ディスクウォーズ:アベンジャーズなコラム~最終回(前)~

 ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ、見事完結!
 最終回より少し日が開いてしまいましたが、改めてもう一度、第一話というか放映前から最終話まで振り返ってみようかと! 最終回記念というのもありますが、次があること、続きへの期待も込めて!

キャラデザインの変更
声優の変更
よく分からないアイテムの追加
オリキャラ投入
主要スタッフに良く分からない謎の人

 改めてこう書いてみると、物凄い前提条件から始まってますよね、DW。原作付きアニメにおいて、三つ揃えば大三元、五つ揃ってゴレンジャーな危うい臭いがプンプンと。事前に不安視していた人の気持ちも、分からないでもなく。最も、自分の場合はここを気にせず、「おいおい、日本産のアメコミアニメが地上波なんて面白すぎるじゃねえか!」とドキワクしておりましたが。
 そして一話というワケですが……上記に上げたもの、全て杞憂でした。キャラのデザインは、従来の路線から逸脱すること無く世界観に適合した物に。声優の変更も実力派の方々が集まった結果、違和感なしかつ別の魅力ある物に。オリキャラであるアキラ達は、ヒーローとパートナーの物語を書く上で欠かせない物に。謎の覆面脚本家ことキング・リュウさんの実力は、謎がどうでも良くなるぐらいの高さ。更に他のスタッフの皆様も、実直に才能を発揮。
 感想コラムを毎週書いていける作品だ!との決断は、第一話より。かなり早い段階での決断でした。義務感より何より、まず自分の感性に合う、面白えなあコレ!という気持ちがないと、継続して感想を書くのは難しい物でして。根性や義務感でフォロー出来ないこともないけど、こういうのは楽しんでナンボですよ。

 ラフト刑務所脱獄事件からディスク封印、パートナーとヒーローによるアベンジャーズ再集結までが1~9話。序盤にやらなければいけない事、各キャラクターの紹介や世界観の確立回です。最終回への伏線となるシルバー・サムライやジェットローラーブレードの登場、エド&ハルクやジェシカ&ワスプと各キャラクターの掘り下げを行ったのが10話から15話も、この流れに加えてもいいかも。
 この時期、多かったのは、展開の遅さへの懐疑や批判ですかね。まあ、今更それぐらい分かっているよ!という感覚は分からんでもないのですが……それはおそらく、マニアの感覚かなと。分かっているから、分かっていることへの描写や説明をかったるく感じてしまったんじゃないかと。
 常人であるキャプテン・アメリカには、その不足を補うだけの正義の意志がある。それはキャプテン・アメリカの映画を始めとした作品を見た人間だから分かっていることであって、世間一般のイメージとしては、盾を武器にしているヒーローと言うふんわりしたものなんじゃないかと思います。そんなキャップの強さは、巨体という一見で分かるハルクとの対決。第七話のハルク対キャプテンにてじっくりと書かれました。
 マニア層が集まる深夜や有料放送ならともかく夕方の地上波ともなれば、知っている人間に甘えるのではなく、アベンジャーズを知らない視聴者へ、この作品を追っているだけでキャラクターを理解できる完結性と丁寧さが必要な物かなと。
 ただゆっくり説明するだけでなく、地上波映画レギュラー枠であり認知度人気共に高いスパイダーマンを誘い役として用意することで誰でも見れて誰でも分かる作品の土台作りを着々と進めていたのが、この1話から19話までの時期かと。更にアベンジャーズだけでなく、パートナーであるアキラ達がどういうキャラなのかも掘り下げられたわけで。ヒーローとパートナーの物語である以上、ここを疎かにしちゃアカンよね。居るだけにしてしまったら、放送前の不安通りないらないオリキャラになってしまうわけで。

 16話から22話がウルヴァリン登場から始まる通称X-MEN編。ここで一度ロキとの決着もついています。一人の少女アシダ・ノリコがミュータントに覚醒、彼女の話を主軸に、ディスクウォーズ世界におけるX-MENとミュータントの物語が描かれました。X-MENも映画や過去のアニメで認知度が高い、アイアンマンやスパイダーマンと並ぶ誘い役になってました。
 只の少女が能力に目覚め戸惑う。ミュータントになることをアリアリと描いた、X-MENの入門編としても優れていたシリーズでした。ディスクウォーズがそれぞれの映画や他作品への入り口となる。こういう見方や効果も、きっとあった筈。互いが支えあって大きくなっていくのが、メディアミックスの花よ!
 ただ悩み陰鬱な展開にするのではなく、マグニートーの参戦やサイクロップスの戦闘、アシダ・ノリコにミュータントXのような初顔に近いX-MENキャラの新鮮や、アメリカンバカルテットレッキングクルーによる笑いと、緩急がしっかりついていたのも印象的です。
 ロキとの決戦も、純粋に熱く愉快に。ここでの、アカツキ博士と再開していながらも救えなかった結末。未だアキラ達に力が足りないこと、まだ先がある事をひしひしと感じさせてくれました。

 23話でレッド・スカル登場、これより先はレッド・スカル編……と言いたいところですが、本人も言っていた通り、この時点ではまだ準備段階。まず焦点となるのは、24話と25話のガーディアンズ・オブ・ギャラクシー回! 映画ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーと連動しての回。前述した、互いが支えあうことで大きくなっていくメディアミックスの花が、実に大きく花開いた回じゃないかと。映画ガーディアンズもまた、日本にとって未知すぎるヒーロー達ですからね。なお余談ですが、1000以上のキャラクターが載っているマーベル・キャラクター事典。ディスクウォーズに出演したキャラはほぼ全て載っているのですが、数少ない個別項目未記載のキャラがスターロード、グルート、ロケットラクーンだったりします。ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーも載っているのは別編成のチーム。映画ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシーの新進気鋭さと、認知度の低いメンツで映画を作る大博打さが見て取れます。
 話を戻すとして、ガーディアンズの個性とロナンの強さ、映画への期待高まる前後編でした。さっきも言った通り、資料描写の財産は少なめなチーム。映画との連動、ディスクウォーズスタッフの皆さんは、かなり大変だったのではないかと。アニメの放映と映画の公開がほぼ同時となると、どう考えても作業につぎ込める時間が少なめでしょうしね……。

 26話総集編の後は、禁断のヒーローことデッドプール回! 日本よ! これがデッドプールだ! キング・リュウさんも「こりゃダメだろうなあ」と思ってチェック出したら通ってしまった伝説回! 子安ボイスのデッドプールの面白さ、そして後にカッコ良さを我々は知ることになる!
 ネットのデッドプールフィーバーがどれだけ凄かったのかは、ニコニコ動画での再生回数(無料放送継続な第一話と並ぶ再生数10万突破)を見れば分かりますが……当サイト目線での話を一つ。ウチのサイトはまあ大体1日1000ヒット前後なんですが、デッドプール回である27話から一ヶ月くらいは二倍の1日2000ヒットになっていました。当日のヒット数も確かに高かったのですが、平均がしばらく上がるって中々無いですね。今現在製作中の映画デッドプールの話題が盛り上がっている状況、その予兆はこの時にあったと言っても過言ではなく。
 しかしデッドプールも、映画X-MENにちょびっと出ていたものの、露出自体は少なめの日本にとってほぼ未知なヒーロー。ディスクウォーズに出ることで、タレントもセレブも野球選手も首相も、そして子供達もデッドプールのファンになったのではないでしょうか。まあ、映画デッドプールは年齢制限かける予定らしいけどな! 子供見れないヨ!?

 全50話の内、半分ぐらいまで来たので、今日はここまで。レッド・スカル編やウルトロン編、ローニン登場に最終回と言った後半部に関しては後日書く後編で。いやしかし、この時点で結構な豪華絢爛よね。
 

ディスクウォーズ:アベンジャーズなコラム~その51~

 ディスクウォーズ:アベンジャーズ、51話。
 ディスクウォーズ最終回! アベンジャーズよ永遠に!

 かつてのロキ城での決戦、そのロキ様レリーフデザインにより、性能の恐ろしさより笑いを招いたディスク能力吸収装置がまさかの再登場! ドルマムゥのパワーを完全吸収成功!
 「邪悪な力や借り物の力では真の高みに到達出来ない」との言を認めつつの「恵まれし者」の理屈への拒否。ディスクウォーズでの設定はともかく、ロキは霜の巨人の王の子として生まれた時点で、小柄である事を恥じた親が監禁。オーディンに保護され息子となっても、ソーの英雄的基質と恵まれた体躯には勝てず。アスガルドに馴染めぬまま孤独を抱え、ソーや他の神々との差を埋めるために学んだ物は、神どころか人も忌避する黒魔術。そりゃあねえ、邪悪な力や借り物の力でのし上がってきた以上、否定は出来ねえよ。
 ただ、だからと言って、悪いことをしても良いというわけではなく。絆の力も、言い換えれば借り物という表現に近くなり。要は力の使い方と出し方、その目が何を見ているかなんでしょうね。ロキの場合、結局は甘ったれ(アイアンマン談)なわけで。
 でも、ロキが一瞬絆やこの理屈を認めたことが、最後のセレブレティ5復活に関わっている気がするぜ。悪魔にだって、友情はあるんだぜ?

 過程と内実はともかく、今までのボスヴィラン以上の実力を見せるロキ。だがロキが力を出せば出すほど、揺るがぬヒーロー達の力も引き出されていく! 
 復活のバイオコード、最終回までために溜めた、ビルドアップパーツによる必殺技の一斉発射。ブラック・ウィドウとホークアイとジャイアントマンによる援護に、まさかのアイアンマンローリングクラッシュ!(東映風)。いやね、もうこの時点で燃えてしょうがないですよ。今ある物を出しきる姿勢もそうですが、ロキにダメージが蓄積しているのもいい。あんまりに効かないと、絶望感以上に萎えてきますしね。えー、コイツ強すぎない? 今までの敵ってなんだったん?みたいな感じで。あと最終回でこの流れの場合、かなり高確率で最後ポックリとの擬音が似合う一撃死になりますし……。それはそれで困る。

 大ダメージを負ったロキと、それ以上のダメージを負ったアイアンマン。両者、後一撃。もはやヒーロー側に手駒は……と思ったら、まさかのシルバー・サムライ&マンダリン、亜細亜巨悪コンビ参戦! 見ているか、ミゲルにハイネ。お前達CV西川貴教キャラも生き残れるし、こうして最終決戦にも参加できるんだ。このシークレット参戦に関しては、TMR公式も秘密にしていたようですね。公開されていたら、話題にはなっていただろうけど、サプライズ感は瓶のカスを集めて作ったインスタントコーヒーぐらいに薄まっていた筈。マンダリンもまた、先週辺りでもう出るトコ無いな!というのが多勢の声だったので、これまたサプライズ感満載。「お前を倒すのは私だ!」この直球な展開が、興奮でコブシを握る手の力を、強くしてくれる……!

 ヒーロー達とヴィラン勢で出し尽くしたと思ったか? 残念、まだまだいるぜ! ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー復帰! スパイダーマン到着! そしてブレイドまで登場! 頼れる援軍だけでなく、アキラのジェットブーツも久々に出番が。自らの選択が間違っていなかったというシルバー・サムライの確信も含め、序盤の誕生日回やシルバー・サムライ登場回からのネタも。戦力だけでなく、今までのネタも総結集! 更に更にの裏ワザ、アルティメット・ユニビーム! コマンド技としてリザード戦で出てきたこの技も、今まで積み重ねてきた物、開発してきた物の一つ。クライマックスってえのは、ただみんな集まるから盛り上がるわけじゃねえ。こうして作品のすべてを拾い集めて、思いもよらぬ配置をするから盛り上がるのよ! 起承転結、一年続いた全ての起承転を集めての見事な結よ!
 X―MEN? ほら彼らはミュータント関係の話で忙しいし、多分今頃エジプトとか宇宙三大帝国のどこかで戦ってるんじゃないですかね。デッドプール? アイツは十中八九、視聴者としてテレビ観てるんじゃねえかな。きっと、スパイディに黄色い声上げてるよ! CV子安で!

 ロキ最後の悪あがきを潰し、再びヒーローとアキラ達は別れることに。だが、ついこの間の別れと違うのは、アキラ達にバイオコードと共に記憶がまだあること。涙があっても、終わりでなければ、笑顔でいれる。現に、最後のシーンは、続く世界を予期させる物でした。マンダリンもシルバー・サムライも改心したわけではなく、未だ未登場のヴィランやヒーローも多い。それに何より、ロキは一億倍の借りを返すために本当に帰って来る男。いやあ、最終回なのに、わくわくさせてくれるのはズルいね!
 これにて、ヒーローと子供達の戦いと絆を描いた、ディスクウォーズ:アベンジャーズは終了。一年間、ブレなかったテーマに、日本とアメリカの融合による新たな可能性、間口を広げることへの挑戦。楽しみつつ、様々な事を学ばせていただきました。謎の脚本家から信頼の出来る謎の脚本家になったキング・リュウ氏を初め、スタッフ関係者の皆様には多大なる感謝を。実に、素晴らしい名作でした!

 最後のコラムは、これしか無いだろう!なアベンジャーズで! 先週マンダリンを紹介してなかったら、ひょっとしたらマンダリンだったかも……。それはそれで、ウチらしいと言えなくもないですが! 今回で感想も終わりですが、紹介できなかったキャラへの言及や、一年を通しての総括は、改めてやる予定です。

 

アベンジャーズ

アベンジャーズ

 地上で生きる雷神ソーを付け狙う邪悪の神ロキ。ロキが見出したのは、ソーに負けぬ力を持つ男、ハルクであった。ロキはハルクに罪を着せ、ハルクの無実を信じる親友リック・ジョーンズが発した救難信号に干渉し、救難信号を無理やりソーの元へ届ける。

「この通信は、ソーを呼んでいるのか? ハルクが関わっているなら一大事だぞ……」

 これでハルクVSロキは開戦間近だ。ほくそ笑むロキ。だが、ロキの策略により拡散された声は、思いもよらぬ人間の元にも届いていた。

「アントマン、待って!」
「なあ、ジャン。出勤の度におしろいをはたくのは止めてくれ」

「ハルクが噂通りの怪物ならば、アイアンマンとどちらが強いのか、これでハッキリするぞ!」

 リック・ジョーンズが救難信号を出したのは、当時既に著名なヒーローチームとして活動していたファンタスティック・フォー。ロキの妨害により電波が乱れたものの、なんとかリックはファンタスティック・フォーのリーダーであるMrファンタスティック(リード・リチャーズ)との交信に成功。自分達が他の事件で手一杯であることと共に、計算の結果を告げる。自分達の代わりとなる者達が、君の声を聞いたと。
 半信半疑なリックの元に現れる、力ある者ことソー。だが現れたのは、彼だけではない。

最先端の科学の使徒アイアンマン(トニー・スターク)
ピム粒子による縮小化とアリとの交信を武器とするアントマン(ハンク・ピム)
アントマンの相棒にして、縮小化と飛行能力を持つワスプ(ジャネット・ヴァン・ダイン)

アベンジャーズ 第一話

 当時、最前線で活躍していたヒーローが集結。ロキに乱された救難信号は、それぞれ独自に活動していたヒーロー達の元にも届いてしまっていたのだ。最初は誤解したままハルクと戦ってしまったヒーロー達だが、別行動を取ったソーがロキの奸計を暴き、当人を連行。ハルクとも和解を果たした最強のヒーロー連合は、最後の悪あがきを見せたロキを策略ごと粉砕する。これで終わった。解散直前、アントマンが突如声を上げる。

「待った! いくら何でもこれでおしまいはないだろ。僕らの提案を聞いてくれ!」

 アントマンの提案は、異なる力の結集。新たなるヒーローチームを作ることだった。アイアンマンもソーもハルクも賛同。だが、チームを作るとなるとチーム名が必要となる。

「強そうな名前がいいわね! そう、アベンジャーズとか!」

 正当なる復讐。正義のための報復、Avenge。ワスプが提案したチーム名に、他のヒーローも賛同する。こうして、史上最強のヒーローチーム、アベンジャーズは誕生した。
 だがアベンジャーズ結成の次の話、アベンジャーズ第二話にて、変身怪人スペース・ファントムに陥れられた結果、ハルクは脱退。アイアンマンが後のイメージカラーともなる赤と金のスーツにバージョンアップ、アントマンが自身の力不足を痛感し、巨大化能力を持つジャイアントマンへの変身を遂げるものの、ハルクの後釜となるヒーローが加入することは無かった。
 初の追加メンバーは第四話。当時アベンジャーズと敵対し、王国を破壊した人類に怒りを燃やすアトランティスの皇子ネイモア・ザ・サブマリナーを追跡していたアベンジャーズは、海を漂う仮死状態の人間を発見する。彼こそが、ファースト・アベンジャー、キャプテン・アメリカ(スティーブ・ロジャース)だった。

アベンジャーズ第三話

 キャップは戦時中、バロン・ジモの策略により、氷河の海に落下し凍りづけに。数十年間エスキモーに凍れる神として崇められていたが、アベンジャーズに負けてイラついていたネイモアが、エスキモーを蹴散らし氷漬けのキャップを海に投擲。氷が溶けて漂流していた所を運良くアベンジャーズに拾われたという流れになる。つまり、アベンジャーズが居なければ、キャップはずっと氷漬けで、エスキモーに祀られたままだっただろう。
 蘇ったキャップは、ネイモアの復讐により窮地に陥ったアベンジャーズを支援。蘇ったアベンジャーズがネイモアとの戦いを終えた後、キャップは正式にアベンジャーズに加入することとなった。

※アベンジャーズ誕生、キャプテン・アメリカ参加のエピソードは邦訳アベンジャーズ:ハルク・ウェーブ!に収録。

 この後、アベンジャーズは様々なヒーローが加入し、大所帯となっていく。ホークアイ、ブラック・ウィドウ、ブラックパンサー、ファルコン……。時代の移り変わりにより、ルーク・ケイジやアイアンフィストにウルヴァリンのような、ストリートやアウトローの気配を漂わせるヒーローや、外より協力してきたドクター・ストレンジやスパイダーマンも正式に加入した。
 だが、加入の裏で、数多くの離脱劇もあった。まず自身の生活を取り戻すため、ワスプとハンク・ピムが脱退。後に戻ってくるものの、様々な重圧に敗けたハンク・ピムが精神衰弱。やがて、チームを追い出されてしまった。時期によっては、創設メンバー全員が抜けてしまった事もあり、多数の戦死者と大きな被害を招いてしまった結果、アベンジャーズ自体が解体消滅していた期間もある。
 ただ、アベンジャーズは、本体となるチームだけでなく、数多くの派生チームを生み出してきた。正式な支局から、アベンジャーズに憧れただけのチームまで。
 代表的な物としてはアベンジャーズ西海岸支局として作られたウェスト・コースト・アベンジャーズ。ホークアイと彼の妻であったモッキンバードが派遣され、スカーレット・ウィッチやムーンナイト、アイアンマンも含め様々なヒーローが所属協力した。

ウェスト・コースト・アベンジャーズ

 最初アベンジャーズの支部を自称していただけの非公認チームだったものの、冷笑や嘲笑に耐え抜き、やがて本物のヒーローとなった最高のC級チーム、グレイト・レイクス・アベンジャーズ。なお、GLAはウェスト・コースト・アベンジャーズ誌でデビューしており、グラビトンのような強敵に悩まされるウェスト・コースト・アベンジャーズを支援したり、方向性の違いから脱退してきたホークアイが一時GLAに加入したりと、何かとウェスト・コースト・アベンジャーズと縁が深い。

グレート・レイクス・アベンジャーズ

 アベンジャーズの名称は、ベテランヒーローだけでなく、子供と呼んでも差し支えない少年達が冠する事もあった。
 起こりうる未来を防ぐため、未来人アイアンラッドにより結成された、次世代の若者たちのチーム。ヤング・アベンジャーズ。消滅したはずのスカーレット・ウィッチが産んだ双子の転生体と囁かれるウィッカン(魔法使い)とスピード(超高速能力)。ホークアイの名と弓を継いだ二代目ホークアイのケイト・ビショップと、本家メンバーを連想させる者が多い。

ヤングアベンジャーズ

 ノーマン・オズボーン(グリーンゴブリン)により、次世代のレッド・スカルとして運命や能力を歪められた少年少女、アベンジャーズ・アカデミー。オズボーンの支配より抜け出た彼らが道を踏み外さないよう、教育の必要がある。数多くのヒーローが非常勤講師として学園に来訪。常勤講師として選ばれたヒーローは、ハンク・ピム、スピードボール、クイックシルバー。道を踏み外した事があり、その辛さが分かっているヒーローであった。

アベンジャーズアカデミー

 アベンジャーズにとって最も辛い期間は、かの戦争より後の時期だろう。ヒーロー同士の内戦、シビル・ウォーの結果、レジスタンスであるニューアベンジャーズと国よりの支援を受けているマイティアベンジャーズ、二つのアベンジャーズが生まれることとなった。

ニューアベンジャーズ

マイティ・アベンジャーズ

 キャプテン・アメリカの死、トニー・スタークの更迭……ヒーローの権威失墜の隙を突き、ノーマン・オズボーンが権力を掌握。トニー・スタークより摂取したスーツを着たオズーボーンに、ホークアイを名乗る百発百中の射手ブルズアイ、スパイダーマンに化けたヴェノム、本物のヒーローでありながら耐え切れない暗黒面を抱えているセントリー、偽者と危険人物ばかりの公式品、最悪のアベンジャーズことダーク・アベンジャーズは、いいように国や超人界隈を引っ掻き回した。前述のアベンジャーズ・アカデミーもこの一環である。

ダークアベンジャーズ

 オズボーン政権は、他のヴィランとの権力争いやアベンジャーズ:レジスタンスのようなヒーローの抵抗により失墜。起死回生の策として神々の国アスガルドへの侵攻を目論むが、孤軍奮闘のソーの元に駆けつける、蘇ったスティーブ・ロジャースと座を継いでいたバッキー・バーンズのダブルキャプテン・アメリカ。全てを失った状態から再起を果たしたアイアンマン。数多のヒーローが一挙集結し、ダーク・アベンジャーズとオズボーンを打ち砕いた。
 アベンジャーズは、こうして再び一つとなったのだ。

再結成 アベンジャーズ

 2015年3月現在、邦訳として発売されているストーリーはここまで。だが既に、物語は向こうで進んでいる。この後も、趣きやメンバーを変えた帰省のアベンジャーズや新生アベンジャーズ、更にはダーク・アベンジャーズすら復活を果たしている。更に言うと、今現在のヒーロー界隈は、世界や次元の崩壊を目の前に、シビル・ウォー以上の混沌と化している。唯我独尊への酔を極めたアイアンマン、超人血清の不老が切れファルコンに代替わりしたキャプテン・アメリカ、新たにムジョルニアを手にした謎の女ソー、今の極まった状態も全て飲み込まれていくだろう。

アベンジャーズ ナウ

シークレット・ウォーズ(2015)

 混沌の現状、唯一ハッキリしているのは、ディスク・ウォーズ:アベンジャーズにおけるアベンジャーズ。アイアンマン、キャプテン・アメリカ、ソー、ハルク、ワスプ。彼らが映画アベンジャーズの面々と同じく、全く新しいアベンジャーズとして、多くの人々の心に深く刻まれたという事だ。

アベンジャーズ(ディスクウォーズ)

ディスクウォーズ:アベンジャーズなコラム~その50~

 ディスクウォーズ:アベンジャーズ、50話。
 最終決戦開幕! 押し寄せる悪意、思いもよらぬ結末とは!

 大火力のウォーマシン。空を駆けまわるファルコンとノバ。久々のタッグで名を売ろうとするパワーマン&アイアンフィスト。ビブラニウムを誇るブラックパンサー。ハンク・ピムの知力と戦力としてのジャイアントマンの両立。光の結界でヘリキャリアーを包むドクター・ストレンジ。我らセカンドヒーロー、ここにあり!
 欠席期間が長かったウォーマシンやドクター・ストレンジだけでなく、他のヒーロー達の設定も補完。パワーマンとアイアンフィストと言えば、名を売らなければ食っていけねえ雇われヒーローチーム、ヒーローズ・フォー・ハイヤー! ワガンダ原産な不思議金属ビブラニウムをスーツにたんまり使っているのは、世界最高のビブラニウムの権威ブラックパンサー! 登場回や話の都合で入れられなかった設定を、話を壊すこと無くさらりと挿入。夕方6時半のアニメとしては、やはりこれぐらいのバランス感覚がベストなのではとは思うのですよ。程よいこだわりは元ネタへの敬意でもあり、くすぐられる物です。

 レッド・スカル、ウルトロン、ドルマムゥ……ディスクウォーズに出た大物ヴィランだけでなく、未出演の大物を含め比較してみても、このクラスで他人に腰を低くすることが出来るのはロキ様ぐらいだと思うのですよ。ひとまず同盟を組めたり、絶対的な力に従うヴィランは多いですが、「本気で従っているのかどうか分からず、黒幕どころか読者や視聴者ですら見抜ききれない」程、幅広く上手く従うことが出来るヴィランの極地ではないかと。本気で裏切らなかったり、あまりの自体にヒーロー側に転がる事もありますしねえ。
 ちなみに、腰が低いと言うのは貶し言葉ではなく、褒め言葉です。自分が嘘を付く存在であり、他人に従える存在であることの自覚って、これ一つの武器ですよ。まあロキの場合、自分が絶対的に優れている者であると確信しているからこそ、神でありながら他人の靴を舐めにかかれるワケですが。もう少しマシな理由で辛酸を嘗める事が出来るなら、ロキの不屈さと根気は、下手すりゃアベンジャーズ以上の主人公適正だろうに。

 ロキ様、人を騙す事への自覚はあっても、自分が騙される事には慣れてねえというか想定外なんだよ! そして、アキラ達はほぼ一年ロキとやり合うことで対ロキのエキスパートになっているというね! なんでお前、アイアンマンスーツしっかり着込んでるねん! 「卑怯者め!」小物の特大ブーメランか!という笑いどころはさておいて、真面目に考察すると……ロキの虚言は、相手が多数であればあるほど機能するので、組織であるSHIELDはむしろ得意な相手。かと言って、一人なら一人で、周りから孤立させられるハメになる。つまり、ロキのやり口を全員知っている上に、揺らがぬほどの信頼関係がある少人数の集団が対ロキには最良であり。うむ、アキラ達、完璧な対ロキ特化チームだ。つーかSHIELDって、ロキが属する魔法関係にゃあハナから弱いからなあ。それは、別部署の担当だ。
 しかし今回、本人なんもしてないどころかむしろ頑張っているのに「口出ししてきて邪魔」「絶対負けを認めない」「むしろテーブルをひっくり返す」と、トニー・スタークの株が落ちてきているのはなんでだろう。これはアレか、先週上げた株価が純正価格に戻ろうとしているだけか(酷

 お前ら、待たせたな! 現れたのはミラノ号、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー再登場! えーと、確か30回ばかし宇宙でダンスバトルしてきたとかどうとか……。頼れる援軍とヒーロー達の総力により、ダークディメンションを封じ、ドルマムゥを引きずり出すことにも成功! よし、次回最終回への布石は打たれた……からのロキ様下克上! まさかのラスボス化! ええ、リアルタイムでTwitterの実況を聞いていましたが「まさか!」「ロキやりやがったな!」とTLが驚愕まみれでしたね。一度ボスを務めていたこともありラスボス化は予想していなかった、見え隠れしていたドルマムゥへの不満も最後の最後で裏切ってヒーロー側に加勢する布石だと思われていたのではないでしょうか? ついに来週はディスクウォーズ最終回、小物の花道、最終決戦から目が放せませぬ。「勝ち目キター!」「あれ? ロキラスボス? 勝てるんじゃね」みたいな呟きもTLで乱舞していたのは内緒だ!

 今日の紹介は、マンダリンで。いや今回出てないじゃんとお思いでしょうが、既に最終回の紹介キャラは内定済み。今回の話は、基本新キャラ居なかったよね!?ということで自由枠状態。というわけで、今まで紹介していなかったキャラからマンダリンを選択。登場回をノバの紹介に使ってしまった結果、触れてなかったんですよねー……。
 そしてマンダリンの紹介を全文書いて、見直す段階で「あれ? 今日登場してセカンドヒーローなウォーマシンも書いたことなくない?」と気づくオチ。ええい、今日はもうマンダリンで行くぞ!

マンダリン

マンダリンⅡ

 かつて、中華人民共和国にて巻き起こった粛清と破壊の嵐こと文化大革命。様々な人々が財産や命を奪われる中、とある過程の男児もまた、裕福な家庭に産まれながら全てを失ってしまった。行くあてもなく彷徨い成長した彼が辿り着いたのは、龍が棲まうと言われる深遠の秘境、精霊の谷であった。秘境に足を踏み入れた彼が見つけたのは、壊れた宇宙船。この地に住むと言われていた龍の正体は異星人マクルアン人、フィン・ファン・フームとその仲間たちであった。男は宇宙船よりマクルアン人の超科学を回収、その中でも最も不可思議な能力を持つ10の指輪。一つだけでも所有者に多大な能力を与える指輪を、全て自身で装着してしまう。
 謎の科学と10の特殊能力を持つ、自称チンギス・ハーン直系の子孫、怪人マンダリンが中国だけでなく、世界をも脅かすようになるのはその後の事である。中国で勢力を伸ばしつつ、テロリストを支援することで世界各地に食指を動かす。やがて優れたテクノロジーを持つ最強の男が、世界を征する。マンダリンの夢想を打ち砕いたのは、東洋でなく西欧の男。自身に負けぬテクノロジーを独力で開発した鉄の男、アイアンマンであった。

マンダリン 初登場

 トニー・スタークは、戦場にてテロにあうことにより武器商人たる自身の過ちを反省、正義のヒーローであるアイアンマンとしての活動を始めることになるが、実はこのテロリストの支援者はマンダリンであった。彼の野望を打ち砕いたのは、自身の策略が遠因だったのだ。マンダリンは以後、精霊の谷を本拠地とし、アイアンマンやアベンジャーズとの戦いを繰り広げることとなる。
 マンダリンが装備した指輪が彼から外れることは無かったが、死亡したと目されていた一時期はマンダリンの両手を切り落とすことにより、非嫡出子の息子テムジンが継承。テムジンもやがて自身の指に指輪をはめるが、テムジンの手もまた切り落とされてしまった。指輪は復活したマンダリンが回収。バイオアームで両手を取り戻すが、なんと彼は指輪を脊椎に融合させてしまう。

マンダリンⅠ

 指輪を体内に仕舞いこんだマンダリンは、憎きアイアンマンと再度対決するが敗北。指輪を引きぬかれ、結局元の形に戻ってしまう。その後も戦いは続き、再びマンダリンは死亡したが、今度は指輪を継承した10人の能力者、マンダリン10が出現。アイアンマンを別の形で苦しめることとなる。

 マンダリンの能力は、それぞれが能力者を作り出すほどの、10の指輪にある。以下がその能力の内訳である。

 絶対零度氷の力。アイスビームを発することが出来る。
 暗闇の力により、辺りを暗黒で包み込む。
 精神操作。他人の心をテレパシーで操る。
 分解光線で物質を原子レベルで崩壊させる。
 電撃を放ち、放電することも出来る。
 風の力。敵を吹き飛ばすだけでなく、自身の飛行も可能。
 火炎放射。その温度は、鉄をも溶かす。
 音波や電磁波、波のつく物なら大抵変換できる衝撃波。
 白熱の力と呼ばれるビームを放つ事が出来る。
 分子操作。形を変えるまでには至らないが、分子より物体を変質変換出来る。

 どの能力も、一つで天下が取れそうな能力である。マンダリンは瞑想や修行で、リングの効果を最大限発揮できるように鍛えており、孫子を始めとした兵法を熟知。超人には及ばないものの、武道家としても一線級である。なお、超硬度を持つ指輪つきパンチの威力は特殊能力として筆記されることもあるぐらいに強い。指輪の都合でパンチ攻撃を控えていた仮面ライダーもいるんですよ!?
 ここまで使っていた画像やディスクウォーズのマンダリンを見ていて気づいている人もいるだろうが、実はマンダリンの外見はアイアンマンスーツのアップグレード並にコロコロ変わっている。
 まずはフー・マンチューを連想させる妖しき東洋人デザイン。

初期マンダリン

東洋の怪人マンダリン

 近年のアニメでは、アイアンマンとの対立構造をくっきりさせるためもあってか、フルアーマーとしての洗練された姿を見せる機会も多い。

アニメ仕様マンダリン

 これに加え、上記のスーツ着用や武道家らしい上半身裸の姿。中国伝来の鎧を付けた姿などもある。鎧に関しては、一時期恐ろしく攻め気な時期もあったが。

マンダリン(攻めすぎ

 かの映画アイアンマンにも第一作のヴィラン候補として名前が挙がっていたが、いきなり魔術魔法の域に達しているヴィランというのは世界観的にどうなんだろうか?という事もあり、お蔵入りに。ただし、テロリストとしてテン・リングス(10の指輪)が登場。トニー・スタークを捕縛したテン・リングスの構成員は、前述したテムジンに似た男であった。
 映画アイアンマンへのマンダリン登場は、魔術魔法もある神の映画マイティ・ソーとアベンジャーズを経由したアイアンマン3まで待つことになる。

劇場版マンダリン

 テン・リングスの首領として満を持して世界に宣戦布告をしたマンダリンだが、その正体はある意味とんでもない物であった。総集合映画はともかく、アイアンマンの映画に魔術魔法を持ち込むのはやはり難しかったのか、それとも全力で逆手に取ってくれたのか。余談ではあるが、ゲームレゴマーベルにて原作版のマンダリンと映画版のマンダリンがプレイアブルキャラとして同時に参戦。原作版は多彩な能力を持っているが、映画版はメイおばさんと並ぶ無能力者と、たんなるイメチェンでは終わらない分かっている仕様である。
 未だに本名すら分からない、謎の男マンダリン。ただ、自身がチンギス・ハーンの末裔であり、元々高貴な出自であることは普段より吹聴している。だがしかし、マンダリンの自伝映画を(無理やり)作るよう依頼された映画関係者が矛盾に気づき調べた所、阿片や魔窟に売春婦と言った、刺激的な単語が散乱する出自が浮き出てきてしまった。どうもマンダリンは自身に精神操作の指輪を使うことで、過去の記憶を塗り替えてしまったらしい。強大な力を持つヴィランの、人間らしい弱さを感じさせる逸話である。

ディスクウォーズ:アベンジャーズなコラム~その49~

 ディスクウォーズ:アベンジャーズ、49話。
 現れた絶望、去りゆく希望、留めるのは絆。

 レッド・スカルが成し得なかった野望、数々の敗北や術策を重ねた結果ウルトロンがようやく辿り着いた一手。人の意思を容易に制圧してみせ、いつでも世界を飲み込めるという事実を知らしめたドルマムゥ。最後の大敵、アベンジャーズの100倍の力を持つとまで言われた魔人。最終決戦に相応しいだけの実力者として、今回思う存分振るってくれました。絶望と恐怖を糧とするドルマムゥにとって、怯える人類は最高級のごちそう。惑星食いの大魔神とは、別の形で星を喰らう男としての本領を……あれ? ロキが支配すべき物、そもそも残らなくね?

 アベンジャーズの完全開放により、ディスクウォーズ、終結。少なくとも、ディスクを巡る戦いには、終止符が打たれたと言ってしまってよいでしょう。元々の計画は、ディスクにヴィランのみを収容し、開放の権限となるバイオコードを責任者たるフューリー長官に与える流れだったのでしょう。これならば、ヴィラン収容のコストカットと安全性を同時に保てますしね。フューリーに全部預けるって、何らかの大爆発を起こすフラグですよね。予測規模としては、ディスクウォーズ本編以上な。
 そして開放された以上、あくまで非常手段として戦いに参加していたアキラ達はお役御免に。更には、記憶と共にバイオコードも奪われることに。非情に見えますが、元々今までの流れが偶然から始まる異常だったわけで、このような形となることはむしろ正しく。アカツキ博士の意見は、子を持つ親として当然でしょう。むしろ、ドルマムゥの洗脳に最終的に抗えるだけの強さを持ってないと、いくら親でも恨まれるのが分かっている非情は、口にできんよ……。

 必死で世界を救おうとするヒーローに懐疑的なだけでなく、ドルマムゥに捧げることすら考えるマーベル市民達。まあ、マニアの鉄板ネタとして“マーベル市民はクソだ!“というのがありますが……正直これ、クソというか普通じゃね?と。実際現実世界でも、一方的な見方から始まるデモはありますし、もっと悪くなれば、デマや嘘まで織り交ぜて他人を批難できる人間も居る。マーベル市民の遷ろいやすさは、ある種現実的ではあると思います。市民を導く者ではなく、市民を支える者。人の自由意志を尊重するというのも、キャプテン・アメリカを始めとする、マーベルヒーロー達のスタンスですしね……。

 例え記憶と繋がりを失おうとも、絆が途絶える訳ではない。理屈としては退くのが正しくても、乗り越えてしまう物がある。例え人の犠牲になることを厭わずとも、分かって欲しい心はある。子供達は思ったよりも強く、ヒーロー達は思ったよりも弱い。だから、支え合えばいい。
 ディスクウォーズ:アベンジャーズは、ヒーローの物語ではなく、ヒーローとパートナーの物語。だから、最後まで共にあって欲しい。これでいいし、これがいいんだ。全てを精算して、繋ぎ直しての最終決戦。次週、激戦必至。

ドルマムゥ(ドーマムゥ)

ドルマムゥ

 混沌の次元、カオス・ディメンション。神からして定からぬこの次元に棲む、精神体種族ファルティン族。身体を持たぬ不定形生命体として揺蕩う彼らの中に、信じられぬ程、強烈な意志を持つ個体が生まれた。個体は身体を欲し機械と融合、生みの親であり長である物も殺してしまう。前例のない罪を重ねた個体に対しファルティン族が出来るのは、件の個体を異次元ダーク・ディメンションに追放することだけだった。個体の名を、ドルマムゥと言う。
 ダーク・ディメンションに追放されたドルマムゥを保護したのは、当時ダーク・ディメンションの支配者の座にあったオルナーと言う者だった。住まう者がほぼ悠久に近い長寿であるダーク・ディメンションの王は、異次元より訪れたドルマムゥと積極的に技術や魔術の交流を図る。特にドルマムゥが興味を示したのは、他の次元を飲み込むことにより、今居る次元を成長拡大させる手法であった。
 ドルマムゥを保護して数十年後、突如ダーク・ディメンションに意思なき破壊種族マインドレス・ワンズが出現する。

マインドレス・ワンズ

 本来、別次元に居るはずのマインドレス・ワンズは、平穏であったダーク・ディメンションに大いなる災禍をもたらす。ようやくマインドレス・ワンズの破壊が止んだその時、ダーク・ディメンションは暗黒の名に相応しい世界に様変わりしていた。未だにマインドレス・ワン出現の理由は分かっていない。分かっているのは、数万年規模で次元を統治していたオルナーや、ドルマムゥの厚遇に反対していた部下は皆死に、ドルマムゥが支配者の座を継いだ事。ドルマムゥがマインドレス・ワンズを手駒として扱い始めた事だけである。

ドルマムゥ(旧コスチューム)

 ダーク・ディメンションの王となったドルマムゥは、他次元を吸収してのダーク・ディメンションの拡大を開始。やがて肥沃なる大地と様々な文明や奇跡と脆弱なる人で構成された世界、地球を発見する。早速地球を贄にしようとしたドルマムゥだが、至高の魔術師エンチェント・ワンの介入により失敗。エンチェント・ワンの死後も、至高の魔術師の座を継いだドクター・ストレンジの手により、何度も打ち破られる。自分より力の劣る者と蔑みつつも、ドルマムゥはドクター・ストレンジの名を怨敵として刻まざるを得なかった。

ドルマムゥVSストレンジ

 地球にはドクター・ストレンジだけではなく、強力な力を持つヒーローが多数居る。ドーマムゥは単純な力押しだけでなく、戦略的な知識を使うようになる。邪悪の神であるロキや同じ性質を持つメフィストら悪魔勢との同盟は、最もたる例だろう。ロキと手を組んだときは、ロキの義兄ソーの居るアベンジャーズとドクター・ストレンジ率いるディフェンダーズを仲違いさせ、同士討ち寸前の状況にまで追い込んでみせた。

ドルマムゥ&ロキ

 ヒーローを排他し、悪であるノーマン・オズボーン(グリーンゴブリン)が政権を奪取した暗黒時代、通称ダーク・レイン期。オズボーンと共にドクター・ドゥームやロキと言ったヴィランが暗黒会議カバルを開催する中、ドルマムゥが表立って動くことは無かった。しかし、オズボーンの腹心として一山いくらなヴィランの纏め役となった、新進気鋭のフィクサー、フッド。魔術を扱い悪魔にも変貌できる彼、本来ただのチンピラでしかない男に一流魔術師並みの力を与えていたのはドルマムゥだった。ドルマムゥはフッドを走狗とし、ドクター・ストレンジの抹殺も図る。彼もまた、違う形でオズボーンの暗黒世界の闇を深めていたのだ。

ドルマムゥ&フッド

 日本では無名に近いヴィランであったが、マブカプ3にてプレイヤーキャラ(ドーマムゥ名義)としてまさかの参戦。技は強力だがその分パターン化しやすいため、行動の単調化を防ぐロジックや激しいゲージ消費にあたっての管理が必要と、入りやすさと一緒に工夫も求められるキャラである。ストーリー面ではドクター・ストレンジだけでなく、オカルト勢として因縁のあるゴーストライダーや、カプコンにおける悪魔勢ことダンテやバージルにトリッシュとのやり取りがある。そして、出身地カオス・ディメンションに君臨する神シュマゴラスとも邂逅。互いに次元の支配者としてせめぎ合う事になる。
 対シュマゴラス戦におけるイントロ「Ancient One, what is thy will?」という台詞には、色々考えさせられる。エンシェント・ワンという言葉は、ストレンジの師匠の名以外にこういう意味もあるのだが……。元住人だけあって、不可解極まりないシュマゴラスの正体や本性を知る、一人なのかもしれない。

ドルマムゥ(マブカプ3)

 ドルマムゥの強さや能力は、想像を絶している。テレポートは次元をも越え、タイムトラベルも可能、テレパシーでどんな生物の思考をも蝕むと、これ一つで一流ヴィランになれる能力を複数所持している。身体自体が魔力の塊であるファルティン族としての素養は、ドルマムゥに無限に近い魔力を供給し、本人の魔術に対する知識も膨大。本来不定形である身体は、縮小から拡大に変貌まで、なんでも可能。地球最強のヒーローであるハルクですら、一人真正面からかかってくるなら歯牙にもかけない。

ドルマムゥVSハルク

 ハッキリ言ってしまえば、ドルマムゥを何度も退けたドクター・ストレンジであっても、単純なスペック比べでドルマムゥに勝てる部分は無い。それどころか、200人近いキャラクターを能力値と共に記録したマーベル・アベンジャーズ事典内にてドルマムゥの数値を凌駕しているのは、全数値カンストな星を喰らう者ギャラクタスぐらいである。総合値に長けたソーや、肉体面はハルクで知力はブルース・バナーという反則ギリギリなハルク。ウルトロンロナンのような、ディスクウォーズ出演済みの強豪ヴィランですら追い付いていない。ディスクウォーズの最終決戦の相手に選ばれたのも納得である。
 では何故、これだけ強いドルマムゥが未だに地球を喰らうことが出来ていないのか。それはまずドクター・ストレンジが人としての全てを振り絞り、能力値をも覆す結果を出してきたからに他ならない。更には、ドクター・ストレンジの力が及ばずとも、ディフェンダーズやアベンジャーズの仲間たちが支えてきた。彼らは協力してドルマムゥに立ち向かい、不利を何度も覆して見せた。

ドルマムゥVSアベンジャーズ

ドルマムゥ撃沈

 ディスクウォーズにおける「アベンジャーズの戦力が100だとしたら、ドルマムゥの力は1万」というドクター・ストレンジの見立ては、原作を初めとした様々なユニバースと比較しても、強烈すぎるどころか平均的な評価である。それどころか、もっとれっきとした形で不利であった戦いも多々ある。だがしかし、ヒーロー達は、勝ち目が無いほどに強大なドルマムゥを何度も退けてきた。ディスクウォーズでも繰り返される光景であることは、きっと疑いようもない――。

ディスクウォーズ:アベンジャーズなコラム~その48~

 ディスクウォーズ:アベンジャーズ、48話。
 押し寄せる闇、防げるかどうかの水際作戦! 

 ハルク&ワスプ&キャプテン・アメリカ、数の不利を物ともしないバイビースト&アイアンモンガー。巨体かつパワフルな戦艦クラスの二人とはいえ、相手に大和型戦艦クラスのハルク+超優秀な軽巡と駆逐艦なキャプテン・アメリカとワスプがいる状態で、よく頑張った! そもそも数的に最初から不利だし! 後述する通り、アイアンモンガーは最近出番が増えておりますが、バイビーストはホントにね! 昔はダンジョンの奥に居るそこらのボスより上の強敵扱いだったのに、最近は何処でもエンカウントする、パーティー構成ではめんどくさい敵レベルに。アニメとか他所のメディアでも、殆ど出番ないし! ディスクウォーズ参戦キャラに賞か何か上げるとしたら、バイビーストは努力賞の有力候補にしてもいいんじゃないかと!
 ここまで褒めておいて努力賞なのかよ!?とお思いでしょうが、結局支援艦隊来て負けましたしね? 優秀賞やとうどうグループとくべつ賞は、流石にもっと別の候補がいますし……。でも、耐え切ってセカンドヒーローを引き出したことは、評価的にプラスだな、うん。

 いやだなあ、ウォーマシンの事を忘れてませんよ! 本来、セカンドヒーロー一番乗りポジションだったじゃないですか! コイツ、モードック撤退させてマイアミの話したこと以外何もしてねえななんて思ってませんよ!
 ウォーマシンはともかく、多分みんな忘れてたのはロキ様。ドルマムゥが来る!の話題性に、持って行かれていた感はあり。そしてロキ様が輝くのは、こういう人の思考の隙間ができた瞬間。ダークゲート発生装置の破壊とドルマムゥ出現の危機に焦っていたアイアンマンやアキラの隙を突く大活躍。一期ボスの時みたいにデカい力を手に入れて調子乗るのもロキっぽいけど、嫌な所に陣取る敵として出てくるのもまたロキらしさ。強敵や大敵よりも、嫌な敵という評価が似合うのがロキ様の個性にして強み。

 掴めなかったその手を、今度は掴んでみせる。ロキ城での決戦、父親に「息子のために手を離す」という選択肢を選ばせてしまったアキラの後悔。その後悔の精算となったのが、今回の話でした。
 直接戦闘に挑むポジションではないため、戦闘力や攻撃力のような分かりやすい成長度合いは無くとも、バイオコードの進化やパートナーの絆の強化と、アキラ達は確実に成長を重ねてきました。ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーとの邂逅、ビルドアッププレートの開発、強敵レッド・スカルとの死闘、ウルトロンとの大決戦、デッドプールとの……必要ない、消せ(ロキ談)。
 ローニンとの攻防も含め、成長しなければ乗り越えられない困難を越えてきたことは、成長の証と言ってよいかと。その成長の結果が、ローニンの手を手放さなかった事、逆転の一手となった事。こういう前に進むことで得た物が分かる瞬間は、自分の大好物です。これこそ、長期ドラマの華よね!

 今日の紹介は、鋼鉄の門番アイアンモンガーで! 原作や映画における搭乗者オバディア・ステインにも言及! 巨大な体躯と大火力! 軍事兵器色、非常に強し!

アイアンモンガー

アイアンマンVSアイアンモンガー

 映画にも登場した、アイアンマンをベースにした巨大アーマー。着用者に並外れた身体能力を与え、リパルサー・ビームやレーザーブラストを放つことが出来、ブーツからのジェットで飛行も可能。登場してからしばらくは、オリジナルより複製されたスーツを纏う人間が居たが、ブリザードウィップラッシュのような特化型や特殊装備型でもなく、あくまで大きなアイアンマンでしか無いせいか、スーツとしての出番はインパクトの割に少ない。
 アイアンモンガーをスーツとして解説した場合、本当にこれだけで終わってしまう。だがしかし、アイアンモンガーは今後に繋がる予定の映画アイアンマン、その第一作のヴィランに選ばれたキャラクターである。彼の真価は、アイアンモンガーを纏った男、オバディア・ステインと共に在ることで発揮される。
 企業家オバディア・ステイン。経営学を学び、修得の証であるMBA(経営学修士)を取得。心理戦に長け、非常かつ効率的なビジネス戦略を好む一流の企業家。心理戦や戦略は、得意とするチェスで鍛えあげられており、チェス自体の腕前もチャンピオンクラス。完璧なロジックで磨き上げられた人生こそ、オバディアが歩んできた道である。
 だがしかし、その本質にあるのは物事を勝ち負けでしか、むしろ自分が勝って当たり前の物としか考えられないどす黒い本性であった。子供の頃、チェスでオバディアと互角であった少年は、その結果オバディアに愛犬を殺されてしまった。つまりこの常軌を逸した精神は、幼年期より持ち合わせていた物である。

オバディア・ステイン

 非常に、並べてみたら分からないレベルで、他所の出版社で活躍する超有名アメリカンヒーローのライバルに似ているが、ひとまずそこはスルーして欲しい。多国籍軍需企業、ステイン・インターナショナルの社長となった彼にとってのライバル、勝つべき相手はスターク・インダストリーズの社長であり企業家のハワード・スタークであった。だが、ハワードは事故死。会社は父以上の才覚を持つと言われているトニー・スターク(アイアンマン)が引き継ぐこととなる。表向きは友好関係を保っていたオバディアだが、付き合いつつもトニー・スタークの情報を収集。トニー・スタークがアイアンマンとしての重責に耐えかね、アルコール依存症となった事。友人の力にて立ち直った事を知る。オバディアにとって、このトニーが見せた弱さは、チェックメイトに繋がる一手であった。

アイアンマン:デーモン イン ア ボトル

 オバディアは、得意の心理戦と権謀術数を駆使することでトニーを再びアルコール依存症に陥らせてしまう。スターク・インダストリーズはステインに買収されてしまい、地位も名誉も財産もアイアンマンとしての立場も酒で失ったトニー・スタークはホームレスにまで落ちぶれてしまう。先のアルコール依存症以上の没落。オバディアの完全勝利であった。彼にとってはトニーですら、自分の人生を彩る敗北者の一人に過ぎなかったのだ。
 オバディアに負け、浮浪者となり全てを諦めかけていたトニーだが、偶然出会った女性ホームレスが自身の命と引き換えに子供を産んだ瞬間、生命の誕生と死に立ち会ったことにより、人としての現実と希望を取り戻す。周囲を見てみれば、空位となったアイアンマンの座は親友ジム・ローズが必死で守り続け、アベンジャーズの仲間たちも変わらず居る。全てを失ったわけではない、奮起したトニーはアルコールと決別、赤と銀の2色が特徴的な新型アイアンマンスーツ、通称シルバーセンチュリオンと新会社スターク・エンタープライズ社を作り上げオバディアに挑んだ。

アイアンアーマー マークⅧ(シルバーセンチュリオン)

 なお余談ではあるが、浮浪者となった時に女性ホームレスと出会わず、代わりに変な赤タイツと出会った結果、モードックが首領を務める秘密結社AIMに売っぱらわれてしまった平行世界もあったりする。なんてバッドエンドだ。

トニー・スターク売るよ!

 一方、オバディアだが、負かしたと思ったトニー・スタークの再起に動揺。再起した敗北者により追い詰められた結果、遂にトニーが直接アイアンマンとしてステイン・インターナショナルに乗り込んでくる事態となる。だが、オバディアの手元には最終兵器があった。スターク・インダストリーズを乗っ取った際に見つけた、アイアンマンスーツのデーターと実物。彼は部下に命じ、アイアンマン以上のスーツを制作させていた。
 オバディアの元に乗り込んだアイアンマンが目撃したのは、自分のスーツ以上の大きさと性能を持つ鉄の巨人アイアンモンガーだった。アイアンモンガーとなったオバディアと、アイアンマンであるトニー・スターク。二人の企業家の最終決戦は、肉弾戦となった。

アイアンモンガー

 アイアンマンを超えるアーマーの名に恥じぬ性能を見せ、アイアンマンを圧倒するアイアンモンガーだが、やがて最大の弱点が露となる。トニー・スタークとは違い、スーツを着た経験が無いオバディア。その経験を埋めるため、アイアンモンガーは外部PCの遠隔操作による補助を受けていたのだ。遠隔操作の妨害より、活路を見出したアイアンマンは、アイアンモンガーを遂に撃破する。
 自らの敗北を悟ったオバディアは、トニーに自らの父親の死について語り始める。自分の父親はギャンブラーであり、ロシアンルーレットに失敗して死亡した。父の死を目の当たりにした恐怖で、自分の頭の毛は抜け落ち、敗北とは死である事を学んだ。オバディアの勝つことへの病的なまでの執着は、この一件が原因だったのだ。
 そして敗者となってしまった自分に、生きる資格はない。気づいたトニーは制止するものの、オバディアは自らのリパルサーにて頭部を撃ち抜き死亡する。敗北とは死であると身を持って教えてくれた、自らの父と同じように。勝者であるトニーは全てを取り戻し、敗北者であるオバディアは死亡した。再起したヒーローと再起を選ばなかったヴィランの戦いは、こうして終了した。

オバディアの死

 アメコミのキャラクターは死亡や蘇りが激しいが、オバディア・ステインは蘇っていないキャラクターの一人である。あの世に居ることの確認や短期間の復活はあるが、本格的な復活には至っていない。そもそも、初登場が82年で自殺したのが85年と、映画ヴィランに選出された割に、非常に活動期間が短い。他の映画第一作のヴィラン、レッド・スカルやロキの活動期間数十年+継続中と比べれば、その短さは更に際立つ。
 だがしかし、アイアンモンガーとオバディア・ステインは立派に映画ヴィランを務め上げてみせた。

映画版アイアンモンガー&オバディア

 他所のハゲで企業家な有名ヴィランと差別化するために髭を生やしてみよう! 技術の未熟さによる巨大化とリアクターの窃盗。こうすれば、トニー・スタークの天才性が揺らがぬまま強敵になれる! 非常に細かな気遣いにより、アイアンモンガーとオバディア・ステインはアイアンマンの強敵として再生を果たした。以後、オバディアとアイアンモンガーは、アイアンマン・ザ・アドベンチャーズやディスク・ウォーズ:アベンジャーズのような世界観を再構築したアニメ作品にて、ラスボスや強敵として存在感を示す。ディスクウォーズのアイアンモンガーの中身については明言されていないが、ビジネスパートナーや技術の窃盗といった評価からして、オバディアのルートからおそらく外れていないだろう。

アイアンモンガー(アイアンマン アドベンチャーズ)

 原作での、トニー・スタークを浮浪者にまで追い詰めた数年間。この濃い数年の結果、トニー・スタークは未だにアルコールに脅かされ、様々な世界にてアイアンモンガーはアイアンマンの前に立ちはだかっている。だがある意味これは、敗北は死であり終焉と考えていたオバディアにとって、皮肉的な今なのかもしれない。