。時間の果てに飛ばされることとなった。

 

 彼らカーンより別れた可能性は、カーンと時には協力し、時には憎み合い、時には統一化されると、それぞれの思惑や意思を持ち動いている。このもはや自分自身ですら制御不能な状況こそ、時間や次元を言いように操ったカーンの代償なのかもしれない。

 

 カーンはタイム・シップを本拠地としているが、時空の果てにトロフィールームと呼ばれる部屋を所持している。ここにあるアイテムは、全てカーンの勝利の証であり、栄光の記録である。

 このトロフィールームには、アイアンマンのパーツやスパイダーマンのコスチュームのような替えの効くアイテムだけでなく、キャプテン・アメリカのシールドやソーのムジョルニアのような唯一無二のアイテム、ウルヴァリンの骨格標本やビーストにニック・フューリーの生首と、生命も奪わねばならないアイテムが所狭しと展示されている。ひょっとして、我々読者の知らないところでカーンはヒーローたちに記録以上の勝利を重ねているのではないだろうか……。

 舞台の上から第四の壁を壊し、観客席に殴り込んでくるのがデッドプール。だが、自分の居る舞台だけでなく、数え切れないほどの他の舞台を知り尽くし、思うがままに掌握できる力を持った演者。それが、征服者カーンと呼ばれる超越者だ。

フューチャー・アベンジャーズなコラム~その9~

 フューチャー・アベンジャーズ第9話!
 アベンジャーズがピンチとなれば、仲間たちが駆けつける……助っ人ホークアイ登場!

 俺が悪いんじゃない、コイツらの集中線とグラサンが被っているから並べたくなったんだ。

 

デッドプール「ふっ。ついにパープルアローが真の力を取り戻したようだな……それでこそ、俺ちゃんたちと並ぶに相応しい男よ」
ガンビット「ちょっと待て。なんで俺がここに呼ばれてるんだ?」

 ホークアイ、デッドプール、ガンビットでろくでなし親しみやすいヒーロー大三元でいいと思うんスよね。

 今回のホークアイは、仕事人ではなくホークアイ:マイ・ライフ・アズ・ア・ウェポンタイプな、近所の親しみやすい兄ちゃんみたいなキャラで参戦。マコトたちと同じヴィラン候補として育てられ、アベンジャーズでははみ出し者からリーダーまでなんでもこなし、数多くの恋愛やズッコケや悲劇や喜劇や死を経験……これら、酸いも甘いも噛み分けた生き様が、近年におけるホークアイの「隣りにいてくれるヒーロー」というスタイルを作ることに。世界を揺るがす大悪党と戦うこともあれば、街のチンピラに睨みをきかせてもくれる。一流なヒーローたちに比べ、かっちりとスタイルが固まらなかったことが、この親しみやすさの土壌にもなったのでしょう。この点似通っているデッドプールやガンビットも含め、彼らのことは超一流の二流と呼びたい。

 マーベル・シネマティック・ユニバースのホークアイも、家庭人たる顔が見えて、コミックスやアニメより歳上をイメージした親しみやすさはあるものの……演:ジェレミー・レナーな時点で、どうしても仕事人キャラが濃くなってるよネ!

 

 ヒーローは割に合わない仕事である。誰に頼まれたわけでもないのに、絶対感謝されるわけでもないのに、報われないかもしれないのに、ただ命をかける。むしろ、この点ではヴィランの方がわかりやすいのでしょう。ヴィランの原動力は、主に欲望。ならば、ヒーローはなんのために動くのか――これは、おそらく永遠の課題であり、絶対的な答えが出ることはないのでしょう。絶対と言い切ってしまった瞬間、輝かしいはずの答えは、欲望以下のおぞましい答えへと堕します。

 絶対的な答えが出ないのならば、求める続けるしかない。たとえ、アベンジャーズを全滅させた相手でも、戦うしかない。

 ストレートな熱血ではないものの、マスターズ・オブ・イーブル相手に挑むホークアイの姿は、まさしく答えを求め続け、他人にヒーローのあり方という疑問へのヒントを教えるヒーローの姿。キャプテン・マーベルやブラック・ウィドウは策略を練って動いていたものの、大筋危機的状況下にあったことは、ホークアイと変わりなく。今回はマコトたちがほぼお休みだった分、アベンジャーズはこちら(視聴者)に背中で語ってきましたね。言葉にならないならない何かを伝えようとする背中ってのは、いいもんです。

 

 キャプテン・マーベルとアイアンマンの作戦、そしてキャプテン・マーベルの能力により、アベンジャーズもマコトも無事かつ、リーダーからエメラルドレイン計画の情報も引き出せるという、最良の結果に。ヴィブラニウムが鍵で、次回の舞台はアフリカのワカンダ……このままリレーしていけば、そのうち宇宙に出ていきそうだな。

 さて、これにて大団円! といきたいものの、今回のタイトルは「W・ソルジャーの正体」。大事なのは、二人の神様の撃退でもリーダーの頭のいいバカっぷりでもなく、謎の傭兵ウィンター・ソルジャーの正体。そして、ウィンター・ソルジャーとキャプテン・アメリカの対峙――

 わかっていても、刷り込まれた記憶が和解を許さない。第二次世界大戦から現代にそのまま蘇ったのがキャプテン・アメリカなら、歪んで蘇ってしまったのがウィンター・ソルジャー。歪みを正す手段があるとすれば、必要なのは正義ではなく誠意。キャプテン・アメリカではなく、メットを取ったスティーブ・ロジャースとしてウィンター・ソルジャーと向き合う姿は、やけに新鮮。キャプテン・アメリカが、アニメでメットを取ること自体が珍しいからかね……?

 キャプテン・アメリカとウィンター・ソルジャーの和解は成されなかったものの、楔を打ち込んだ気配はあった。たとえ殺し合ったとしても、それは二度と言葉もかわせない死という状況に比べれば遥かにマシ、まだ何かが叶えられるかもしれない状況。だからこそ、キャプテン・アメリカは晴れ晴れとした顔で、友情を信じることが出来る。この救いこそ、同じ境遇であるマコトとブルーノに見せた、先行くキャプテン・アメリカの大きな背中なのでしょう。

 

 今日の紹介は、キャプテン・マーベル! とは言いつつも、サブレギュラーのキャプテン・マーベル(キャロル・ダンバース)ではなく、そもそも“キャプテン・マーベル”とはなんなのかというところを紹介。「キャプテン・マーベルって男じゃなかったっけ?」「キャロルってミズ・マーベルだったよな……?」という記憶のミッシングリンクを埋める感じで。

 おそらくフューチャー・アベンジャーズでは、キャプテン・マーベル=キャロルでミズ・マーベル=カマラとなりそうなので、男のキャプテン・マーベルに言及することは、アニメ連動のコラムとして微妙に的はずれな気がするものの……まあ、せっかくだしね!

 

 

キャプテン・マーベル(マー=ベル)

 列強の宇宙帝国クリー。クリーを支配する集合知性体スプリーム・インテリジェンスは、強大な科学力を持ちつつも進化の手を止めない地球人類を警戒するようになる。スプリーム・インテリジェンスは地球人の宇宙進出を妨害するため、幾多の戦争で多大な戦果を上げた英雄マー=ベルを地球に派遣する。地球における白人とよく似た肌と地球人同様の生理機能を持つ種族“ホワイト・クリー”であるマー=ベルは、潜入工作員としてもうってつけだった。

 地球に降り立ったマー=ベルは、身分を偽り地球人と接触。マー=ベルもスプリーム・インテリジェンス同様、地球人に秘められた多大な可能性を知る。だが実際に地球人と接触したマー=ベルはその可能性を肯定し、やがてその力で地球人を助け始める。彼の名はマー=ベル。その名を耳にした地球人は、彼はマーベル(MARVEL)と自称する新ヒーローだと、勘違いしてしまう。MARVELの単語が本来保つ意味は、驚異、そして驚くべき人。幸い、驚異の存在であるマー=ベルと意味はズレていなかった。

 なので、正確にはキャプテン・マーベルではなくキャプテン・マー=ベルであり、一部資料では書き分けの都合もあちキャプテン・マー=ベルとなっている。彼について英語でもいいので調べたい!という時はCaptain MAR-VELで検索すると、他のキャプテン・マーベルが引っかかりにくくなり、多少楽である。

 こうして地球に、キャプテン・マーベルと呼ばれる存在が誕生した。最初は下記のような緑のコスチュームだったが、後に赤を基調としたスーツに変更となる。

 マー=ベルが能力として持っているのは、まずクリー人としての能力。腕力、耐久性、俊敏性、反応共に地球人より優れているクリー人だが、マー=ベルはクリー人の中でも特級クラス。この時点で地球における超人レベルのスペックを持っており、素の状態でも1トン程度なら持ち上げることが可能で、銃弾程度なら軽くさばける。更にマー=ベルはネガバンドという自身の力を倍増させる装備も持っており、優れた身体能力は更に倍増。例えばネガバンドを装備した状態ならば、倍増した腕力で10トン以上の物体を持ち上げることが出来る。

 そしてヒーローとしてキャリアを重ね、様々なアクシデントに見舞われた結果、マー=ベルのスキルと能力はより一層の成長を見せる。腕力は数十トンクラス、飛行速度は光速。手から太陽光エネルギーを集積したファイヤー・ボルトを放つことが可能に。更に、相手の攻撃を広範囲で察知するだけでなく状況と弱点の分析までしてしまうコズミック・アウェアネス(宇宙意識)と呼ばれるレーダー能力も追加。優れた身体能力に、遠距離攻撃やレーダーが追加され、更に死角は無くなった。

 なおマー=ベルを地球に派遣した大本であり、クリー人の統治者と信仰の対象を務めている、クリー人の天才たちの脳と知識を融合した知性の怪物ことスプリーム・インテリジェンス。クリー人の天才たちの脳と知識を融合した知性の怪物である彼はキャプテン・マーベル誕生後も地球人を警戒し続け、ついには地球人の進化の可能性を自身に取り込んだ上での滅亡計画を画策する。

 だが、キャプテン・マーベルをも巻き込むスプリーム・インテリジェンスの計画はことごとく阻止され、やがて地球最強のヒーローチームであるアベンジャーズとも対立。幾度もの戦いの結果、クリー帝国は多大なダメージを負い、スプリーム・インテリジェンス自身も敗北を喫することになった。原因はクリー側にあるものの、ある意味、スプリーム・インテリジェンスの地球人への警戒は間違っていなかったのかもしれない。

 

 晴れてキャプテン・マーベルとなったマー=ベルは、地球を護るため、やがて宇宙全体を護るための戦いに挑む。クリー帝国の障害と反逆者を裁く告発人、ロナン・ジ・アキューザー。クリー帝国所属時からの敵でもある、地球を狙う変身種族、スクラル人。そして全宇宙の生命撲滅を企む巨悪、サノス。数々の強敵相手に勝利を重ねてきたキャプテン・マーベルは、地球の枠を飛び越え、宇宙の守護者と呼ばれるようになる。

 だが、マー=ベルの戦いは、思わぬ形で潰えることとなる。宇宙人による犯罪組織ルナティック・リージョンとの戦いで、マー=ベルは神経性のガスを浴びてしまう。ガスにより、クリー人でブラックエンドと呼ばれる病に冒されたマー=ベル。最初は体力で病を押さえつけていたものの、やがて身体も心も限界を迎える。ブラックエンドと呼ばれる病、それは地球における大病“ガン”であった。

 病による苦しみはマー=ベルを精神錯乱状態に追い込んだが、マー=ベルの精神は病の苦しみに耐え抜き、彼は最後までヒーローのまま、死んだ。クリーから見れば裏切り者であるマー=ベルだが、死を迎えようとする彼の周りには、地球での生活やキャプテン・マーベルとして得た友人や仲間たちが集い、更に死の女神デスと共に彼を死の世界へと導いたのは、宿敵であるはずのサノスだった。
 マー=ベルの生き様は、きっと間違っていなかったのだ。

 

 マー=ベル死後、マー=ベルの遺伝子を受け継ぐ息子、ジェニス=ベル。後にクェーサーという別のヒーローになるウェンデル・ボーン。ダークアベンジャーズ政権下にてキャプテン・マーベルを名乗ったクリー人、マーベルボーイことノー=バー。キャプテン・マーベルの名を名乗る人間は複数現れたものの、全員長期的な定着には至っていない。
 

 変わり種としては、スクラル人のクン・ナーが変身したキャプテン・マーベルがいる。クン・ナーはマー=ベルに変身し、実は生きていたキャプテン・マーベルとして登場する。やがて、スクラル人による地球侵略作戦シークレット・インベージョンが始まり、クン・ナーもまたスクラル側の戦力となる予定だった。だが、マー=ベルの記憶と精神もコピーしていた彼は、キャプテン・マーベルそのものとしてスクラル人と戦うことになる。多数の戦艦を道連れにクン・ナーは死亡するものの、彼の奮闘により、地球側は反撃の一手を打つことができた。

 自勢力を裏切り、地球のために戦うクン・ナーの姿は、奇しくもマー=ベルそのものだった。カテゴリー的には、偽キャプテン・マーベルと呼ぶのが正しいのだろうが、個人的に彼のことはキャプテン・マーベルの一人と数えたい。

 現在キャプテン・マーベルの名を名乗っているのは、フューチャー・アベンジャーズにおけるキャプテン・マーベルこと、キャロル・ダンバースである。生前のマー=ベルと接触し、偶然その力の影響により超人ミズ・マーベルとなり、宇宙人のマー=ベルに地球人の善き可能性を教えた者の一人である。黒いハイレグコスチュームがトレードマークな彼女だが、キャプテン・マーベルの女性版と言える、繋がりがわかりやすいデザインのコスチュームを着ていた。

 キャロルは長年、ミズ・マーベルとして活動してきたが、近年ついにキャプテン・マーベルの名を名乗ることとなり、フューチャー・アベンジャーズと同デザインのスーツに着替えた。

 複数人がキャプテン・マーベルの後継者になろうとしたが、今までのところ、初代の英雄精神に比肩した者はいない。ここまで言わしめる、キャプテン・マーベルの名を継いだキャロル。ここ数年の安定や扱いを見る限り、キャプテン・マーベルの名はキャロルに定着しようとしている。その座が、永く続くことを祈りたい。

 

 これは余談だが、DCコミックスのキャプテン・マーベル(現:シャザム!)とマーベル・コミックのキャプテン・マーベルの間に直接の関係はない。前述した通り、MARVEL自体が驚異的という意味を持っている単語かつ、そもそも現在シャザム!なキャプテン・マーベルの方が誕生自体は早い。

 最もこの辺りの事情は、元々シャザム!が所属していたのは別の出版社のフォーセット・コミックスだとか、フォーセット・コミックスとDCコミックスの間で色々あった末にDCコミックスがシャザム!の版権を得たとか、非常にややこしい。物語の枠を超え、アメコミ史全体に関わる学術的な話にまで及ぶので、また別の機会にでも。これは、本気で腰を据えて挑むべきテーマの一つである。

 それぞれ別の出版社に所属する、二人のキャプテン・マーベル。特別なクロスオーバー企画であるJLA/Avengers内、しかも一コマだけの光景であるものの、互いのライバルを入れ替え共闘する姿には、ややこしいからこそ生じた爽快感と面白さがあったことは伝えておきたい。 
 

 

フューチャー・アベンジャーズなコラム~その8~

 フューチャー・アベンジャーズ第8話!
 親友であったはずの男たちの戦い、それは身を削る痛みのある戦い。 

 

 キャプテン・アメリカの年齢も(あの世界の)アメリカ史に関わってきそうだけど、ソーの年齢も神代の謎を解き明かす上で一回ハッキリさせておいた方がいいと思うよ! つーか、キャップの年齢って、凍結期間があるから1918年ってハッキリ設定しても調整効くのよね。トニーなんか、時代ごとにアイアンマンになるきっかけの戦争が変わってるし……コミックスの第一話だと、敵は赤軍ゲリラで場所はベトナム戦争だったぞ。

 俺、映画キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャーのラストシーン、数十年の時を経て復活したキャプテン・アメリカが変わってしまったニューヨークに戸惑う所と、その後戸惑いつつもトレーニングを重ね今を生きようとする姿が大好きなんだ。だって想像してみてくださいよ、ある日起きたら、自分の周りの物も人も大半が無いか大きく様変わりしているんですよ? 自決を選んでもおかしくない孤独な浦島太郎が、勇敢に現代を生きる姿。それでも時折見せる疎外感が、キャプテン・アメリカの大きな魅力の一つかと。

 

 ヒドラ島は壊滅し、レッド・スカルは捕らえられ、ブルーノは死亡同然に姿を消した。だがまだ、全てが終わったわけではない。それどころか、何も始まっていなかったのかもしれない――

 謎のエメラルド・レイン計画とブルーノの復活とマコトの発作。全ての答えはザ・リーダーの頭脳の中に。これからフューチャー・アベンジャーズが終わるまで、俺は「マスターズ・オブ・イーブルのリーダーのリーダー」とややこしいことをわざわざ書きたくなる衝動と戦わなければいけないのか。そして正直、ハルクからレギュラーヴィランが来るとしたらアボミネーションかレッドハルク辺りだと思っていたので、ガンマ線の頭脳派ザ・リーダーの参戦は今でもビックリよ。

 組織はあるものの(単独では)不確かな知識しか無かったレッド・スカル。知識はあっても資金と工程の面で不安があったザ・リーダー。エメラルド・レイン計画が不安定な形でマコトやブルーノの中で育ってしまった理由はコレか。そして、ザ・リーダーという製作者で、レッド・スカルが使っていたナノマシンの謎も解けた。トニー・スタークも舌を巻く技術を持っている頭脳派ヴィラン、ザ・リーダーのデビューとしては上々よ。

 あと、ザ・リーダーのテレポート技術にトニーが驚いてましたが、何気にテレポート技術は様々な超人や超技術に溢れているマーベルユニバースでも希少なものです。自由自在となると、どうしてもねー。デッドプールのテレポート装置みたいに、安定性や信頼性がマイナス評価なシロモノを入れても、あんま無いね。多彩な能力者を抱えているミュータントでも少数、魔術だと人数や距離規模に応じて術者への負担が多大なものになる、科学で再現するならトニーがつきっきりで徹夜してなんとかなる域。

 これもザ・リーダーの能力の高さに含めてもいいんだけど……ひょっとして、別の協力者がいるのかもしれん。同程度の科学者や、別の視点を持つ技術者がいる可能性を考えたほうが、色々と面白いからな!

 

 雷神VS戦神! 科学VS魔法! アベンジャーズとマスターズ・オブ・イーブルの対決。だが、今回の戦いの本質は、旧友同士の戦いに有り!

 エメラルド・レイン計画の「進化」が引き起こした、マコトVSブルーノ。死んだはずの男という「過去」が交錯するキャプテン・アメリカVSウィンター・ソルジャー。新キャラ同士が進化で、既存のキャラ同士が過去。見事な好対照ね。途方もない進化の真実、過去を失った理由。これらが明かされるのは、おそらく先の話なものの、そこにはまず間違いなく、親友同士が戦わねばならない重みがあるはず。絆が濃いぶん、戦いは熾烈に、そして悲しいものになってしまうのです。

 次回は、キャプテン・マーベルだけでなく、助っ人ホークアイとブラック・ウィドウも参戦。敵も多いが味方も多い、それが広大な世界観を持つアメコミの強みよ。

 

 今回紹介するのは、ザ・リーダー! ガンマ線を浴びた者でありながら、その力は体力ではなく全て頭脳に。マーベルユニバース屈指の頭脳派ヴィランの危険度とは!?

 

 

ザ・リーダー

 サミュエル・スターンズという男が居た。高校は中退、身体能力も平均以下、優秀な実兄に比べ、頭脳体力ともに見るべきところのないサミュエルは家族にも見捨てられ、鬱屈とした思いを抱えたまま大人になった。サミュエルは、政府の研究施設に掃除夫として就職。ただただ、掃除と雑用の繰り返す日々を過ごす。

 だがある日、サミュエルの間近でコンテナがひび割れたことにより、彼の運命は一転する。コンテナから放たれた放射線を致死量まで浴びたサミュエルだったが、奇跡的な生存を果たし五体も無事だった。意識を取り戻したサミュエルは、ただただ貪欲に本を読み始める。難解な本を読むたびに、サミュエルの知能はどんどんと上がっていき、あっという間に学者すらおののく知識レベルに達してしまった。

 だが、サミュエルが知性を深めていくたびに、彼の肌は緑に染まり、頭蓋骨と頭脳が急激な膨張を繰り返した結果、その頭は長細い異形となってしまった。サミュエルは自身が浴びた放射線がガンマ線であることも理解し、知性の急激な成長はガンマ線の影響であることも理解する。そして何より理解したのは、自身が惰弱な全人類を支配下に収めるに相応しい知性を持つ存在であることだ。彼の鬱屈とした精神は、類まれなる知性を手に入れることで、傲慢そのものに変貌してしまった。

 全てを理解した日、サミュエル・スターンズは消えた。代わりに産まれたのは、人類の支配者(leader)を自認する、知性の怪物ザ・リーダーであった。

 

 ザ・リーダーは自身の頭脳を持って早速世界征服の計画を練るが、すぐに障害にぶつかった。

 自身と同じガンマ線で変貌した人間でありながら、全てを力に注ぎ込んだ男。後天的な天才であるザ・リーダーとは違い、元々優れた知性を持っていた天才。障害の名はハルク、そしてブルース・バナーである。

 ザ・リーダーは己の知性の全てを使い、強大な力を持つハルクと何度も対決。時には自らの身体を強化改造し、肉弾戦で。時にはリーダーらしく、様々なヴィランを率いて挑んだものの、結局緑の巨人を倒すことはできなかった。

 ハルクとの戦いにより、ザ・リーダーの知性はますます強化されていき、頭部の変貌現象などもあったものの、ハルクも戦いにより成長してしまったため、戦いが優位になることはなかった。

 

 ハルクと戦うには、パワーやスピード、何かずば抜けていないと勝負にならない。そんなハルクに頭脳で立ち向かうザ・リーダーの知性は、専門分野でありよく悪事に利用する遺伝子工学や放射線研究だけでなく、物理学やロボティクス、新兵器やアンドロイドの発明制作、制作からハッキングまでコンピュターを熟知と、実に多才である。肥大化した頭脳は恐ろしいまでの直感力と記憶力を有しており、その直感はもはや確定予測に等しく、無限に等しい容量を持つ記憶力は、地球上の図書館全ての蔵書を脳内に収めかねない。もはや、ザ・リーダーに知性に関わることで出来ないことはないとまで言われている。

 知性とは若干方向性の違うザ・リーダーの脳が持つ力としては、様々なサイキック能力がある。人を操るテレパシー能力や、機械の遠距離操作や直接攻撃もこなすテレキネシス能力は、ザ・リーダーの知性の可能性を広げ、弱点である身体能力の低さを補っている。リーダーで、高い知性を持っていて、サイキック能力が使えて、身体能力はそれほどでもない。特徴だけ抜き出すと、X-MENの創始者ことプロフェッサーX(チャールズ・エグゼビア)に似ている。最も、ザ・リーダーのリーダは自称なので、統率面に関しては、有名ヒーローチームの大きな要であるプロフェッサーXに大差をつけられているが。

 

 ザ・リーダーは何度か能力を失い、ただのサミュエル・スターンズに戻ったものの、そのたびにしつこく復活を果たしている。その中でも、目立った変化があった時期は、肌の色が赤かった時期だろう。ある時力を失ったサミュエルは、赤いガンマ線を浴びせられレッドハルクやレッドシーハルクのような、赤い肌のレッドリーダーになった。

 なんとこの時期は、ヒーローチームであるサンダーボルツにも所属している……だが、元々がヴィランにより結成された偽のヒーローチームであり、更生後や再編成後もどうにもクセがあるのがサンダーボルツというチーム。レッドリーダーが所属した時期のサンダーボルツは、レッドハルクをトップとし、パニッシャーやエレクトラやゴーストライダーやヴェノム(フラッシュ・トンプソン)やデッドプールがメンバーに名を連ねる、究極のシングルプレイヤーたちのチームだった。

 正直、レッドリーダーでもあまり目立たないぐらいに、全員キャラ立ちしていた。

 

 ガンマ線を浴びた結果、肉体が強化されたハルクやアボミネーションとは違い、何故ザ・リーダーは頭脳のみが強化されたのか。様々な説があるが、興味深いのは、子供の頃からずっと比べられてきた賢くて優秀な兄へのコンプレックスが原因で頭脳が強化されたという説だ。複雑な精神性を持ったブルース・バナーが強力無比のハルクとなったように、ガンマ線によるパワーは当人の精神構造が大きく影響している傾向もある。サミュエルの精神構造が、ザ・リーダーへの変貌に大きく関わっているというのも、有り得る話だ。

 なお、サミュエルが幼年の頃からコンプレックスを抱いてきた、天才たる実兄フィリップ・スターンズ。彼は高校大学と順調に進学し、大学院に入学するものの、そこでクラスの最下位という屈辱を味わうことになった。卒業後はガンマ線の研究者になるが、政府の期待も支援も、全て大学院時代クラス1位だった男、ブルース・バナーに注がれた。

 クラス1位の立場も期待の研究者の身分も、ブルース・バナーがハルクとなって手に入れた強大な力も、全部自分の物になるはずだったのに。見当違いの嫉妬に燃えるフィリップは、自分もハルクの力を手に入れるため、ブルース・バナーがガンマ線を浴びた状況を再現。ハルクにはなれなかったが、身体を自由自在に変化縮小出来る能力を手に入れる。だが、フィリップの精神は分裂してしまい、その心中には途方もない狂気が住み着いていた。ハルクを付け狙う狂気の男マッドマンは、こうして誕生した。

 フィリップとサミュエル。兄弟二人は、同じ男により、野望や夢を粉砕されたこととなる。ハルクという共通の敵を得たことで、兄弟二人の距離が縮まったのは、なんとも皮肉な話と言えよう。

 
 
 サミュエル・スターンズはマーベル・シネマティック・ユニバースに属する映画、インクレディブル・ハルクにも登場。頭部が不気味に膨張し、次回作でのザ・リーダーへの変貌を予感させるシーンがあるものの……今のところ、インクレディブル・ハルクの続編同様、ザ・リーダーとしての彼の登場予定は無い。

 映画のサイドストーリーとなるコミックスであるアベンジャーズ:プレリュードでその後のサミュエルがフォローされているものの……それはSHIELDに捕獲され、実験動物同様の扱いを受けている姿だった。映画でのサミュエルは、ブルース・バナーとハルクを実験動物として見ている面があったが、それがカウンターで返ってきたことになる。運命の移ろいを感じる、哀しい話だ。